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2021年04月25日 観察から生まれる美
英国王立植物園「キューガーデン」は、1759年、当時の皇太子妃で後のジョージ3世の母オーガスタ妃が造った9エーカーの庭園から始まりました。
その後、ジョージ3世とその妃シャーロットの時代には庭園が拡張され、植物学者のジョセフ・バンクスが庭園の監督者として登用されます。
バンクスは、自らクック艦長によるエンデバー号航海に同行したり、プラントハンターたちを世界各地へ派遣するなどして様々な植物を収集し、キューに集約させました。
植物画(ボタニカルアート)は写真誕生以前の記録媒体としての役割を担い、自然科学の興隆と一体化しながら発展してきました。
フランツ・アンドレアス・バウアー《ゴクラクチョウカ (ストレリチア・レギネ)(ゴクラクチョウカ科)》
1818年 石版画、手彩色、紙 キュー王立植物園 ©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
植物画が、いわゆるファインアートと本質的に異なるのは、科学的視点から描かれている点にあります。
その植物の特徴がわかり、何の種であるか同定できるよう、正確に写されていることが何よりも求められます。
また、植物画は基本1つの種で1つの画面が構成され、背景は描かれません(本展では美しき例外の植物図譜『フローラの神殿』も出品されます)。
そのため、どれも均質な画面のような印象を受けるのですが、丁寧に眺めてみると、植物をやや下から見上げた角度で描いていたり、形態をきちんと見せるために葉の向きが考慮されていたりと、意外にも描き手たちの“編集された視点”が存在することに気がつきます。科学的視点と芸術的視点。
私たちが植物画に魅了されるのは、精緻な描写のなかにこの両義性を見出すからかもしれません。
そして、芸術の本質が、西洋哲学で謂うところのミメーシス(模倣)にあるとするならば、芸術家と科学者は対極ではなく、「観察」を通して世界の真理に近づこうとした点で共振する存在といえるでしょう。(a.i)
展覧会「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」
会期:2021年4月15日(木)~6月6日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合は開館)、5月6日(木)臨時休館
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