2020年06月12日ART at home ~自宅で楽しむアートな本~ ④
2010年に開館した静岡市美術館は、今年の5月1日で開館10周年を迎えました。
ミュージアムショップは2010年7月1日にオープンしたので、ちょっと遅れて「もうすぐ10周年」です。
ショップスタッフがお気に入りの書籍を紹介する「ART at home」の4回目は、ショップオープン当初から取り扱い続けている、ひそかなベストセラーとも言える文庫本です。
「柳宗民の雑草ノオト」
みなさんは雑草と聞いてどんなことをイメージしますか。
丹精込めて育てている野菜や花の邪魔をする厄介者で、抜いても抜いても生えてくる…。
あまりいい印象を持たれない方も多いのではないでしょうか。
反面、アスファルトの割れ目から健気に花を咲かせる姿は、逆境に負けず頑張る人の代名詞になることもありますね。雑草魂なんて言葉が流行ったように、努力の象徴としてイメージする方もいるかもしれません。
この本は園芸研究家の柳宗民が、植物の特性についてまとめた図鑑のような一冊です。
専門的なポイントはきちんと押さえられていますが、優しい言葉で綴られた解説はとても読みやすく、時折添えられるエピソードにクスッとさせられます。
美しい花も厄介者の草も分け隔てない、筆者の草花に対する深い愛情を感じます。
そしてもうひとつの魅力は、植物ひとつひとつに添えられているイラストです。
細部まで描きこまれた水彩画は、自分自身が本物の植物を観察しているような気分にさせてくれる程、思わず見入ってしまいます。
ぜひお家の中でも四季の風情を感じながら読んでみて下さい。
読み終える頃には憎かった雑草も少し愛おしく見えるかも。
□柳宗民「雑草ノオト」筑摩書房、2007年
(y.s & t.m)