2025年07月09日異国の地 色彩の発見

パウル・クレー《チュニスの赤い家と黄色い家》1914年 パウル・クレー・センター
1914年4月、クレーは友人の画家モワイエとマッケとともにチュニジアを旅しました。本作は滞在中に描いた30点の水彩画のひとつで、建ち並ぶ家や木々、人の姿など、眩い光に照らされた異国の風景が、幾何学的な形へと還元されています。全てが単純化されたわけでなく、現実と抽象の狭間にあるような状態ですが、重なり合う透明感のある色彩が画面に深さを与えています。画家はこのチュニジアで長年模索していた色彩の問題を克服し「色彩が私を捉えたのだ」と日記に残しました。
滞在の数か月後、世界は第一次世界大戦へと突入します。旅行を共にしたマッケが戦死するなどクレーも戦禍に飲まれていきますが、困難な時代のなかで作品の抽象度は高まっていきます。
(a.i)
「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」
2025年8月3日(日)まで開催中