2022年06月02日「スイス プチ・パレ美術館展」―人物紹介② サラ・ベルナール

本作でモデルを務めるサラ・ベルナールは、19世紀末から20世紀初頭にパリで活躍した女優です。国立劇団のコメディー・フランセーズやオデオン座に所属し、美声と端正な容姿で多大な人気を博しました。卓越したカリスマ性から一時は劇団を立ち上げ、世界巡業も行ったことが知られます。女性らしいふくよかな体つきが好まれた当時にあって、サラは華奢な体形を武器に中性的なイメージを築き上げ、男役も務めました。棺で就寝するという奇行で物議を醸したほか、俳優や作家たちと浮き名を流すなど、話題性に事欠かない人物でした。

ラリック、ミュシャ、ロートレックといった芸術家たちと親交を深め、サラの姿を流麗な植物模様とともに表したミュシャのポスターは、彼女のプロモーション戦略に一役買いました。

本作を描いたのは、モンマルトルを活動拠点としたボッティーニです。当時、サラは60代。大女優としての貫禄を身にまとい、衰えを知らぬ美貌への矜恃が滲み出ています。

 

(c.f)

 

ジョルジュ・ボッティーニ《バーで待つサラ・ベルナールの肖像》1907年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE



「スイス プチ・パレ美術館展 花ひらくフランス絵画」
会期:2022年4月9日(土)~6月19日(日)
休館日:毎週月曜日