• 2020年09月09日 2020年9月9日 「ショパンー200年の肖像」展 来場1万人を達成!

    本日9月9日(水)に、「ショパンー200年の肖像」展の来場者が1万人を達成しました!

    1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの塩澤さん親子。
    お母様は普段ピアノを教えていらっしゃるため、展覧会の内容に関心を持たれたそうです。
    展示をご覧になり、「ショパン本人の左手像やデスマスクを見て『じーん』ときた」との感想をいただきました。
    お二人には、当館館長からショパン展の図録と記念品を贈呈しました。
    またのご来館をお待ちしています!

     


    「ショパンー200年の肖像」は、9月22日(火・祝)までの開催です。
    閉幕が近くなりますと混雑が予想されますので、お早目のご来館がおすすめです♪

    (k.t)

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    「ショパンー200年の肖像」
    会期:2020年8月1日(土)~9月22日(火・祝)
    観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料
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  • 2020年08月07日 ショパン―200年の肖像

    8月1日(土)より開幕した「ショパンー200年の肖像」は、

    ショパンの故郷ポーランドにある国立フリデリク・ショパン研究所(略称NIFC)の

    全面的な協力によって開催される展覧会です。

    NIFCは、2001年にショパンの遺産保護に関する法律が成立したことを機に創立された、国家機関です。

    この時、ショパンに関するあらゆる遺産は “国が主体となって守るべきもの”となったのです。

    NIFCは5年に一度開催される「ショパン国際ピアノコンクール」の主催者でもあり、

    関連機関のひとつであるショパン博物館のコレクションの一部は、ユネスコの世界記憶遺産にも登録されています。

     

    フリデリク・ショパン
    《エチュード ヘ長調 作品10-8、自筆譜(製版用)》 
    1833年以前 インク・紙 
    国立フリデリク・ショパン研究所附属フリデリク・ショパン博物館


    博物館のなかでも特に重要視されているのは、ショパン直筆による楽譜や手紙です。

    本国でも公開の機会が限られる、まさに「ポーランドの至宝」ともいうべき資料です。

    本展で日本初公開となる《エチュード へ長調 作品10-8、自筆譜(製版用)》(1833年以前)をよく見てみると、

    丁寧に書かれた楽譜の所々にショパン自身による修正がみられ、作曲の過程での思考の軌跡が分かります。

    また、親しい友人宛に出した手紙からは、歴史上の遠い存在ではなく、

    一人の人間としてのショパンの姿が浮かび上がってきます。

     

    その他ショパンに直接関係がある出品作といえば、デスマスクと左手像です。

    後年鋳造されたものではありますが、本人から直接型取りされたデスマスクは、

    ショパンの“存在の写し”に他なりません。

    西洋近代においてデスマスクは、単に故人の面影を伝える役割だけでなく、

    天才/英雄崇拝と結びつき、繰り返し複製されてきました。

    多くの人が偉人たちの存在(の写し)を手元に置くことを望み、

    さらに美術作品のように鑑賞したり、解釈を加えようとしたのです。

    (こうしたデスマスクをめぐる興味深いイマージュの問題については、

    美術史家・岡田温司氏の『デスマスク』(岩波新書、2011年)を参照ください)

     

    ウォピェンスキ兄弟
    《フリデリク・ショパンのデスマスク(1849年ジャン=バティスト・クレザンジェ作の鋳型による)》
    1930年 ブロンズ
    国立フリデリク・ショパン研究所附属フリデリク・ショパン博物館

    タデウシュ・ウォピェンスキ
    《フリデリク・ショパンの左手像(1849年ジャン=バティスト・クレザンジェ作の鋳型による)》 
    1968年 ブロンズ
    国立フリデリク・ショパン研究所附属フリデリク・ショパン博物館


    本展ではショパンと同時代に描かれた肖像画のほか、

    後の時代の画家によるショパン像も複数出品されます。

    彼が残した曲の影響力はもちろんのこと、更新され続けるショパン・イメージの根っこには、

    肖像彫刻としてのデスマスクも深く関わっているのかもしれません。

     

    アリ・シェフェール
    《フリデリク・ショパンの肖像》
    1847年 油彩・カンヴァス
    ドルトレヒト美術館
    Dordrechts Museum


     

    (a.i.)

