2022年08月19日【THE HEROES展】刀剣の見どころ④ 《太刀 銘 備州長船住兼光》、重要文化財《太刀 銘 備州長船兼光 延文三年二月日》 


《太刀 銘 備州長船住兼光》 鎌倉時代(14世紀) ボストン美術館



重要文化財《太刀 銘 備州長船兼光 延文三年二月日》 南北朝時代 延文3年(1358)ふくやま美術館(小松安弘コレクション)

この太刀の作者・兼光は『観智院本銘尽』に「長船流景光子」と記されているように、光忠-長光-景光から続く長船派嫡流の刀工です。作品は太刀・短刀ともに比較的多く遺されており、制作年を茎(なかご)に記した作品が鎌倉時代末期の元徳(1329-32)から南北朝時代中期の貞治(1362-68)までの40年余りにわたって遺されています。また観応(1350-52)頃を境に作風が大きく変化することから、初代と二代が存在したとする見方もあります。

ボストン美術館所蔵の太刀は制作時期を明記していませんが、やや細身で鋒が小ぶりな美しい姿、よく整った小板目の鍛え肌、父景光が創始した片落互の目を交えた刃文から、兼光としては比較的早い鎌倉時代末期の制作と考えられます。本作品には下り藤、九曜、桐の家紋を金蒔絵で表した糸巻太刀拵(いとまきたちごしらえ)が付属し、チャールズ・ゴダード・ウェルドが明治19年に購入した際の領収書の記述から、かつては日向延岡藩主内藤家に伝来したものであったことが知られます。


一方、延文3年(1358)の制作年紀が記された太刀は、身幅が広く3尺(約90㎝)に迫るほど豪壮で覇気に満ちています。南北朝時代に制作された大太刀は後世磨上げて無銘となったものが多い中、生ぶ茎(うぶなかご)で制作当初の勇壮な姿を留めている点でも貴重な一口です。こちらは備前物を多く愛蔵した上杉謙信・景勝にゆかりの米沢藩主上杉家に伝来しました。


作風が大きく異なる長船兼光の太刀2口を会場で比較しながらご覧ください。

(t.t)


「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語」

会期:8月28日(日)まで(毎週月曜休館)