2021年08月19日没後70年 吉田博展 作品紹介②《冨士拾景 朝日》

長辺が70cmを超える本作品は、多色摺りの木版画としては破格の大きさです。吉田博が大作に挑んだ初年の作で、版木や紙の収縮による色のずれに悩まされたといいます。

しかし、仕上がった作品には苦労の跡は微塵もありません。堂々たる富士山は大作ならではの迫力です。朝日を受け立体的に浮かび上がる山頂。明るい東側の輪郭線は薄紅色、陰になる西側は藍色と、二色使いの主版が、朝焼けの色を繊細に演出しています。前景の水辺の草は、かすれた筆跡までも再現されており、彫りと摺りの技術の冴えを見せます。

《冨士拾景 朝日》 大正15(1926)年


(k.y)

 

没後70年 吉田博展
会期:2021年6月19日(土)~8月29日(日) ※月曜休館