2021年08月22日没後70年 吉田博展 作品紹介③《池の鯉》

色とりどりの錦鯉がえさを求めて群がっています。水面の反映を描くことの多い吉田博ですが、ここでの関心は水中のようです。波の泡立ちと鯉の重なり具合で水面と水中を巧みに描き分け、水音が聞こえてきそうな臨場感が漂います。

画面上部、中央の人物は吉田の妻・ふじをにそっくり。彼女も画家でした。横でスケッチをしているのは長男の遠志でしょうか。次男の穂高は1926(大正15)年生まれ。この絵が描かれた年にはまだ乳飲み子のはずですが、餌やりに挑戦する幼児の姿が描かれています。遠志も穂高も後に絵の道に進みました。芸術家一家の日常を捉えた微笑ましい情景と解釈できそうです。

《池の鯉》 大正15(1926)年

 


(k.y)

 

没後70年 吉田博展
会期:2021年6月19日(土)~8月29日(日) ※月曜休館