2017年09月28日デンマーク・デザインにみる幸せのかたち
近年、ますます熱気を帯びる北欧ブーム。
自然との親和性に富んだ温かみのあるデザインは、日本でも高い人気を得ています。
近頃は、国連が発表する国民の幸福度ランキングで常に上位を獲得するなど、
福祉国家としてのイメージも定着しています。
本展で取り上げるデンマークも北欧諸国の一つです。
世界的なデザイナー、ウェグナーやヤコブセンなどを輩出したデザイン大国として有名です。
デザイナーの名前を知らなくとも、シェードを幾重にも重ねたヘニングスンのランプ〈PH(ピー・ホー)〉シリーズなど、
その特徴的なフォルムを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
「デンマーク・デザイン」展は日本で初めて開催される、デンマーク・デザインに焦点を当てた展覧会です。
近代から現代までの様々なデザイン約200点を紹介しています。
ポウル・ヘニングスン ペンダント・ランプ〈PH コントラスト〉 1958-1962年 ルイスポールセン 個人蔵 photo : Michael Whiteway
デンマーク・デザインの特徴として、まず、木などの自然素材を多く用いていることが挙げられます。
自国の森林資源に輸入材も取り入れながら、木を使ったものづくりの文化が発達しました。
次に、優れた職人技に裏付けられたフォルムの美しさです。
有機的なかたちと遊び心にあふれるデザインは「オーガニック・モダニズム」と呼ばれ、独自の魅力を放ちます。
この高い造形力と技術力の背景には、デンマークならではのものづくりの伝統があります。
デンマークには、数十年前まで「スネーカーマスター」という優れた家具職人の親方が経営する工房がありました。
デザインを生み出すデザイナーと、これをかたちにする工房は対等かつ強い信頼関係にあり、
この協働により数多くの名作が誕生しました。
三つ目の特徴は「リ・デザイン」という考え方です。
古い家具の研究と改良から、時代にあった新しいデザインを生み出す手法は、
デンマーク・デザインの根幹を成しています。
ハンス・ヴィーイナ[ウェグナー] 椅子 JH550〈ピーコックチェア〉 1947年 ヨハネス・ハンスン 個人蔵 photo: Michael Whiteway
自身も家具職人の資格を持つウェグナーは、代表作〈ピーコックチェア〉を
名匠ヨハネス・ハンスンとの協働により創り上げました。
古典研究と手仕事の技による独創的なフォルムは、
デンマークが培ってきた知恵と技術の結晶と言えるでしょう。
デンマーク・デザインは、伝統的なものづくりの精神が育んだ、人々の暮らしを豊かにするかたちなのです。
(s.m)