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2025年04月26日 自由な創作を!若き日本画家たちの挑戦
「生(うま)ルゝモノハ藝術ナリ。機構ニ由ツテ成ルニアラズ」
この言葉は大正7(1918)年に京都で活躍する気鋭の日本画家、竹内栖鳳塾の小野竹喬と土田麦僊、谷口香嶠塾の野長瀬晩花、京都市立美術工芸学校に学んだ榊原紫峰、村上華岳の5人が「国画創作協会(国展)」を設立した際の宣言です。
京都市立絵画専門学校の一期生だった彼らは、文部省美術展覧会(文展)に作品を出品するなかで情実により左右される審査の曖昧さに不信感を抱きつつありました。大正6(1917)年の第11回文展において、前年に特選を得ていた竹喬と華岳の力作が落選したことを契機に既存の価値観にとらわれない自由な創作を目指し、発表できる場として国展を立ち上げます。国展の結成に際しては、京都市立絵画専門学校の教授で文展の画家の栖鳳に対立を覚悟で了承を得ようと訪れたところ、栖鳳は、君たちが何の不平が無かったのが不思議だったと述べ、顧問を引き受けてくれたといいます。
1916年の第10回文展で特選を受賞した《島二作(早春・冬の丘)》
その後、大正7年の第1回展で国画賞を受賞した入江波光を会員に加え、第3回展まで開催、竹喬らの渡欧や関東大震災での中断をはさみつつ再開、洋画部、彫刻部、工芸部を置くなど総合的な公募展に発展していきますが、資金難などを理由に日本画部は10年後の昭和3年に解散となりました。しかしわずか10年とはいえ、若い画家たちに大きな影響を与える、日本近代絵画史を語るうえでは欠かせない重要な活動でした。なお記念すべき第1回展で竹喬は《波切村》を出品します。四曲一双の大画面に右隻は朝、左隻は夕景の波切村(三重県)の雄大な風景を描いた大作で、油彩画を思わせる濃彩と緊密な構図は西洋絵画と南画を融合した竹喬らしい作風といえましょう。令和6年に重要文化財に指定され、当館でGW期間中(4/26-5/6)に特別公開をします。この機会にぜひご覧ください。
重要文化財《波切村》1918年(展示期間:4/26-5/6)
(s.o)
「うつりゆく自然を描く 小野竹喬の世界」
2025年5月25日(日)まで開催中◆GW特典◆
4月26日(土)~5月6日(火)の15時以降に本展をご観覧の方、各日先着50名様に、静岡市美術館オリジナルグッズをプレゼント! -
2025年04月18日 自然を愛した日本画家・小野竹喬
近代を代表する日本画家・小野竹喬(おのちっきょう/1889-1979)。色彩豊かであたたかみのある風景画で知られる竹喬ですが、その作風は生涯を通じて何度も変遷しています。
14歳で竹内栖鳳塾に入門した竹喬は、はじめ四条派の筆法と西洋近代絵画の写実を融合した師・栖鳳風の作品を描きました。続いて1909年に京都市立絵画専門学校別科に進んだ竹喬は、文展での入選や国画創作協会の立ち上げなど活躍する中で、セザンヌの実在性(リアリティー)や南画の自由さを取り入れた表現を探究します。しかし1921年に渡欧し西洋絵画を学ぶうちに東洋画における線描の重要性に気が付き、帰国後は与謝蕪村や池大雅を意識した淡彩の作品を手掛けるようになりました。
太平洋戦争の影が忍び寄る1930年代後半、復古的な風潮の中で竹喬もやまと絵に関心を持つようになります。それまでの南画風の表現からおおらかな線描と色面で立体感を表そうと試み、やまと絵を新たな解釈で表現しました。そしてこの表現は、戦後に至り単純化された造形と明快な色彩という、カラリストと呼ばれた竹喬の代名詞たる瑞々しい風景画へと昇華します。また最晩年に至っても表現の探究はやまず、水墨画風の作品・墨彩画にも挑戦しました。このように竹喬の約75年間の画業で画風は何度も大きく転変しますが、一貫して四季の移ろいや夕暮れ時の茜空など何気なくも美しい風景を描き続けました。
本展は最初期から最晩年に至るまでの竹喬の画業を辿る静岡初の大規模な回顧展です。師・栖鳳の作風を取り入れた《落照》、西洋絵画と南画を融合した《島二作》や《波切村》、池大雅を思慕して描いた《冬日帖》、そしてやまと絵風の表現に至り竹喬の代表作となった《奥の細道句抄絵》の習作など日本の自然の美しさを詩情豊かに表現した竹喬の名品の数々を心ゆくまでお楽しみください。
(s.o)「笠岡市立竹喬美術館名品展 うつりゆく自然を描く 小野竹喬の世界」
2025年5月25日(日)まで開催中 -
2025年03月14日 「北欧の神秘」展、来場1万人を達成!
