2023年03月23日おいしいボタニカル・アートの世界

本展は、英国キュー王立植物園の協力のもと、英国の食を彩った野菜や果物、ハーブやスパイス、お茶などの「おいしい」植物画のほか、食卓を飾るティー・セットや当時のレシピ帖などを紹介するものです。

そもそもボタニカル・アート(植物画)は、写真が誕生する以前の記録媒体として植物が写実的に描かれたことに端を発します。起源は古代ギリシア時代とされており、数ある植物の中から有用な薬用植物を識別する目的で描かれました。つまり、食用となる植物を描いた植物画は、ボタニカル・アートの原点ともいえるのです。

ジョゼフ・ヤコブ・リッター・フォン・プレンク《キャベツ》1788~1803年頃 エングレーヴィング、手彩色/紙 キュー王立植物園 ©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew

ウィリアム・フッカー《リンゴ「デヴォンシャー・カレンデン」》1818年 個人蔵 Photo Michael Whiteway

インド(カンパニー・スクール)の画家《チャの木》19世紀初め キュー王立植物園 ©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew


展覧会で紹介する最も古い植物画は16世紀のもので、英国の植物学者ジョン・ジェラードによる『ジェラードの本草書』(通称)に収録されたジャガイモの図です。

《ジャガイモ(ジョン・ジェラード『本草書 または 植物の話』より)》1597年 木版/紙 個人蔵 Photo Brain Trust Inc.


木版によるモノトーンの本作品は、一般に植物画と聞いて想起される緻密さは備えていませんが、葉や茎、花や実、地中に埋まっている塊茎という食する部分や根までも丁寧に観察して描かれています。今日に通じる科学的に正確な植物画の誕生は17世紀に入ってからで、銅版画の普及と自然科学の興隆とともに発展し、18世紀になると出品作品の多くにみられるように細密な銅版画に美しい手彩色で仕上げられました。

さて、本展では様々な食用植物の植物画とともに、それにまつわる英国の歴史や食文化にも注目します。数少ない英国原生のキャベツやダイコン、カブといった野菜、古くから愛されたリンゴやイチゴ、当時は富裕層のぜいたく品だった柑橘類、そして英国の喫茶文化とも関係の深い紅茶やコーヒーまで、目で見ても「おいしい」植物画の世界をお楽しみください。

(s.o)


英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり
2023年4月8日(土)〜6月4日(日)

前売券:4月7日(金)まで以下にて販売中!

静岡市美術館(窓口、オンラインチケット)、ローソンチケット[Lコード: 42856]、セブンチケット[セブンコード: 098-577]、チケットぴあ[Pコード: 686-320]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、流通通り店)、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店、戸田書店江尻台店、大丸松坂屋静岡店友の会