  • 2020年06月12日 ART at home ~自宅で楽しむアートな本~ ④

    2010年に開館した静岡市美術館は、今年の5月1日で開館10周年を迎えました。

    ミュージアムショップは2010年7月1日にオープンしたので、ちょっと遅れて「もうすぐ10周年」です。

    ショップスタッフがお気に入りの書籍を紹介する「ART at home」の4回目は、ショップオープン当初から取り扱い続けている、ひそかなベストセラーとも言える文庫本です。

     

    「柳宗民の雑草ノオト」


    みなさんは雑草と聞いてどんなことをイメージしますか。

    丹精込めて育てている野菜や花の邪魔をする厄介者で、抜いても抜いても生えてくる…。

    あまりいい印象を持たれない方も多いのではないでしょうか。

    反面、アスファルトの割れ目から健気に花を咲かせる姿は、逆境に負けず頑張る人の代名詞になることもありますね。雑草魂なんて言葉が流行ったように、努力の象徴としてイメージする方もいるかもしれません。

     

    この本は園芸研究家の柳宗民が、植物の特性についてまとめた図鑑のような一冊です。

    専門的なポイントはきちんと押さえられていますが、優しい言葉で綴られた解説はとても読みやすく、時折添えられるエピソードにクスッとさせられます。

    美しい花も厄介者の草も分け隔てない、筆者の草花に対する深い愛情を感じます。

     

    そしてもうひとつの魅力は、植物ひとつひとつに添えられているイラストです。

    細部まで描きこまれた水彩画は、自分自身が本物の植物を観察しているような気分にさせてくれる程、思わず見入ってしまいます。

     

    ぜひお家の中でも四季の風情を感じながら読んでみて下さい。

    読み終える頃には憎かった雑草も少し愛おしく見えるかも。

     

    □柳宗民「雑草ノオト」筑摩書房、2007年

     

     

    (y.s & t.m)

  • 2020年06月09日 図録&グッズで展覧会気分!

    当館で5月24日まで開催予定だった「日・チェコ交流100周年 ミュシャと日本、日本とオルリク めぐるジャポニスム」展は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休館以後、残念ながら展示再開を迎えることなく閉幕となってしまいました。

     

    お客様から「展覧会は観れなかったけど、グッズはまだ扱っていますか?」とのお問い合わせも多く頂いています。

    ご安心ください!!

    ミュージアムショップでは美術館再開後も7月末までの予定で展覧会オリジナルグッズ、関連グッズの販売を行っております。

    展覧会の図録には600点余の図版と充実の論考を収録。
    グラフィックならではの東西の芸術交流、寄せては返すジャポニスムのうねりをお届けします。(¥2,750税込)


    続いて紹介するのは展覧会のオリジナルグッズ。
    ラインナップはポストカード、クリアファイル、マスキングテープ。
    どれも落ち着いたデザインで使いやすいですよ。


    人気のミュシャのグッズは、ステーショナリーからファッション小物まで幅広く取り揃えています。


    中村芳中・神坂雪佳・浅井忠など、日本人作家のグッズもあります。
    ショップスタッフは可愛らしく味わい深い絵に日々癒されております…


    どの商品も数に限りがございます。どうぞお早めにミュージアムショップでお求めください!!

     

    ■ミュージアムショップ&カフェの営業時間について

    当面の間、下記のとおりとさせていただきます。

    展覧会期間中/ショップ10:00~19:00、カフェ10:00~17:00

    展覧会期間外/ショップ、カフェともに10:00~17:00

     

     

    (a.y & t.m)

  • 2020年06月03日 しずびの立体ロゴマークができました!

    静岡市美術館のロゴマークは、静岡、そして日本を象徴する富士山をモチーフにしています。
    重ねられた2つの円には、美術館を中心とした人の輪の広がりと、地域と世界を結ぶイメージが表されています。
    また、視点と奥行きの変化によって見え方が変わるこのロゴには、美術館が多様な視点を発見する場所になればという想いも込められています。

    開館10周年を記念し、館内にロゴマークの立体オブジェが期間限定で登場しました。
    ロゴマークに込められた想いとともに、フォトスポットとしても親しんでいただければ幸いです。



  • 2020年05月20日 ART at home ~自宅で楽しむアートな本~ ③

    世界で最も知られるストリートアーティスト、バンクシー。
    今回は謎多き覆面アーティスト、バンクシーを特集した雑誌のご紹介です。


    2018年、彼の代表作品がオークション落札直後、自動的にシュレッダーが起動して裁断されるという出来事は世界中を驚愕させました。「シュレッダー事件」としてメディアで取り上げられたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。小池都知事のツイッターで彼の名を知った人もいるでしょう。

    特集では「シュレッダー事件」の真相から、経歴、彼が設立した認証機関“ペストコントロール”のことまで、様々な情報が満載です。

    中でもバンクシーが手掛けた《世界一眺めの悪いホテル》の全貌は必見! ホテル内の細部まで華麗な写真と共に堪能することができます。また、彼の素顔を知る人物たちからの貴重な証言も見逃せません。

    分かりやすい解説と共に、約100点の作品を紹介しているので、「そういえば作品はあまり知らないな」「ストリートアートの知識がないわ」なんて人でも十分楽しめます!

