2022年11月11日図案家・杉浦非水が誕生した時代

杉浦非水は1876(明治9)年生まれ。過去に静岡市美術館で展覧会を開催した、フォーヴィスムの画家ヴラマンクや、洋画家・吉田博と同い年です。太平洋画会を率いた吉田が、東京美術学校教授で白馬会を率いる10歳年上の黒田清輝に激しい対抗意識を燃やしたのとは対照的に、非水は黒田を終生師と仰ぎました。

愛媛県松山出身の非水は、上京して川端玉章に入門し、玉章が教授を務める東京美術学校日本画科に入学しました。この間、黒田清輝の知遇を得て、黒田の親戚の令嬢に日本画を教える代わりに黒田からフランス語を習い、やがて黒田家の書生となります。1900(明治33)年のパリ万国博覧会視察を終え、黒田清輝が持ち帰った美術の参考資料を見た非水は、アルフォンス・ミュシャのポスターをはじめ、当時ヨーロッパで流行していたアール・ヌーヴォーの図案にすっかり魅せられました。洋風図案を専門的に手がける人などいなかった時代でしたが、黒田の後押しもあって非水は図案の道を歩むことを決意しました。その後の非水のめざましい活躍ぶりは今回の杉浦非水展の出品作品が雄弁に物語ってくれます。

ところで、実は非水というのは雅号で本名は杉浦朝武(つとむ)です。この雅号を用いるようになったのは1905(明治38)年、29歳の頃でした。奇しくも、ヴラマンクらが鮮烈な色づかいの作品をパリのサロン・ドートンヌに出品し、批評家から野獣(フォーヴ)に例えられたのと同じ年です。次々と新しい美術思潮が生まれる時代に、非水もまた図案という分野のパイオニアとして、新たな表現を求めて生きたのでした。

 

(k.y)


杉浦非水 時代をひらくデザイン
2022年11月19日(土)〜2023年1月29日(日)
※会期中に一部作品の展示替えがあります[前期:11/19~12/18 後期:12/20~1/29]

前売券:11月18日(金)まで販売中!
静岡市美術館、ローソンチケット[Lコード42822]、セブンチケット[セブンコード097-050]、チケットぴあ[Pコード686-202]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、流通通り店)、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店、大丸松坂屋静岡店友の会、戸田書店江尻台店