2022年05月01日花ひらくフランス絵画【3】 ナビ派とポン=タヴァン派:平坦な色面と内的な表象

新印象派の登場と同じころ、フランス・ブルターニュ地方のポン=タヴァン村では、ベルナールによって原色の平坦な色面を明瞭な輪郭線で囲むクロワゾニスム様式が生み出されました。ゴーギャンはこの反写実的な描法を、想像上の風景を描くのに用い、総合主義と呼ばれる新たな美術潮流を築き上げていきます。

1888年、同地に滞在したセリュジエが、ゴーギャンのもとで描いた風景画をパリに持ち帰り、ドニ、ボナール、ランソンらにその教えを伝えます。彼らはヘブライ語で預言者を意味する「ナビ」をグループ名に冠し、ゴーギャンの実践に倣いました。

平面性が際立つクロワゾニスム様式は、遠近法の使用を常とした西洋絵画の伝統を覆すものでした。事実、この絵画様式には浮世絵からの影響も指摘されています。中でもランソンは、日本美術の雑誌を精力的に収集していました。本展出品作の《海辺の風景》でも、空間の平面的処理や形態の単純化に、浮世絵からの影響が窺えます。

 

(c.f)

 

ポール=エリー・ランソン《海辺の風景》1895年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE

 


「スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画」
会期:2022年4月9日(土)~6月19日(日)
休館日:毎週月曜日 ※5月2日(月)は開館