    彼の魅力と作品の世界観が存分につまった内容です。ぜひこの機会にストリートアートの世界に触れてみるのはいかがでしょうか。

    □「Casa BRUTUS 2020年3月号」マガジンハウス

     

    (a.s & t.m)

     

  • 2020年05月14日 ブログで展覧会気分(4)

    4回目の原稿を書いている本日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、静岡市の公共施設の休館延長が発表となりました。本展は休館のまま閉幕を迎えることになります。

    版画など光に弱い作品は、作品保護の観点から長期間展示することが出来ません。本展でも、会期半ばで展示替えを行う予定でした。そのため、現在の展示室には飾られていない作品もあります。
    しかも、チラシでこんな風に紹介していたものも…。


    「初登場」は果たせませんでしたが、登場予定だった展示室はこちらです。
    19世紀後半にヨーロッパでの日本美術への関心をかき立てた琳派の版本、型染めの型紙、浮世絵という3つの要素を紹介する序章の一部です。

     
    展示風景。ケース内は『冨嶽百景』(千葉市美術館)、『伝神開手北斎漫画』(千葉市美術館、ラヴィッツコレクション)。
    壁面は左から葛飾北斎《冨嶽三十六景 相州七里浜》(千葉市美術館)、葛飾北斎《冨嶽三十六景 隠田の水車》(千葉市美術館)、歌川広重《東海道五十三次之内 浜松 冬枯ノ図》

    葛飾北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》は、現代でも世界的に人気が高い作品ですが、19世紀後半のヨーロッパでも画家たちの目を惹いたようです。そのことを物語る作品がこちらです。チェコの美術の革新を目指して1887年に創立された「マーネス美術家協会」の展覧会を告知するためのポスターです。

     
    アルノシュト・ホフバエル《「マーネス美術家協会第2回展覧会」ポスター》1898年 チェコ国立プラハ工芸美術館

    大きな波にさらわれそうになる人物に、救命の浮き輪が届こうとしています。大胆な波の表現に北斎の「浪裏」が連想されます。

    船首の紋章の「S」「M」はマーネス美術家協会の頭文字、帆には「トピチェのサロン」と展覧会場名が記されています。下部には「マーネス美術家協会第2回展覧会」の文字と会期(11月3~30日)があしらわれています。保守的な美術界で溺れあがく芸術家に、先鋭的なマーネス美術家協会が救いの手を差し伸べるという象徴的な意味が込められています。

    このポスターを描いたプラハ出身の画家で装飾美術家のアルノシュト・ホフバウエルは、プラハ美術工芸学校在学中から日本の浮世絵版画を集めていたといいます。本展には1898年から99年にかけてホフバウエルが描いたポスターが出品されていますが、これらのポスターの構図にも浮世絵の影響が感じられます。さらに、ホフバウエルは、1908年にマーネス美術家協会の機関誌『ヴォルネー・スムニェリ』に北斎や歌麿について論考を寄せてもいます。

    展示室では、このホフバウエルのポスターを、北斎と広重の浮世絵版画が並ぶ壁のちょうど向かい側に配置しています。部屋の中央には北斎の版本や『ヴォルネー・スムニェリ』を置きました。浮世絵とチェコのポスターとが響き合う空間をお楽しみいただこうという趣向です。

     
    展示風景。

    ところで、このホフバウエルのポスターは前回のブログで触れたように1901年の白馬会第6回展ミュシャらのポスターとともに出品され、ヨーロッパの最新流行を示すグラフィックとして日本にインパクトを与えたのでした。

    日本美術の刺激から生まれたヨーロッパのポスターが、さらに日本へともたらされ、新しいイメージが生み出される。展示を通じてこのうねりを直接感じていただけないのが残念でなりませんが、本連載を通じて、めぐるジャポニスムの面白さを少しでもお伝えできれば幸いです。

     
    展示風景。ケース内は右から杉浦非水装幀の菊池幽芳著『百合子』(愛媛県美術館)、橋口五葉装幀の夏目漱石著『虞美人草』、『モリエエル全集』(いずれも個人蔵、千葉市美術館寄託)。

     

    (k.y.)

