• 2026年03月19日 作品紹介④:かがくいひろし《未完「あかりをつけまーす」ラフ》

    「だるまさん」シリーズは3作でひと区切りとなりましたが、その後も数多くのアイデアが温められていました。未完「だるまさんが ころころ」ラフでは、だるまさんが丸くなってころころ、四角になってかたかた、そのうちにバラバラに分割するという、乳児期の子どもの図形認識の可能性を探るような実験的な構成が試みられています。

    奇想天外な発想は尽きることがなく、「だるまさん」の続編をはじめ展覧会で公開される未完ラフ作品には、たんたんめん、ぼたもち、せんぷうきと、やはり身の回りの素朴な物たちが登場します。

    新作候補のひとつとして刊行準備が進められていた本作では、何とも気の抜けた表情のからすが主人公として登場します。見開きごとに暗転・明転が繰り返され、ページをめくって音の謎解きを楽しむ構成からは、かがくい特有の遊び心と入念な計算が見て取れます。惜しくも絵本として世に出ることのなかった、溢れんばかりの創造の世界の続きをぜひ会場でお楽しみください。

    (s.o)

     

    《未完「あかりをつけまーす」ラフ》2008-2009年 ©Hiroshi Kagakui

    本展のために制作された影絵の映像作品も


    「かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!

  • 2026年03月15日 作品紹介③:かがくいひろし《『おもちのきもち』原画》

    本作は、絵本作家の登竜門である講談社絵本新人賞を受賞したかがくいのデビュー作です。物語は、人間に食べられることを恐れたしかめっ面のかがみもちが、運命に抗い逃げ出す場面から始まります。

    見開きの大画面に収まりきらないほど自由自在に体を伸ばしたおもちは、ビロンビロンビローンというユニークな擬態語とともに実に楽しげに疾走します。塗り重ねられたパステル特有の瑞々しい絵肌が、命の躍動をいっそう鮮やかに伝えます。

    この作品を皮切りに、かがくいは驚異的な速度で刊行を重ね、わずか4年で16冊もの絵本を生み出しました。やかん、ふとん、ひょうたん、おむすびなど、地味で目立たない身近な物たちが主人公となり、独特の擬音語・擬態語とともに物語が展開しました。

    源泉となったのは81冊にのぼるアイデアノートです。「絵本を読む子どもたちには、笑っていてほしい」と願い続けた作者の作品は、その人柄のように底抜けに楽しく、温かなユーモアに満ちています。

    (s.o)

    《『おもちのきもち』原画》2004-2005年 ©Hiroshi Kagakui/Bronze Publishing

    多忙の中でも常に新しい絵本の構想を綴ったアイデアノート


    「かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!

  • 2026年03月10日 作品紹介②:かがくいひろし《お誕生日ケーキ》

    かがくいは東京学芸大学で彫刻を学び、卒業後、千葉県内の養護学校で教員生活をスタートさせました。当時は1979年の養護学校義務化を受け、全国で新設校が次々と誕生した時期であり、まさに障がい児教育の黎明期にあたります。

    熱意と活気にあふれる現場で、かがくいも生徒一人一人に合わせた授業や教材づくり、そして同僚とともに人形劇「つくし劇場」の活動に取り組みました。人形劇でかがくいが追求した、誰もが等しく感覚的に楽しめる「音・動き・見立て」の要素は、その後の絵本制作の礎となります。

    絵本作家としての活動はわずかに4年、病のため54歳で急逝しますが、亡くなるその年まで教員を務めました。最後の勤務先は重度障がいにより通学困難な生徒の家を訪れ授業を行う、特別支援学校訪問部でした。

    かがくいが紙粘土で作ったお誕生日ケーキは今も教材として現役で使われ、誕生日を迎えた生徒は、バニラの香りのする本物そっくりのケーキの前で記念撮影を行うといいます。

    (s.o)

     

    《お誕生日ケーキ》 2008-2009年頃 千葉県立松戸特別支援学校蔵

    「つくし劇場」の体験コーナーも!


    「かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!

  • 2026年03月08日 作品紹介①:かがくいひろし《『だるまさんが』原画》

    「だるまさんが」のリズムに合わせて、ニョキッと生えた足を大きく跳ね上げ、左右に揺れ動く姿が描かれています。赤と黒のパステルの柔らかな質感がだるまさんの丸みと温かさを伝え、一方でボールペンによる鋭い輪郭線が躍動感を強調しています。

    ページをめくるたびに思わぬ展開が訪れ、思わず笑顔になる『だるまさんが』は、2000年代に出版された赤ちゃん絵本の中で最速のミリオンセラーとなりました。刊行から15年以上を経た今も記録を更新し続け、シリーズ3作の累計発行部数は1000万部を超えます。

    原点は、かがくいの28年にわたる特別支援学校での教員経験にありました。物語を追うことが難しい生徒でも、動くものには興味を示す姿がヒントになり、年齢や障がいの有無を問わず、誰もが感覚的に楽しめる絵本の制作へと繋がっていきました。

    かがくいが教育現場で得た実感と願いを込め、さまざまな試行錯誤を経て生み出した「だるまさん」シリーズは、これからも日本中の親子を笑顔に導くことでしょう。

    (s.o)

     

    かがくいひろし《『だるまさんが』原画》 2007年 ©Hiroshi Kagakui/Bronze Publishing Inc.

    アイデアノートやラフ作品、ダミー本など、絵本が出来上がっていく過程もご覧いただけます

    展示室内では、出品作品の絵本とともにお楽しみいただけます


    「かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!

