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2024年12月18日 【ワークショップレポート】銅版画でクリスマスカードをつくろう
12/1(日)、12/8(日)に、プレゼントワークショップ vol.42「銅版画でクリスマスカードをつくろう」(子ども編・大人編)を開催しました。
今回はクリスマスにあわせ、銅版画家の武田あずみさんを講師に招き、エッチング*の技法を用いてクリスマスカードを制作しました。
*銅板等を酸で腐蝕する凹版技法の一種。表面に耐酸性の防蝕膜をつくり、その上からニードル等で膜を除きながら線を描く。腐蝕液にひたすと、膜がついていない部分が腐蝕されて凹版ができる仕組み。今回は油性ペンで描いた部分を防蝕膜とし、表面に凹みをつけるディープエッチングも行いました。
まずは下絵を描き、銅板に転写します。
雪だるま、トナカイ、サンタクロース、クリスマスツリーなど
クリスマスを思わせるモチーフを描いたら、模様をつけて装飾します。
紙に刷った時ににどんな画面になるかを考えながら、描いていきます。
今回は油性ペンで描いた部分を防蝕膜とし、
油性ペンで塗りつぶした上からニードルで線を描くエッチングの技法と、
油性ペンで描いた部分の周辺にインクがたまり濃淡が出るディープエッチングの技法を体験しました。
版が完成したら、腐蝕液につけて腐蝕スタート。
15分間待ったら、腐蝕液を洗い流します。使用するのはなんと醤油!銅板に残った腐蝕液を中和する効果があります。
油性ペンをアルコールで拭き取り、版が完成しました。
版の上にインクを伸ばし、余分なインクは新聞紙で拭き取ります。
いよいよプレス機での刷り作業です。
ドキドキ…
きれいに刷れました!「こんな風になるんだ!」
「思っていたよりも、良い感じ!」と、作品が刷り上がるたび歓声が上がります。
インクの色を変え複数枚制作しました。版と作品を額に入れたら、完成!
静岡市美術館では年間を通して様々なワークショップを開催しています。
今後のイベントの最新情報は当館HP内「これからのイベント」をご覧ください。
(m.o)
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2024年12月13日 「Art to the Streets 1980年代と現在のキース・ヘリング」(対談)を開催しました!
12月7日に、「キース・へリング展」の関連事業として、対談イベント「Art to the Streets 1980年代と現在のキース・ヘリング」を開催しました。
キース・へリングに直接取材した経験を持つ美術評論家の村田真さんと、中村キース・ヘリング美術館ディレクターのHirakuさんを講師に招き、1980年代から今日におけるキース・ヘリングの芸術性と評価等についてお話しいただきました。-キース・へリングへの密着取材
キース・へリングは、地下鉄の駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークで描いた「サブウェイ・ドローイング」で一躍脚光を浴びました。
雑誌『ぴあ』の編集部に所属していた村田さんは、姉妹誌『Calendar』のために1982年の暮れから83年の年明けにかけて、ニューヨークでヘリングを取材されています。取材時の貴重な写真をスクリーンに映しながら、ニューヨークの街並みの印象や、取材時のエピソードをご紹介いただきました。村田真さん(以下、村田)「危ないから地下鉄には乗るなと言われていたのですが・・・。初日からキース・へリングに密着取材し、地下鉄に乗っていました。スリリングな経験でした。」
Hirakuさん(以下、Hiraku)「日本では、グラフィティは“秩序が乱される”というイメージがありますね。」
村田「グラフィティの暗黙のルールとして、“自分よりうまい人の落書きの上に描いてはいけない”というものがあります。下手な人は描けないので、うまい絵しか残らない。ニューヨークではすごく綺麗な絵ばかりでしたよ。」
Hiraku「90年代には消えてしまったニューヨークの景色ですね。街が整備され、悪い意味でキレイになってしまったと感じます。」
-サブウェイ・ドローイングについて
村田「1枚30秒から3分くらいで、ささっと描いていました。出来上がったら警察に捕まらないよう、すぐにその場を立ち去る。」
Hiraku「描き逃げですね(笑)」
村田「頭の中には何を描くかはあったと思いますが、描き直すところは見たことがありませんでした。」
Hiraku「1980年代のニューヨークは不景気で、広告が売れない時代。広告が入っていない、黒い紙が貼られていたスペースに、へリングが描いたということですね。」
村田「彼が話していたのはギャラリーでの個展は一日に200人とか、せいぜい1000人くらいにしか見てもらえない。けれども地下鉄の駅に描けば、一日1万人とか、多くの人に見てもらえる、と。そのことは強調していました。」
サブウェイ・ドローイングは1985年頃に終了します。転売されて高額で取引されるようになったのもその理由の1つです。オークションで売買されるのは、へリングが望むものではありませんでした。
あらたに多くの人々にアートを見てもらうため、へリングは次に自身がデザインしたグッズを販売する「ポップショップ」を展開するようになります。村田「彼は色々なことをやっていますが、グラフィティにしても、ワークショップにしても、ポスターなどの印刷物にしても、より多くの人に自分が描いたものを届けたい、楽しんでもらいたいと考えていました。」
Hiraku「まさに、現代で言う“拡散”と同じようなことをやっていたのですね。」
-キース・へリングの評価はどのように変わっていったか?
