2017年03月26日「夢二と京都の日本画」の中の夢二

「夢二と京都の日本画」と題した本展は4章構成になっており、第1章と第4章に夢二の作品が展示されています。第1章では京都滞在までの夢二の歩みを概観し、第4章では大正7年に京都から東京へと戻った後の夢二の仕事を紹介しています。

大正元(1912)年、夢二は京都府立図書館で初めての個展を開催しました。それまで出版物を通じて絵や文章を発表していた夢二が、日本画、水彩画、油彩画などを初めて展示した記念すべき初個展です。この個展以降夢二は、画会や展覧会で1点ものの肉筆画を販売するようになり、画家としての出発を遂げたのです。

本展では、夢二が初個展を開いた頃に近い時期の制作と推定されている《河岸の落日》、《水のほとり》を京都国立近代美術館より拝借して展示しています。画家の息づかいを伝える柔らかい墨の線が魅力的な作品です。これらとあわせて展示している当館所蔵の《草に憩う女》や《木に寄る女》などは、その少し後の時期に位置づけられる作品です。夢二が掛軸に独特な縦長の画面に慣れてきていることや、女性の身につけている着物や帯に夢二独自のデザインが見られる点など、作風の変化を見て取ることが出来ます。

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左から《河岸の落日》《水のほとり》《初春》《合鏡》《草に憩う女》《木に寄る女》(すべて竹久夢二)

さらに、4章には昭和期の夢二の作品を展示しています。
第1章の作品と比較すると、筆遣いの幅が広がり、かすれた線や肥瘦のめりはりのある線など、画技に磨きがかかっています。《南枝早春・立春大吉》(三鷹市蔵)の双幅では、日本髪に白粉化粧の女性と断髪に薄化粧の女性をそれぞれの軸に描き、背景の梅は紅梅と白梅、羽子板を構えるポーズも動と静の違いをつけるなど、双幅ならではの対比の面白さが際立ちます。また、一幅ずつそれぞれに松竹梅の意匠を盛り込むといった趣向も凝らされています。

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夢二と京都の画家たちとの対比とともに、初期と晩年の夢二の作風の対比もまた興味深いものがあります。華やかな女性遍歴など人間ドラマに注目が集まりがちな夢二ですが、表現に関しては晩年までたゆまぬ努力を続けていたことは、何よりその作品が物語っているのではないでしょうか。

夢二と京都の日本画の共演も本日まで。展覧会は閉幕を迎えます。多くの皆様にご観覧いただき、ありがとうございました。そして、ブログのアップが遅れましたこと、お詫び申し上げます。
(k.y.)