2015年06月11日「理想の”青”を求めて―憧れの色への挑戦」
今週末に開幕する展覧会「青磁のいま―受け継がれた技と美 南宋から現代まで」。
作品が搬入され、展示作業もいよいよ大詰めです。
さて、今回のブログは、青磁の”青”についてのお話です。
「天青(てんせい)」「粉青(ふんせい)」「翠青(すいせい)」・・・。
これらはすべて青磁の”青”を表した言葉です。
中国を起源とするこの美しい釉色のやきものを、かつての中国皇帝は雨上がりの澄み切った天空の色になぞらえて「雨過天青(うかてんせい)」と言い表しました
青磁は、しばしば空や碧玉(へきぎょく)といった自然界の青に喩えられますが、その中でも最も印象的な言葉の一つと言えます。
その青磁の色は、マットで濁りのない淡く澄んだ青緑色の「粉青」、 ヒスイのような透明感を持つやや緑色の強い淡く明るい青緑色の「翠青」をはじめ、オリーブ・グリーンや淡い黄色のものもあり、一言では言い表せない豊かな”青”の世界が広がります。
この青磁の”青”の発色源は、釉薬や土に含まれるわずかな鉄分。
空気中ではすぐにさびてしまう鉄も、還元焔焼成(かんげんえんしょうせい)という酸素不足の状態で焼かれることで青みを帯び、それがガラス質の釉薬の中に閉じ込められて永遠に青く保たれます。
しかしながら青磁は、初めから美しい青を呈していたわけではありません。
今から3500年前の中国・商時代中期、青磁の祖とも言うべき木灰(もっかい)を主原料とした灰釉(かいゆう)の陶器が焼かれます。
紀元後1世紀の後漢時代には灰釉から成熟した青磁が誕生しますが、まだまだくすんだ暗緑色。
ここから中国における理想の”青”を求めた長い挑戦の歴史が始まります。
そして、南宋時代(12−13世紀)、ついに青磁は頂点へと達します。
さて、これら中国の青磁は同時代の日本にも伝わり、時代を超えて大切に受け継がれていきます。
日本においても中世、近世と青磁への挑戦は見られますが、憧れの南宋青磁の再現に成功したのは明治時代以降。
近代の陶芸家らの試みは、やがて独自の創作へと移っていきます。
そして時代は今。作家の想いが投影された様々な青磁作品を見ることができます。
本展は、第Ⅰ章で日本に伝来した12−13世紀の中国・南宋時代の至高の青磁を、 第Ⅱ章で近代の日本の青磁の成果を、第Ⅲ章で現在の青磁の到達点を見ることができる、オール青磁の展覧会です。
いつの時代も理想の”青” を求めて生み出された青磁。あなたの理想の”青”に出会って頂ければ幸いです。
(s.m)
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