村田「21世紀以降のアートシーンでは、「市場価値」と「社会的価値」のふたつに分かれてしまったように感じます。へリングと同年代のバスキアは、マーケットで人気が出ました。一方、へリングは、社会的なつながりの中で語られ、評価が高まったアーティストです。」
-社会といかに関わるか、アートの社会的役割を問う
「東京レインボープライド2018」では、へリングの作品がメインビジュアルに起用されました。
また、12月1日の「国際エイズデー」での中村キース・へリング美術館の取組みのほか、現在も大衆の中にあるヘリングの作品をご紹介いただきました。Hiraku「へリング自身もゲイであり、エイズの診断を受けそれをオープンにして活動していましたが、当時は命の危険にさらされることでもありました。保守的な考えや暴力の危険に面し、自身がシンボルとして立ち作品を残すこと― 今も影響力のある側面だと思います。」
●会場から質問「キース・へリングは、自身の作品を残したかったのでしょうか。それとも、時間が流れるにつれて変化してよいと考えていたのでしょうか」
村田「サブウェイ・ドローイングなどのグラフィティは、やぶれたり、上から塗られたりしてもいいと思っていたはずです。」
Hiraku「一方で、へリングの最後の個展に出品された大作《無題》は、しっかりと構成が練られた作品です。美術史の中で自分の作品を残したいという意思があったと思います。作品を残すことと、変化していくこと…両方の考えがあったのではないでしょうか。」
村田さん、Hirakuさん、進行の中村キース・へリング美術館の八木さん、ありがとうございました!
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「キース・へリング展」では、活動初期のサブウェイ・ドローイングをはじめ、ポスター、レコードジャケット、子どもたちのために制作した作品群など、へリングの活動を振り返る150点を展示しています。へリングの多彩な表現活動を、ぜひ会場でご体感ください。
(c.o)
キース・ヘリング展 アートをストリートへ
2025年1月19日(日)まで開催中
会場内の作品は写真撮影OK! (一部エリアを除く、フラッシュ・動画撮影不可) -
2024年12月01日 「アートはすべての人のために」
単純明快な線と鮮烈な色彩で描かれた人や動物たち―ポップでコミカルな作風が世界中で親しまれ、アンディ・ウォーホル、ジャン=ミシェル・バスキアらとともに1980年代ニューヨークのアートシーンを牽引したキース・ヘリング(1958-1990)。彼が一躍脚光を浴びるきっかけとなったのは、80年代初頭にニューヨーク地下鉄駅構内の使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれる落書きでした。
自らの作品を多くの人に見て欲しいという想いから公共空間での活動をスタートさせたように、芸術は特別な場所ではなく大衆の日常にこそあるべきだと考えたヘリングは、反戦、人種差別の撤廃、エイズ予防啓発など社会問題に対する様々なメッセージも作品に介在させて発信。世界中で壁画制作やワークショップを展開したほか、自身がデザインしたグッズを販売するポップショップを開設し、全ての人にアートを届けられるよう取り組みました。
また日本の思想や文化からもインスピレーションを得たというヘリングは、1983年の初来訪以降、何度も日本に足を運びました。時には500人の子どもたちと共同制作を行ったり、扇子、掛軸、茶碗といった東洋の伝統的なモチーフへのドローイングも手がけており、本展では日本文化とコラボレーションした貴重な作品も紹介します。
31歳の若さで世を去ってから30年以上が経過した今日もなお、作品に込められたメッセージは色褪せることなく私たちに語りかけてきます。会場に並ぶ150点あまりの多彩な作品を通して、キース・ヘリングが抱き続けた「アートはすべての人のために」という理念と多様な価値観をご体感ください。
(T.T)キース・ヘリング展 アートをストリートへ
会期:2024年11月28日(木)~2025年1月19日(日)
会場内の作品は写真撮影OK! (一部エリアを除く、フラッシュ・動画撮影不可) -
2024年11月09日 【ワークショップレポート】しずびチビッこプログラム(「写真をめぐる100年のものがたり」展)
11/4(月・祝)にしずびチビッこプログラム(「写真をめぐる100年のものがたり」展)を開催しました。
しずびチビッこプログラムは小さな子ども達のためのアート体験プログラム。
