2026年03月07日「かがくいひろしの足跡」

50歳で絵本作家となり、病で急逝するまでのわずか4年の間に16冊もの絵本を生み出したかがくいひろし(1955-2009)。しかし、実はそれらの作品が28年間にわたる特別支援学校での現場経験から育まれたことはあまり知られていません。

かがくいは東京学芸大学で彫刻を学び、卒業後は千葉県内の養護学校で教員生活を開始しました。当時は1979年の養護学校義務化により全国に次々と養護学校が新設された、まさに障がい児教育の黎明期と言える時代でした。熱意と活気にあふれる現場で、かがくいも生徒一人一人に合わせた授業や教材づくりに取り組みます。動くものに興味を持つ子が多いことに目を向け、1986年頃からは同僚とともに人形劇「つくし劇場」に熱中し、誰もが感覚的に楽しめる「音・動き・見立て」を追求します。これら教員時代の経験は、その後の絵本制作の礎となりました。

かがくいは常日頃ノートを持ち歩き、思いついたアイデアを描き留めました。40代に入ると教職の傍ら自身の創作活動を本格化させ、2005年『おもちのきもち』で第27回講談社絵本新人賞を受賞。念願のデビューを果たしました。以後驚異的な速さで次々と刊行を重ねますが、2009年に教職を離れ絵本制作に専念しようとした矢先、54歳で世を去ります。

「絵本を読む子どもたちには、笑っていてほしい」と切に願ったかがくいの絵本は、底抜けに楽しく、温かなユーモアに満ちています。身の回りの素朴な物たちが主人公となり、かがくい独特の擬音語・擬態語とともに繰り広げられる物語は、年齢や障がいの有無を問わずあらゆる人を笑顔に導きます。展覧会では「だるまさん」の続編を含む未完ラフ作品も多数公開します。惜しくも絵本として世に出ることのなかった、かがくいの溢れんばかりの創造の世界の続きをぜひ会場でお楽しみください。

(s.o)


 

「かがくいひろしの世界展」
2026年3月22日(日)まで。ご来場はお早めに!