2012年08月02日初秋の星祭り”七夕”
七月二十四日から七夕の美術展【後期】がスタートしました。
明日、八月三日~五日まで、静岡では第65回清水みなと祭りが開催されます。
お祭りを楽しむ前に、ぜひ、涼しい静岡市美術館にお立ち寄りください!
”ゆかた”でお祭りを楽しむ方、あなたの”ゆかた”に負けないくらい、素敵な和服を着た女の子たちの作品を静岡市美術館でみてください。期間限定で“ゆかた割引”開催中です!
和服に注目して、七夕の美術展でただ今展示されている作品をご紹介しましょう。
今回は、ポスターで大人気、橋本花乃《七夕》(昭和5~6年頃)大阪市立近代美術館建設準備室蔵です
“女性画家の描く初秋の星祭り”
七人のおかっぱ頭の少女たち。
どこか懐かしさ、純粋さただよう、ステキな作品です。
少女たちは、五色の短冊を切り、お習字をして、「七夕」と記された短冊を「はいどうぞ」と手渡し、笹竹につけている様子が、二曲一双の屏風の中で右から左へ流れるように展開しています。赤、青、黄色、白、緑の鮮やかな短冊に呼応するかのような、少女たちの着物の描写は、実に見事!
着物の柄もまたかわいらしいのです。
右の子は白地に団扇が散りばめられ、笹だけや菊の模様、赤い着物の子は、橘、薄緑色の子は紅葉。薄い赤の子は梅に菊、青い子は流水に紅葉、薄い青の子は真っ赤な菊。
そう、菊や紅葉は言うまでもなく秋の風物ですね。
七夕と言えば、現代の私たちの生活の中ではすっかり”夏の風物詩”ですが、旧暦では”秋”。つまり、”七夕は秋の初めの星祭り”なのです。昭和初年に描かれたこの作品の中の子どもたちが、こうした秋模様の着物を身にまとうのは自然なことなのです。
ちなみに短冊に願い事を書くというのも、ごく最近のことのようです。その証拠に画中の短冊にはどれをみても「をりひめさま」「天の川」「二星」などと七夕を象徴する語句が記されています。願い事は一つもありません。
こんな素敵な屏風を描いたのは、実は橋本花乃(1897~1983)という女性の画家です。彼女は大坂の美人画の名手・北野恒富の門下の雪月花星(星加雪乃、別役月乃、花乃、四夷星乃)の一人に数えられた優秀な画家でした。大正九年には母子の情景を暖かな眼差しで描いた《愛》で第二回帝展入選をはたしている実力者!
筆力の充実した本作は彼女もまた自信を持って帝展に出品した作品でした。しかし、なぜか落選してしまったそうです。以来、花乃は大規模な公募展への出品をやめ、昭和七年には家庭に入り、結婚後も城田花乃として活動を続けました。
でも、この「七夕の美術展」では、間違いなく一等賞!ですね。
(e.y.)