2017年10月28日デンマーク・デザインの魅力③ デンマーク・デザインの巨匠、フィン・ユール

ただ今当館で開催中の「デンマーク・デザイン」展の魅力に迫るブログシリーズの3回目、

今回は、デンマーク・デザインの巨匠として名高いフィン・ユールの作品をご紹介します。

皆さん、フィン・ユールという作家をご存知でしょうか。日本でこそ、アーネ・ヤコプスン[アルネ・ヤコブセン]やハンス・ヴィーイナ[ウェグナー]ほどの知名度はないものの、デンマークでは大変著名な建築家です。

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フィン・ユール 椅子〈チーフテンチェア〉 1949年 ニルス・ロート・アナスン デンマーク・デザイン博物館

photo: Designmuseum Danmark / Pernille Klemp

フィン・ユールといえば、まずは〈チーフテンチェア〉が挙げられるでしょう。

1949年に開催された展覧会で発表したこの椅子は、当時の国王フレズレク9世が腰かけたことで有名です。その場にいたジャーナリストが「この椅子は”国王の椅子”にすべきですね」とユールへ問いかけたところ、「むしろチーフテンチェア(酋長の椅子)と呼んでください」と答えたと言い、この名前が付いたという逸話が残っています。

本作品は「酋長」の名前にふさわしく、一人掛けにはやや大きすぎるほどの、豪奢な雰囲気の安楽椅子です。サイズ感の割に、構造を支える貫(ぬき)はほっそりとしています。革張りの座面やひじ掛けは浮いているようにも見え、軽やかな印象さえ与えます。

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ユールの椅子は彫刻的とよく評されますが、この作品にも、随所に彫刻的なラインが見られます。

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ユールは自身の作品を、家具職人のニルス・ヴォザとの協働により制作しました。ニルス・ヴォザは職人の最高位「スネーカーマスター」の称号をもつ名匠で、ユールの椅子は彼の存在なしには完成しなかったとまで言われています。

その他、日本の鳥居を彷彿とさせる貫の構造から〈ジャパンソファ〉という名称が付いたとされる椅子や

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有機的なフォルムが印象的なボウルなども手掛けています。

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建築作品としては、自邸「フィン・ユール邸」が有名です。

デンマークの首都コペンハーゲンの北部にあるオアドロプ美術館と同じ敷地内に現存する邸宅ですが、日本とも深いゆかりがあることをご存知でしょうか。

実は岐阜県高山市にも、忠実に再現されたフィン・ユール邸が存在します。

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飛騨高山 フィン・ユール邸(再現) 写真提供:株式会社キタニ

手がけたのは、日本で唯一、デンマーク家具のライセンス生産・企画販売を行う(株)キタニおよび(株)キタニジャパンを中心とする、NPOフィン・ユール アートミュージアムクラブです。

去る9月23日(土・祝)には、当館にてこの(株)キタニジャパンの代表取締役社長で、NPO法人の代表も務められる東庄豪氏にご講演を頂き、フィン・ユール邸のプロジェクトについても詳しくお話を頂きました。

制作にあたっては、現地からフィン・ユール邸を管理する財団の顧問建築家も来日し、素材や制作方法の吟味は高山の風土に合ったかたちで行われたそうです。

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フィン・ユールが自邸を設計したのは1942年のことです。庭を囲むようにして建物がL字型に配置され、どの部屋からも自然が望めるようになっています。床の高さは地面に近く、大きな開口部はそのまま外の空間へとつながっています。

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リビングルームには〈チーフテンチェア〉が。

フィン・ユールは、建築設計はもちろん、内装や調度品などあらゆるものをデザインしました。

邸宅に備え付けられた椅子も、見どころのひとつです。

玄関を入ってすぐ、光が降り注ぐガーデンルームや

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バスルーム前にも一人掛け用の椅子があります。

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赤や青、黄色などに塗られた壁面の色彩も印象的です。

光の反射により、空間の色調をコントロールする意図があります。

玄関の真上は青色を、

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リビングルームはやわらかなクリーム色を使用しています。

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バスルームにはターコイズブルーが。

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リビングルーム外のサンシェードは黄色く塗られ、内部空間を温かく照らします。

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デンマークと日本の架け橋とも言える、岐阜県高山市のフィン・ユール邸。

ぜひ現地にて、その空間を体感されてはいかがでしょうか。

「デンマーク・デザイン」展も残すところあと2週間余りとなりました。

皆さまのご来館、心よりお待ちしております。

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(s.m)