  • 2020年05月09日 ART at home ~自宅で楽しむアートな本~ ②

    ミュージアムショップスタッフがお気に入りの書籍を紹介する「ART at home」。
    今回、紹介するのは「水の生きもの」です。

    日本語版は国内の出版社から刊行されていますが、実際につくっているのは南インド・チェンナイにある小さな出版社、タラブックスです。
    さまざまな取り組みが本の持つ新たな可能性を教えてくれる出版社で、とりわけタラブックスの代名詞とも言える「ハンドメイド本」は世界中の本好きたちを虜にしています。


    この絵本もそんな「ハンドメイド本」のひとつ。
    手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷され、一冊ずつすべて手製本されています。
    インクのにおいや、厚みのあるざらざらとした紙の質感に導かれ、ページをめくるのがとても楽しい!
    五感で楽しめる本なのです。


    目に飛び込んでくるのは、カラフルでとってもおしゃれな水の生きものたち。
    ユニークなフォルムの魚、ワニ、カエル、タコ・・・
    作者ランバロス・ジャーが生まれ育ったガンジス川のほとりの生きものから、見たことのないような生きものまで、インドの民族絵画の一種である「ミティラー画」の手法を取り入れた繊細なタッチで描かれ、どれものびのびとしていて実に楽しげです。
    じーっと眺めていると、だんだん絵の中に吸い込まれていくような感覚になります。

    絵の上にはタイトルと作者のちょっとした解説が書かれています。
    その絵を描いた背景はもちろん、作者自身の思い出など微笑ましいエピソードもちらほら。
    これも見どころのひとつです。

    時間をかけて丁寧に作られたこの本を眺めていると、そこに人の体温が感じられてなんだかほっとします。

    目まぐるしい日々から少し離れて、ゆったりとした水の生きものの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

    □ランバロス・ジャー「水の生きもの」河出書房新社、2013年

     

    (a.y & t.m)

     

  • 2020年05月06日 ブログで展覧会気分(3)

    臨時休館中に展覧会気分を味わっていただく企画、3回目は『明星』と藤島武二をご紹介します。

    『明星』は、与謝野鉄幹が結成した東京新詩社の機関誌として1900年に創刊されました。与謝野晶子の情熱的な短歌に代表される新時代の文芸を育んだばかりでなく、表紙絵や挿絵などを通じて新しい視覚イメージを明治後期の世に送り出した雑誌です。

    会場風景。『明星』各号が並ぶケース。


    明治、大正、昭和を代表する洋画家のひとり、藤島武二は、1901年から『明星』の表紙絵や挿絵を手がけました。同年3月発行の『明星』第11号からの表紙には、金星のシンボルが記された星を額に戴く、夢見るような表情の女性の顔が描かれています。上部には別枠で変体仮名を交えて「みやうじやう」、すなわち「みょうじょう」という誌名がデザイン化されています(右から左へ読みます)。

    藤島武二《明星(『明星』第13号表紙)》1901年 個人蔵


    六芒星や百合といったモチーフ、文字と枠による巧みなデザイン化、太い輪郭線で人物の形を際立たせる手法など随所にミュシャらによるアール・ヌーヴォーのグラフィックの影響がうかがわれます。明星とは日本では金星のことを指し、金星は西洋では美の女神ヴィーナスと同一視されます。ジャポニスムの時代にパリで誕生したミュシャの女性像が、めぐりめぐって藤島の絵の中で、日本の『明星』を象徴する美の女神として生まれ変わっているようにも見えます。

    アルフォンス・ミュシャ《「椿姫」ポスター》(部分)1896年 京都工芸繊維大学美術宇工芸資料館


    アルフォンス・ミュシャ《春〈四季〉》(部分)1901年 インテック


    会場風景。藤島武二の挿絵や装幀。


    手前左から与謝野晶子『みだれ髪』1906年(1901年初版) 個人蔵
    与謝野鉄幹・晶子『毒草』1904年 和歌山県立近代美術館
    与謝野晶子『小扇』1905年(1904年初版) 千葉市美術館
    『中学世界』第8巻第5号 1905年 個人蔵
    奥、3冊とも川上瀧彌・森廣『はな』1902年 個人蔵