お子さまがプログラムを体験中、保護者の方には展覧会(今回は「写真をめぐる100年のものがたり」展)をご覧いただきます。今回は2歳から6歳の子どもたちが、箱形のカメラづくりに挑戦。
感光紙を用い、撮影、現像までを行いました。
まずは厚紙で箱形カメラを組み立てます。
隙間から光が漏れていないかチェック!
完成したカメラをワークショップ室の窓際に並べ、内側の箱を前後させてピントを合わせます。
カメラをのぞくと、像がさかさまに写っています。
位置が決まったら、感光紙を貼って撮影スタート。撮影を待つ間は、展覧会出品作品をスライドで鑑賞したり
写真にまつわる絵本を読んで過ごしました。ちょうどいい感光時間はお天気によって大きく変わります。
この日の午前中は快晴!
あっというまに感光していくので、時間がきたらスタッフが急いでカメラを回収。
(スタッフが頑張る場面は子どもたちが「がんばれー!」と応援してくれました)
暗室で感光紙に現像液を塗ると…像が現れました!
ラミネートしたら、完成!静岡市美術館では年間を通して様々なワークショップを開催しています。
「しずびチビッこプログラム」は今後も各展覧会にあわせ開催予定です。
そのほか、今後のイベントの最新情報は当館HP内「これからのイベント」をご覧ください。(m.o)
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2024年09月14日 物質としての写真の魅力
写真が誕生したのは今から約180年前のことですが、本展では19世紀末から今日に至るまでの約1世紀にわたる写真表現の変遷を辿ります。
芸術としての写真の確立に努め、写真のモダニズムを切り拓いたアメリカのアルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946)、スナップショットの名手・フランスのアンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)、報道写真の分野で活躍したロバート・キャパ(1913-1954)やW・ユージン・スミス(1918-1978)など、写真界の巨匠たち68作家の代表作を6つのセクションに分けて紹介します。
近代写真史のダイジェスト版のような本展は、写真愛好家や歴史に関心がある方はもちろん、初めて写真に触れる方にもおすすめの内容となっています。
出品作の大多数は京都国立近代美術館のコレクションによるもので、そこに東京国立近代美術館、国立国際美術館からの作品を加えた約180点を紹介します。
京都国立近代美術館は、日本の美術館のなかでも先がけて写真というメディアを取り扱ってきた美術館です。
アメリカのアーノルド&テミー・ギルバート夫妻が約20年にわたって収集した世界屈指の写真コレクション「ギルバート・コレクション」が京セラ株式会社によって購入され、京都国立近代美術館に寄贈されたのは1986年のことでした。現在では約2,000点の写真が同館のコレクションとなっていますが、写真家自身が焼付をした諧調豊かな美しいプリントや、写真家監修のもとに制作された質の高いプリントが含まれています。
本展ではこの質の高いプリントを間近で鑑賞できる貴重な機会となるだけでなく、ゼラチン・シルバー・プリント(銀塩写真)以外にも、プラチナ・プリント、ブロムオイル・プリントといった幅広い写真技法にも触れることができます。
デジタルメディアが普及する今だからこそ、力強く訴えかけてくる物質としての写真の魅力を是非ご堪能ください。(a.i)
令和6年度国立美術館巡回展
写真をめぐる100年のものがたり
京都国立近代美術館コレクションを中心に
会期:2024年10月4日(金)~11月17日(日)
◎お得な前売券は10月3日(木)まで静岡市美術館、プレイガイド等で販売 -
2024年09月08日 【ワークショップレポート】しずびチビッこプログラム(「西洋絵画の400年」展)
8/31(土)にしずびチビッこプログラム(「西洋絵画の400年」展)を開催しました。
しずびチビッこプログラムは小さな子ども達のためのアート体験プログラム。
お子さまがプログラムを体験中、保護者の方には展覧会(今回は「西洋絵画の400年」展)をご覧いただきます。今回は2歳から6歳の子どもたちが、展覧会の出品作品を立体的に表した紙のジオラマ「立版古(たてばんこ)」づくりに挑戦しました。
はじめに出品作品をモニターで鑑賞。
今回立版古にする作品《サン゠ベルナール峠を越えるボナパルト》を鑑賞すると
「海賊かな?」
「さあいくぞ!って言ってるみたい」
「きっとお宝をさがしにいくんじゃない?」
…などなど、勇ましく描かれたナポレオンの姿に、子どもたちの想像もふくらみます。作品をよーく見たら、立版古づくりスタート!
