2019年07月12日初摺と後摺 摺りの違いを楽しむ 歌川広重「名所江戸百景 両国花火」
真っ暗な夜空にあがる大きな花火。
川には舟がたくさん浮かんでおり、橋の上にも多くの見物客が描かれています。
右の初摺(しょずり)は、打ち上げ花火がパッと花開いた瞬間を捉えたもので、
周辺の風景も花火により明るく照らされています。
対して左の後摺(あとずり)は花火があがった後のキラキラとはかなく散っていく様子が表現されています。
周辺も夜空と境目がわからないほど暗く、寂寥感が漂う作品です。
同じ作品でも異なる摺りを比較し楽しめるのは版画ならでは。
どちらも広重最晩年の大作「名所江戸百景」を代表する夜景の傑作です。
歌川広重「名所江戸百景 両国花火」 安政5年(1858)8月、大判錦絵、アレン・メモリアル美術館蔵
右:初摺、左:後摺
(s.o)