2012年07月28日8/3(金)まで!「七夕の美術-日本近世・近代の工芸にみる」展と併せてご覧ください!~JR清水駅前「マリナート」にて、平野富山展を開催中~
突然ですが、平野富山(ひらのふざん 1911~89)という作家をご存じでしょうか。当館の展覧会を毎回欠かさずチェックして下さっている貴方なら、ピン、と来て下さっているはず。そうです、当館の昨年度末に開催した「竹久夢二と静岡ゆかりの美術」展の後期展示にて紹介した、旧清水市江尻出身の彩色木彫家です。
”彩色木彫”という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、言葉どおり、木彫に日本画と同様の技法を使って彩色した像のこと。富山は、この”彩色木彫”という伝統的な日本の彫刻を現代に甦らせた、重要な作家です。
まずは作品をご覧ください。
いかがでしょう。これ、すべてが”木”でできています。
「えっ?」と思われた方もいるでしょう。実際、本物を見るとまるで木彫像に衣裳を着せたかのようです。お客様の中にも、説明をして初めて「えっ?このヒモも木なんですか!?」と驚かれる方がいます。
まずここで、富山の確かな木彫技術に気づかされます。
そして、富山の真骨頂は、木彫に施された彩色。
ため息が出るような、緻密で美しい文様に圧倒されます。衣裳のたわみに沿って、実に見事につじつまが合っています。そう、衣裳を本物と見間違えてしまうのは、木彫技術の正確さに加え、この素晴らしい彩色に理由があるのです。
さて、たいへん遅くなりましたが、8/1(水)にJR清水駅みなと口に新しくオープンする「静岡市清水文化会館マリナート」にて、7/25(水)より「平野富山展―江尻が生んだ彩色木彫の名匠」展を開催中です。
富山没後の平成元年、ご遺族より旧清水市に富山の作品や、彼の収集品がまとまって寄贈されました。本展は、マリナートのオープンを祝して、今後ますます富山が市民の方々に親しまれ、愛して頂けるようにと企画したものです。
会場には、富山の彩色木彫作品はもちろんのこと、富山が真に彫刻を理解するためにと取り組んだ、塑像(西洋彫刻)作品も展示しています。
彩色木彫に取り組む傍ら、日展の彫塑部門に塑像を毎年出品し、最終的には日展の評議員にまでなった方。その才能は専門家にも高く評価されています。
その他、富山が収集した膨大な作品群より、富山が師と仰いだ2人の作家の作品も紹介しています。
まずは17才の若き富山が単身上京し、弟子入りした人形師、池野哲仙(いけのてっせん)の作品。こちらは、平成元年に寄贈を受けてから、久々の公開となります。
そして、富山が生涯の師と仰いだ、平櫛田中(ひらくしでんちゅう)。田中は、言うまでもなく日本近代彫刻の巨匠であり、実は、田中作品の彩色のほとんどを富山が手掛けているのです。富山に彫塑を学ぶようにとアドバイスしたのも田中です。
富山は田中より、講談社より発行された『平野富山木彫作品集』に、「集雅」という文字を題字に頂いています。今回、その原本を展示。田中と富山の温かな師弟関係が伺える作品です。
この展覧会は、8月3日(金)まで。会期残りわずかですが、ぜひ、多くの方々にご覧いただきたいと思います。なんと入館料は無料!!
現在静岡市美術館で開催中の「七夕の美術-日本近世・近代の工芸にみる」展を鑑賞したら、JRで約10分の清水駅へ!みなと口から徒歩3分です。新しく完成した「マリナート」に、ぜひお出かけください。
そして、最後に!
「マリナート」ではこの展覧会後より、平野富山作品の常設展示が始まります。小スペースではありますが、年間を通して3回の展示替え(4か月に1回作品を入れ替えます)を行います。
「マリナート」に行けば、いつでも富山作品が見られる!そんな風に皆さまに知って頂ければうれしいです。
(s.m)
展覧会の概要はこちら↓
静岡市文化振興財団公益財団法人移行記念・マリナート開館記念
平野富山展―江尻が生んだ彩色木彫の名匠
開催期間:平成24年7月25日(水)-8月3日(金)※7月30日(月)は休館
会場:マリナート1階 ギャラリー
開場時間:10:00~17:00
観覧料:無料
主催:(公財)静岡市文化振興財団/静岡市
企画:静岡市美術館
お問い合わせ:静岡市清水文化会館マリナート
TEL:054-353-8885
住所:〒424-0823 静岡市清水区島崎町214