2025年07月12日死の影 飽くなき創作

パウル・クレー《無題(最後の静物画)》1940年 パウル・クレー・センター(リヴィア・クレー寄贈品)


ナチズムによる前衛芸術への抑圧が強まると、クレーはドイツでの活動に限界を感じ、1933年、故郷ベルンへと亡命します。さらに自己免疫疾患による身体的な苦痛が彼を襲いますが、制作のペースは落ちることなく、新たな世界を切り開いていきます。

本作はクレー最晩年の静物画で、没後アトリエに残されていたものです。漆黒の背景のなかに佇む花瓶や花、彫像はどこか異質な存在感を放ち、忍び寄る死の予感が漂います。左下に描かれたのは、自作の《天使、まだ醜い》。天上と地上を繋ぐ天使の不完全な姿と、創作の道半ばにいる自身を重ね合わせたのでしょうか。

本展ではクレーの初期から最晩年に至る作品を紹介し、彼が生涯をかけて問い続けた創作の軌跡を辿ります。

 

(a.i)

 


「パウル・クレー展 創造をめぐる星座
2025年8月3日(日)まで開催中