作品を前景・中景・後景にわけて、はさみで切って組み立てていきます。
難しい部分は、スタッフといっしょに進めます。
完成!静岡市美術館では年間を通して様々なワークショップを開催しています。
「しずびチビッこプログラム」は今後も各展覧会にあわせ開催予定です。
そのほか、今後のイベントの最新情報は当館HP内「これからのイベント」をご覧ください。(m.o)
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2024年08月28日 「西洋絵画の400年」展 来場3万人を達成!
8月28日(水)に「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年」の来場者が3万人を達成しました。
3万人目のお客様は、伊豆の国市からお越しの親子です。
美術鑑賞が好きというお二人。夏休みの思い出に、とご来館いただきました。
高校生の娘さんは「教科書に登場するような作品ばかり。自分の目で確かめることができてよかった」と話してくれました。
お二人には、特別協賛社(清水銀行)、本展主催者(静岡新聞社・静岡放送)、静岡市美術館より記念品を贈呈しました。おめでとうございます!展覧会「西洋絵画の400年」は、9月23日(月・祝)まで開催しています。
モネ、ルノワールら人気画家のほか、ティントレット、ヴァン・ダイクら日本では目にする機会の少ないオールド・マスターの名画を通して、西洋絵画400年の歴史をご紹介します。閉幕が近づくと混みあうことが予想されます。お早目のご来場をおすすめします。
平日の午後(特に15時以降)は比較的ゆっくりとご覧いただけます。(c.o)
●珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年
2024年7月26日(金)~ 9月23日(月・祝) -
2024年07月05日 【イベントレポート】「彩色実演&『辰(たつ)』の飾り物絵付け体験」
6月30日(日)に「平野富山展」関連イベント「彩色実演&『辰(たつ)』の飾り物絵付け体験」を開催しました。
平野富山の次男で彩色木彫家として活躍する平野千里さんをお招きし、彩色の実演(約30分)を鑑賞後、本プログラムのために特別に制作された辰の飾り物((FRP製、原型は平野富山の彩色木彫作品、16㎝程度)に絵付けをしました。
当日は小学生から大人の方まで、24名の方にご参加いただきました。
参加者ははじめに千里さんが辰の飾り物に実際に絵付けをする様子を見学しました。
繊細な作業に、参加者も集中して見守りました。彩色に欠かせない金泥や胡粉を溶く作業も見せていただきました。
通常20分くらいかけて練っていくそうですが、平野富山は急いでいる時などに金を練るのがとても早かったのだとか。
千里さん曰く「(父・富山は)4、5回しか練っていないのに、かなり光っていた」とのこと(!)
千里さんの手元を見学しながら、当館学芸員のレクチャーをもとに参加者も辰の絵付けを進めていきます。
日本の伝統的な配色を取り入れながら、細部の装飾などでそれぞれの個性が表れた辰の飾り物が完成しました!
今回絵付けをした辰の飾り物の原型となった平野富山の作品《龍》は「平野富山展」でご覧いただけます。
緑や赤を基調とした極彩色で彩られていて、特に鱗の表現は圧巻!
