2020年05月09日ART at home ~自宅で楽しむアートな本~ ②
ミュージアムショップスタッフがお気に入りの書籍を紹介する「ART at home」。
今回、紹介するのは「水の生きもの」です。
日本語版は国内の出版社から刊行されていますが、実際につくっているのは南インド・チェンナイにある小さな出版社、タラブックスです。
さまざまな取り組みが本の持つ新たな可能性を教えてくれる出版社で、とりわけタラブックスの代名詞とも言える「ハンドメイド本」は世界中の本好きたちを虜にしています。
この絵本もそんな「ハンドメイド本」のひとつ。
手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷され、一冊ずつすべて手製本されています。
インクのにおいや、厚みのあるざらざらとした紙の質感に導かれ、ページをめくるのがとても楽しい!
五感で楽しめる本なのです。
目に飛び込んでくるのは、カラフルでとってもおしゃれな水の生きものたち。
ユニークなフォルムの魚、ワニ、カエル、タコ・・・
作者ランバロス・ジャーが生まれ育ったガンジス川のほとりの生きものから、見たことのないような生きものまで、インドの民族絵画の一種である「ミティラー画」の手法を取り入れた繊細なタッチで描かれ、どれものびのびとしていて実に楽しげです。
じーっと眺めていると、だんだん絵の中に吸い込まれていくような感覚になります。
絵の上にはタイトルと作者のちょっとした解説が書かれています。
その絵を描いた背景はもちろん、作者自身の思い出など微笑ましいエピソードもちらほら。
これも見どころのひとつです。
時間をかけて丁寧に作られたこの本を眺めていると、そこに人の体温が感じられてなんだかほっとします。
目まぐるしい日々から少し離れて、ゆったりとした水の生きものの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
□ランバロス・ジャー「水の生きもの」河出書房新社、2013年
(a.y & t.m)