     

    藤島は『明星』の歌人たちの歌集の装幀も行いました。与謝野晶子の代表作『みだれ髪』もその1冊です。展示室では、東西の要素が融合した藤島の意匠をお楽しみ頂こうと、藤島の装幀本を一つのケースに集めています。ところで、ケースの奥に見えるのは長原孝太郎の作品で、右端の額は1901年10月に開催された白馬会第6回展のポスターです。この展覧会に藤島武二も長原孝太郎も出品していますが、さらに、洋行した画家たちが持ち帰った外国のポスターも一緒に展示されていたことが分かっています。第6回展にはパリで活躍していたミュシャや、ウジェーヌ・グラッセやアレクサンドル・スタンラン、そしてチェコのアルノルシュト・ホフバウエルのポスターが展示されたことが分かっています(ホフバウエルのポスターについては次回ブログでご紹介予定です)。

    余談ですが、その前年の白馬会第5回展が開催されたのは1900年。ちょうど来日中だったオルリクは白馬会展に出品し、『明星』に版画を寄稿しています。日本でいち早くミュシャを受容した藤島や長原は、実はオルリクとも交流がありました。チェコのプラハ国立美術館には、来日の記念にと藤島がオルリクに献辞を記して贈った『宋紫石画譜』が所蔵されています。

     

    (k.y.)

     

  • 2020年05月02日 ブログで展覧会気分(2)

    臨時休館中に展覧会気分を味わっていただく企画、2回目の本日は、ミュシャと並び本展の軸となる、エミール・オルリクを紹介いたします。

    エミール・オルリクはプラハに生まれ、ミュンヘンで主に銅版画を学びました。やがて木版にも関心を持ち、日本の錦絵に憧れたといいます。来日前には、ベルリンで限定発行されていた高級美術雑誌『パン』やミュンヘンで発行されていた美術雑誌『ユーゲント』などで銅版画を発表したり、ウィーン分離派展には第1回から参加するなど活躍していました。

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    展示風景。手前はウィーン分離派の機関誌『ヴェル・サクルム』第2年次第9号(和歌山県立近代美術館)、オルリクの作品が掲載されているページ。左隣の第1年次第11号(宮城県美術館)の表紙画はミュシャによるもの。展示ケースの後ろに見える水色の壁にはオルリクの作品が掛かっています。

    1900年4月に来日したオルリクは、日本画の筆法や、彫師、摺師の分業による浮世絵版画の技法を学ぶとともに、日光、箱根、静岡、京都、奈良など日本各地を訪問しました。また、この年の9月から10月にかけて開催された白馬会第5回展に銅版画、木版画、水彩画、パステル画などを出品したことも知られています。約10ヶ月の滞在後、帰国したオルリクは、自作と日本での収集品によってヨーロッパの木版表現に新風をもたらすことになります。

    《富士山への巡礼》はこの滞日の成果を示す作品の一つです。白装束に身を包んだ人々が目指すのは、画面右上に白く表された富士山です。菅笠をかぶり、着ござで身体を覆うなど明治時代の富士詣での風俗が捉えられています。橙色の空、緑色の土手、人々の装束の白と黄色といった明澄で多彩な色あいは、来日前のオルリクの木版画にはなかった特徴です。

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    エミール・オルリク《富士山への巡礼》1901年 パトリック・シモン・コレクション、プラハ

    またオルリクは東京で木版画のほかに自画石版も試みました。石版、すなわちリトグラフが石版工による複製印刷技術とみなされていた東京で、オルリクは自ら版に描画し、詩情あふれる東京風景を制作しました。《東京の通り》には色とりどりの暖簾を掛けた商店が並ぶ通りが明るい色調で描かれています。画家の手の動きがそのまま反映された写実的なスケッチですが、「古市」と染め抜かれたのれんの下に見える表札には、「ヲールリク」とカタカナで名前を入れる遊び心も発揮されています。

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    エミール・オルリク《東京の通り》1900-01年 宮城県美術館

    石版工だった織田一磨は印刷所でオルリクの石版画を目にして感銘を受け、後に東京や大阪の風景の連作版画を制作します。オルリクの自画石版は、芸術表現として版画を作ろうとした日本の画家たちに大きな影響を与えたのです。

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    展示風景。織田一磨の東京風景(千葉市美術館)、大阪風景(個人蔵)の連作。

     

    (k.y.)