  • 2026年03月07日 「かがくいひろしの足跡」

    50歳で絵本作家となり、病で急逝するまでのわずか4年の間に16冊もの絵本を生み出したかがくいひろし(1955-2009)。しかし、実はそれらの作品が28年間にわたる特別支援学校での現場経験から育まれたことはあまり知られていません。

    かがくいは東京学芸大学で彫刻を学び、卒業後は千葉県内の養護学校で教員生活を開始しました。当時は1979年の養護学校義務化により全国に次々と養護学校が新設された、まさに障がい児教育の黎明期と言える時代でした。熱意と活気にあふれる現場で、かがくいも生徒一人一人に合わせた授業や教材づくりに取り組みます。動くものに興味を持つ子が多いことに目を向け、1986年頃からは同僚とともに人形劇「つくし劇場」に熱中し、誰もが感覚的に楽しめる「音・動き・見立て」を追求します。これら教員時代の経験は、その後の絵本制作の礎となりました。

    かがくいは常日頃ノートを持ち歩き、思いついたアイデアを描き留めました。40代に入ると教職の傍ら自身の創作活動を本格化させ、2005年『おもちのきもち』で第27回講談社絵本新人賞を受賞。念願のデビューを果たしました。以後驚異的な速さで次々と刊行を重ねますが、2009年に教職を離れ絵本制作に専念しようとした矢先、54歳で世を去ります。

    「絵本を読む子どもたちには、笑っていてほしい」と切に願ったかがくいの絵本は、底抜けに楽しく、温かなユーモアに満ちています。身の回りの素朴な物たちが主人公となり、かがくい独特の擬音語・擬態語とともに繰り広げられる物語は、年齢や障がいの有無を問わずあらゆる人を笑顔に導きます。展覧会では「だるまさん」の続編を含む未完ラフ作品も多数公開します。惜しくも絵本として世に出ることのなかった、かがくいの溢れんばかりの創造の世界の続きをぜひ会場でお楽しみください。

    (s.o)


     

    「かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!


  • 2026年02月25日 「かがくいひろしの世界展」、来場3万人を達成!

    2月25日(水)に「かがくいひろしの世界展」の来場者が3万人を達成しました。
    3万人目のお客様は、焼津市からお越しのご家族です。

     

    「だるまさん」シリーズが大好きだというご家族。
    絵本を読むと「だるまさんが」のフレーズを一緒に口ずさみ、“どてっ”の場面では体を動かしながら楽しんでいるそうです。

    展示室内では、絵本のキャラクターが登場する映像コーナーも夢中でご覧になっていました。
    また、絵本の原画やアイデアノートなどの資料をご覧になり、絵本ができるまでの過程も面白かったとお話しくださいました。



    特別協賛社(清水銀行)、本展主催者(静岡新聞社・静岡放送)、静岡市美術館より記念品を贈呈しました。
    おめでとうございます!

     

    「かがくいひろしの世界展」は3月22日(日)まで開催中。
    閉幕が近づくにつれ、混雑が予想されます。 ぜひお早めにご来場ください。
    平日・土日祝ともに15時以降は、ゆったりご覧いただけます。
    お時間のご都合がつく方は、ぜひご検討ください。

    (c.o)

     

     

  • 2026年01月27日 「かがくいひろしの世界展」、来場1万人を達成!

    1月27日(火)に「かがくいひろしの世界展」の来場者が1万人を達成しました。
    1万人目のお客様は、静岡市内からお越しのご家族。

    2歳の息子さんは、「だるまさん」シリーズが大好きで、自分で本棚から絵本を選んで持ってくるほど。
    展示室を出たあとも「もう1回入りたい!」と、元気いっぱいに展覧会を楽しんでくれました。
    ※当日中に限り、展示室には何度でも再入場可能です♪

     




    ご家族には、特別協賛社(清水銀行)、本展主催者(静岡新聞社・静岡放送)、静岡市美術館より記念品を贈呈しました。
    おめでとうございます!

     

    かがくいひろしの没後初の大回顧展となる本展では、全16作品の絵本原画をはじめ、創作の源泉となったアイデアノートや特別支援学校の教員時代の映像記録、未完ラフ作品などの貴重な資料により、その足跡と絵本の魅力に迫ります。ぜひ会場でご覧ください。

    (c.o)

     

    「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」
    2026年3月22日(日)まで開催中です。


  • 2025年12月12日 「きもののヒミツ」展、来場1万人を達成!

    12月12日(金)に「きもののヒミツ」展の来場者が1万人を達成しました。
    1万人目のお客様は、浜松市からお越しのお二人。

    and more

  • 2025年11月20日 「きもののヒミツ」展示紹介③明治・大正の流行模様

     


    きものの「デザイン」に注目した展覧会、きもののヒミツ展。第三章では明治・大正の流行模様に注目しています。江戸時代、身分や階級、年齢によりデザインの傾向がわかれていましたが、近代になると様々な模様が登場し、色々なデザインが楽しまれるようになりました。and more

  • 2025年11月19日 「きもののヒミツ」展示紹介②岸駒《孔雀図》

    重要美術品 岸駒《孔雀図》18世紀末期-19世紀初期 千總ホールディングス蔵【前期展示】


    今にも尾羽を広げんと岩の上に立つ雄の孔雀と、その下で憩う雌の孔雀。海棠(かいどう)の枝には繁栄を表す綬帯鳥(じゅたいちょう)が止まり、周辺では小禽が飛び交っています。and more