3月13日(木)に「北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」の来場者が1万人を達成しました。
1万人目のお客様は、富士市からお越しのお二人。
ふだんは県外の大学に通学しているそうで、地元に帰って来たタイミングで当館にお越しいただきました。「美術館は好きでよく行くけれど、北欧の絵画を鑑賞するのは初めて。なかなかない機会なので楽しみ」とお話しいただきました。and more
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2025年01月19日 北欧の神秘/ザ・マジック・ノース
北欧の画家と言えば、日本ではノルウェーのエドヴァルド・ムンク(1863-1944)が最もよく知られていることでしょう。
ムンクの代表作である≪叫び≫(1893年、ノルウェー国立美術館蔵)は、本展では出品されませんが、耳を覆う人物の背後にはノルウェー特有のフィヨルド(氷河の浸食によって入り組んだ湾)が描かれています。
「自然を貫くような叫びを感じた」とメモを残していたムンクですが、北欧の画家たちにとって気象や風土が育んだ特有の自然風景は自国らしさの象徴であるだけでなく、内面世界ともつながり、インスピレーションの源となりました。エドヴァルド・ムンク《フィヨルドの冬》1915年
油彩・カンヴァス ノルウェー国立美術館
Photo:Nasjonalmuseet/Børre Høstland -
2024年12月24日 「キース・へリング展」来場1万人を達成!
12月24日(火)に「キース・へリング展 アートをストリートへ」の来場者が1万人を達成しました。
1万人目のお客様は、静岡市内からお越しのご家族です。
息子さんが通う小学校も冬休み期間に入り、思い出になればとご家族でご来場くださいました。
展覧会をご覧になり、明るい色合いの作品の中に強いメッセージ性があることや、
キース・へリングが亡くなって30年以上が経つけれども、今も色あせない人気があると感じた、とお話しいただきました。 -
2024年12月13日 「Art to the Streets 1980年代と現在のキース・ヘリング」(対談)を開催しました!
12月7日に、「キース・へリング展」の関連事業として、対談イベント「Art to the Streets 1980年代と現在のキース・ヘリング」を開催しました。
キース・へリングに直接取材した経験を持つ美術評論家の村田真さんと、中村キース・ヘリング美術館ディレクターのHirakuさんを講師に招き、1980年代から今日におけるキース・ヘリングの芸術性と評価等についてお話しいただきました。-キース・へリングへの密着取材
キース・へリングは、地下鉄の駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークで描いた「サブウェイ・ドローイング」で一躍脚光を浴びました。
雑誌『ぴあ』の編集部に所属していた村田さんは、姉妹誌『Calendar』のために1982年の暮れから83年の年明けにかけて、ニューヨークでヘリングを取材されています。取材時の貴重な写真をスクリーンに映しながら、ニューヨークの街並みの印象や、取材時のエピソードをご紹介いただきました。and more -
2024年12月01日 「アートはすべての人のために」
単純明快な線と鮮烈な色彩で描かれた人や動物たち―ポップでコミカルな作風が世界中で親しまれ、アンディ・ウォーホル、ジャン=ミシェル・バスキアらとともに1980年代ニューヨークのアートシーンを牽引したキース・ヘリング(1958-1990)。彼が一躍脚光を浴びるきっかけとなったのは、80年代初頭にニューヨーク地下鉄駅構内の使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれる落書きでした。
自らの作品を多くの人に見て欲しいという想いから公共空間での活動をスタートさせたように、芸術は特別な場所ではなく大衆の日常にこそあるべきだと考えたヘリングは、反戦、人種差別の撤廃、エイズ予防啓発など社会問題に対する様々なメッセージも作品に介在させて発信。世界中で壁画制作やワークショップを展開したほか、自身がデザインしたグッズを販売するポップショップを開設し、全ての人にアートを届けられるよう取り組みました。
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2024年09月14日 物質としての写真の魅力
写真が誕生したのは今から約180年前のことですが、本展では19世紀末から今日に至るまでの約1世紀にわたる写真表現の変遷を辿ります。
芸術としての写真の確立に努め、写真のモダニズムを切り拓いたアメリカのアルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)、スナップショットの名手・フランスのアンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)、報道写真の分野で活躍したロバート・キャパ(1913-1954)やW・ユージン・スミス(1918-1978)など、写真界の巨匠たち68作家の代表作を6つのセクションに分けて紹介します。
近代写真史のダイジェスト版のような本展は、写真愛好家や歴史に関心がある方はもちろん、初めて写真に触れる方にもおすすめの内容となっています。アルフレッド・スティーグリッツ《三等船室》1907年 フォトグラビア 京都国立近代美術館
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2024年08月28日 「西洋絵画の400年」展 来場3万人を達成!
8月28日(水)に「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年」の来場者が3万人を達成しました。
3万人目のお客様は、伊豆の国市からお越しの親子です。
美術鑑賞が好きというお二人。夏休みの思い出に、とご来館いただきました。
高校生の娘さんは「教科書に登場するような作品ばかり。自分の目で確かめることができてよかった」と話してくれました。 -
2024年07月05日 【イベントレポート】「彩色実演&『辰(たつ)』の飾り物絵付け体験」
6月30日(日)に「平野富山展」関連イベント「彩色実演&『辰(たつ)』の飾り物絵付け体験」を開催しました。
平野富山の次男で彩色木彫家として活躍する平野千里さんをお招きし、彩色の実演(約30分)を鑑賞後、本プログラムのために特別に制作された辰の飾り物((FRP製、原型は平野富山の彩色木彫作品、16㎝程度)に絵付けをしました。
当日は小学生から大人の方まで、24名の方にご参加いただきました。平野富山の次男で彩色木彫家として活躍する平野千里さん
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