2021年08月18日没後70年 吉田博展 作品紹介①《日本アルプス十二題 劔山の朝》
朝日がはるか遠くの山頂を紅に染め、谷間の万年雪が白く輝いています。まだ薄暗い前景のテント付近には、朝食の支度でしょうか、焚火の煙が上っています。壮大な自然と対比された人間の小さな営みです。
吉田博は北アルプスの鹿島槍ヶ岳にテントを構え、そこから剱岳の一瞬の表情を捉えました。同じ場所からの眺望を油彩でも描きましたが、自著『高山の美を語る』の口絵に会心の作の一つとして選んだのはこの木版画でした。複雑な稜線を写し取った簡潔な線、紅から紫を経て藍色へとなめらかに移り変わる夜明けの色合いなど魅力溢れる作品です。
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《日本アルプス十二題 劔山の朝》 大正15(1926)年
(k.y)
「没後70年 吉田博展」
会期:2021年6月19日(土)~8月29日(日) ※月曜休館