2020年04月30日ART at home ~自宅で楽しむアートな本~

本日はみなさんにご自宅でもアートを楽しんでいただきたく、ミュージアムショップスタッフがおすすめする書籍を紹介したいと思います。

「空を見てよかった」
現代美術家・内藤礼さんの言葉による作品集です。
三十年にわたる創作活動の中でうまれた言葉たちが記されています。


まずお伝えしたいのは、装幀の美しさ!
白いカバーに最小限の文字があるだけで、帯の無いとてもミニマムなデザインです。
…ん? 本当にそれだけ…?
よくよく見ると、カバーの所々に色がついているようにも見えます。
白地になにかの柄が印刷されているのです。
あとでわかりましたが、これも作品です。

書籍の印刷で、これほど大胆で繊細な表現には、めったにお目にかかることはできないのではないでしょうか。
そう感じるほどにとても微妙な印刷が施してあります。

思わずさわってみたくなり、そして目を凝らす。
何が映し出されているのか。すごい仕上がりだと思います。
「さわりたくなる本」はだいたい良い本なのですよね。
シンプルへの強いこだわりが感じられるブックデザインは、下田理恵さんによるものです。
いわゆる展覧会図録を数多く手がけられていて、どれも素晴らしいデザインばかりですよ。

本文を一読してみると多くは詩と短文ですが、「詩集」とも「エッセイ集」とも呼びにくいような気がします。
作品づくりに並行してうまれた言葉が編まれていくうちに、この本をあまり見たことのない、不思議で特別なものにしているようです。

本文中にも視覚的な作品が一つ収録されています。


いかがですか? 写真だけではうまく伝わりませんよね…。

「見ているとき、わたしはそこに何かを確かめようとしている。受け取る準備はできている。
でもその前に、それはむこうがわで霧散する。」

この本からなにが見えるか、それは見る人によって異なるのかもしれません。
ぜひ一度、手にとって頂けると嬉しいです。

□内藤礼「空を見てよかった」新潮社、2020年

 

(m.i & t.m)