2021年12月24日風景画のはじまり―【3】画家=版画家の誕生

19世紀のフランスでは、印刷文化の浸透とともに版画芸術が広く伝播します。雑誌や絵画販売カタログに様々な版画が添えられ、人々の手に渡りました。風景はブルジョワに人気の絵画主題で、版画の題材となることも多かったといいます。

特に微妙な濃淡によって繊細な色調の変化を表現することができたエッチングは、風景描写に適した技法でした。化学薬品の腐食作用を利用して製版を行うこの技法は、17世紀のバロック期に盛んに用いられた後、1860年代から再び流行します。コローやバルビゾン派の画家たちは好んでエッチングを取り入れました。

彼らの多くは刷りだけを職人に任せ、製版は自ら行ったことが知られます。油彩画で養われた表現技法は、版画でもいかんなく発揮されていきます。シェニョーのエッチングはそのことをよく示しています。繊細なハッチング(複数の平行線を密に並べ、明暗を表現する技法)による写実的な描写は、動物画家として培った細密描写の技量に裏付けされたものでしょう。

ジャン=フェルディナン・シェニョー《平原の羊の群れ》エッチング/紙 個人蔵


 

(c.f)

 

「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」
会期 :2021年11月20日(土)-2022年1月23日(日)
休館日:月曜、年末年始[12月27日(月)-1月1日(土・祝)]
※ただし1月3日(月)、1月10日(月・祝)は開館、1月4日(火)、1月11日(火)休館

●1月2日、3日は開館!新年は「しずび」で!●