2024年12月01日「アートはすべての人のために」
単純明快な線と鮮烈な色彩で描かれた人や動物たち―ポップでコミカルな作風が世界中で親しまれ、アンディ・ウォーホル、ジャン=ミシェル・バスキアらとともに1980年代ニューヨークのアートシーンを牽引したキース・ヘリング(1958-1990)。彼が一躍脚光を浴びるきっかけとなったのは、80年代初頭にニューヨーク地下鉄駅構内の使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれる落書きでした。
自らの作品を多くの人に見て欲しいという想いから公共空間での活動をスタートさせたように、芸術は特別な場所ではなく大衆の日常にこそあるべきだと考えたヘリングは、反戦、人種差別の撤廃、エイズ予防啓発など社会問題に対する様々なメッセージも作品に介在させて発信。世界中で壁画制作やワークショップを展開したほか、自身がデザインしたグッズを販売するポップショップを開設し、全ての人にアートを届けられるよう取り組みました。
また日本の思想や文化からもインスピレーションを得たというヘリングは、1983年の初来訪以降、何度も日本に足を運びました。時には500人の子どもたちと共同制作を行ったり、扇子、掛軸、茶碗といった東洋の伝統的なモチーフへのドローイングも手がけており、本展では日本文化とコラボレーションした貴重な作品も紹介します。
31歳の若さで世を去ってから30年以上が経過した今日もなお、作品に込められたメッセージは色褪せることなく私たちに語りかけてきます。会場に並ぶ150点あまりの多彩な作品を通して、キース・ヘリングが抱き続けた「アートはすべての人のために」という理念と多様な価値観をご体感ください。
(T.T)
キース・ヘリング展 アートをストリートへ
会期:2024年11月28日(木)~2025年1月19日(日)
会場内の作品は写真撮影OK! (一部エリアを除く、フラッシュ・動画撮影不可)