2022年07月30日【THE HEROES展 作品紹介】武者絵・鐔編 ―源平時代の英雄①
武者絵は『平家物語』などの軍記物語や武勇伝説に登場する人気の英雄(ヒーロー)、武者を描いた浮世絵です。
開催中の展覧会「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語」ではアメリカ・ボストン美術館のコレクションから菱川師宣、歌川国貞、歌川国芳、月岡芳年などが手掛けた武者絵118点を国内初出展しています。本展出品作品の中から、武者絵、鐔(つば)の一部を、そこに描かれた武者たちのエピソードとともにご紹介します。
【源平時代の英雄】
平安末期、平清盛により栄華を極めた平氏と、源頼朝をはじめとする源氏との間で多くの戦いが繰り広げられ、文治元年(1185)、壇ノ浦の戦いで平氏は滅亡します。この間の出来事は『平家物語』などの軍記物語によって語られ、武者絵の画題として大きな割合を占めています。
平清盛 福原の怪異
平清盛が都を福原に移した後、平家の人々は毎夜悪夢に悩まされていました。
ある日庭に大小多数のドクロが現れ、大ドクロとなり清盛を睨みつけましたが、清盛が少しも騒がず睨み返すと消え伏せたといいます。
五条橋 橋弁慶
京都・五条橋で千本の太刀を集めていた弁慶。
ある夜、少年・牛若丸(源義経)の太刀に目をつけ戦いを挑みますが、敗れて家臣となりました。
後に源平合戦で大活躍する主従の出会いを描いた橋弁慶図は武士にも好まれたのでしょう、刀の鐔(つば)にもみることができます。
こちらの鐔(つば)の直径は約7㎝。手のひらに収まるほど小さな空間に、物語の世界が緻密に表されています。
橋の上でひらりと舞う牛若丸の高下駄、弁慶が背負う七つ道具、波立つ水の表現など、まさに超絶技巧!
伏木隠れ
治承4年(1180)、以仁王の反乱に応じて挙兵した源頼朝ですが石橋山の戦いで敗れ伊豆国土肥に退き、大きな洞(うろ)のある伏木に身を潜めます。
追ってきた平家方の梶原景時は頼朝に気が付きますが、中には誰もいないと味方を欺き、頼朝を助けました。
宇治川合戦
源平合戦で活躍した木曽義仲ですが、後白河法皇や従兄弟である頼朝・義経らと対立し、寿永3年(1184)、宇治川を挟んで義経の軍と戦います。
この時義経方の佐々木高綱と梶原景季は頼朝からもらった名馬で先陣争いをしますが、高綱が景季の馬の腹帯が緩んでいると騙し、先に先陣の名乗りを上げました。
川岸で弓を口にくわえ馬の腹帯を締めなおす景季と、先に川に馬を乗り入れた高綱。
両者の表情の違いにもご注目ください。
(s.o、m.o)
「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語」
会期:8月28日(日)まで(8月15日除く毎週月曜休館)