脚や胴体の形に沿って色が幾重にも重なり、
截金(きりかね)のような斜め格子の細線が全体に施されています。確かな彫技と彩色技術で、超絶技巧ともいえる作品を生み出した平野富山。
「平野富山展」は人形、西洋彫刻、彩色木彫の三つの領域を横断し彩色の専門家としても作家を支えた富山の全容にせまる初の試みです。
展覧会は7/15(月祝)まで。ぜひ会場で平野富山の作品世界をご堪能ください。(m.o)
「没後35周年記念 平野富山展 ―平櫛󠄁田中と歩んだ彩色木彫、追求の軌跡」
会期:2024年6月6日(木)~7月15日(月・祝) -
2024年05月17日 平櫛󠄁田中と歩んだ彩色木彫、追求の軌跡
日本近代彫刻史上、重要な彩色木彫家の一人である平野富山(ひらのふざん)。その60年余りの作家人生の約半世紀もの間、平櫛󠄁田中(ひらくしでんちゅう)の彩色担当者を務めました。田中といえば、国立劇場ロビーで長年公開された※大作《鏡獅子》で知られますが、本作の彩色も富山が担っています。
※国立劇場の建替えに伴い、2029年まで田中の故郷・岡山県の井原市立平櫛󠄁田中美術館で長期公開中彩色木彫とは、彫刻した木地に日本画絵の具で彩色したものですが、木という素材の特性上、収縮や膨張、表面に樹脂が染み出るなどのリスクを伴います。これらの対処に通常は膠を混ぜた胡粉を下塗りします。しかし《鏡獅子》では寄木造りに適しつつも樹脂が出やすい檜材が選ばれたため、生漆を塗り全面に箔押しする処置が採られました。富山はこの様な彩色方法を田中とともに検討しましたが、作品の印象を決める文様選びについては特に田中からの細かな指示はなく、富山が提案したといいます。
つまり彩色担当者である富山には十分な知識と高い技術が求められた訳です。富山が師匠の後を継いで一人で彩色を担当したのは25歳の頃。田中とは親子ほどの年齢差がありました。富山は猛烈に勉強して腕を磨き、時には彩色を巡って田中と渡り合い「わしに意見するのは平野だけだ」と言わしめたといいます。
富山は生前、彩色木彫における彫刻と彩色の関係性を「不即不離」と言い表しました。不即不離とは二つのものがつかず離れずちょうどよい関係にある、という意味です。彫刻と彩色が均衡のとれた関係にあるからこそ成立するということでしょう。この言葉は、彫刻家と彩色担当者、まさに田中と富山の関係性をも表すものではないでしょうか。彩色担当者は作品の質を左右する重大な役割を担っていたのです。田中とともに、そして自らの彩色木彫を生涯かけて追求した富山。その足取りは日本近代彫刻史の中に確かに刻まれています。
(s.o)
「没後35周年記念 平野富山展 ―平櫛󠄁田中と歩んだ彩色木彫、追求の軌跡」
会期:2024年6月6日(木)~7月15日(月・祝)
◎お得な前売券は6月5日(水)まで静岡市美術館、プレイガイド等で販売 -
2024年05月03日 「京都 細見美術館の名品」来場者が1万人を達成!
5月3日(祝)に「京都 細見美術館の名品―琳派、若冲、ときめきの日本美術―」の来場者が1万人を達成しました。
1万人目は、沼津市からお越しのご友人お二人です。新聞で本展覧会の情報を知り来館したとのこと。
若冲が好きで、写真や画像ではわからない若冲の色彩を間近で見るのが楽しみ、とお話しくださいました。お二人には、特別協賛社(セキスイハイム東海)、本展主催者(静岡新聞社・静岡放送)、静岡市美術館より記念品を贈呈しました。おめでとうございます!
「京都 細見美術館の名品」は5/26(日)まで開催しています。
先週から、重要文化財《金銅春日神鹿御正体》の展示が始まりました。
本展では、細見美術館の約1000点に及ぶ良質なコレクションの中から重要文化財8件を含む名品104件を厳選して紹介します。コレクターの心をときめかせ、魅了した美の世界をお楽しみください。(c.o)
●京都 細見美術館の名品―琳派、若冲、ときめきの日本美術―
2024年4月13日(土)~5月26日(日)
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