2017年05月03日アルバレス・ブラボ写真展 作品紹介(3)《眼の寓話》1931年
眼鏡屋の看板を写した本作は、よく見ると裏焼きで、文字が反転しています。
アルバレス・ブラボの作品のなかで最も謎めいた写真として知られる一枚です。
自作について多くを語らなかったアルバレス・ブラボですが、
撮影前、向かいの床屋の鏡越しにこの眼鏡屋を見たというエピソードが残っています。
看板の眼がガラスに映り込むなど、幾重にも重なる視角の戯れには、
何が表(現実)で何が裏(虚像)なのかといった、「視ること」への問いが隠されているようです。
さらに「モダンな眼」と読める店名や、心の眼で見よ、と語りかけるような「SPIRITO(Sprit/精神)」という店主の名前も、
この作品の謎を一層強調しています。
アルバレス・ブラボは、メキシコの街を歩きながらそこで遭遇した風景や人々を撮り続けました。
日常に潜む謎や不可思議さが、何気ない景色のなかにふと顔を覗かせています。
(a.i)