2022年05月31日「スイス プチ・パレ美術館展」―人物紹介① ユトリロとヴァラドン

エコール・ド・パリを代表するシュザンヌ・ヴァラドンとモーリス・ユトリロは、数奇な人生を送った親子画家です。

母親のヴァラドンは美術モデルとしての活動の方が知られ、ルノワールを筆頭に名だたる画家たちの作品にその姿が表されています。若い頃にはサーカスの曲芸に従事しましたが、転落事故が原因で美術モデルに転身、さらには自らも画家になるという異色の経歴の持ち主でした。シュザンヌという呼称は画家のロートレックが考えたもので、老画家の前でポーズをとる彼女を、水浴中に老人から裸体を覗き見られる旧約聖書の登場人物、スザンナになぞらえたことに端を発するといわれています。

ユトリロの父親が誰であったかは定かでありません。恋多きヴァラドンは息子を母親に預けて奔放な生活を送り、十代のユトリロは孤独感からか酒に手を伸ばしてしまいます。アルコール依存症の克服のために絵画制作を始め、詩情溢れるパリの街路を描きました。署名の末尾にはヴァラドンを表すVが添えられ、母親への複雑な心境が想像されます。

 

(c.f)

 


シュザンヌ・ヴァラドン《コントラバスを弾く女》1908年


モーリス・ユトリロ《ノートル=ダム》1917年



いずれもASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE


「スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画」
会期:2022年4月9日(土)~6月19日(日)
休館日:毎週月曜日