2024年03月10日コレクターを魅了した日本美術の名品

京都・岡崎に位置する細見美術館には、1000点に及ぶ日本美術の名品が所蔵されている。本コレクションは昭和の実業家・細見良(初代古香庵)、實氏(二代目)、良行氏(三代目・同館館長)が80年余りを費やし蒐集したもので、幅広い年代と分野で日本美術史を総覧し、国内外から高い評価を受けている。

細見良氏は基本的に日本美術を幅広く蒐集したが、とりわけ仏教・神道美術の造形に美を見出した。重要文化財《金銅春日神鹿御正体》(4/27~5/26展示)をはじめ、優美な意匠の和鏡、鮮やかな彩色の仏画などが確かな鑑識眼で選び抜かれ、また茶の湯釜や根来塗の蒐集・研究にも情熱を注いだ。二代目の實氏は驚くべき先見性を持ち、琳派や伊藤若冲など、当時国内ではまだ評価がさほど高くなかった江戸絵画を好んで蒐集した。伊藤若冲の初期作《雪中雄鶏図》(通期)や琳派の創始・俵屋宗達から江戸中期の尾形光琳、江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一、そして近代の神坂雪佳と、琳派350年の系譜を網羅する作品は必見である。三代目の良行氏もまた現代美術を含めた日本美術を蒐集する一方、この良質なコレクションを次世代に継承するため細見美術館の設立を主導した。

2023年、細見美術館は開館25周年を迎えた。その記念として開催される本展は、古墳時代の考古遺物や平安・鎌倉時代の仏教・神道美術、室町時代の水墨画、茶の湯釜、桃山時代の七宝装飾、茶陶、江戸時代の琳派、伊藤若冲のほか風俗図屏風、肉筆浮世絵など、重要文化財8件を含む厳選した104件により細見コレクションの魅力を紹介する。細見家三代を魅了した日本美術の名品を一堂に会す貴重な機会であり、ぜひ当館でご覧いただきたい。

 


(s.o)

 

●京都 細見美術館の名品―琳派、若冲、ときめきの日本美術―
2024年4月13日(土)~5月26日(日)
前売券は4月12日(金)まで販売。お得な一般前売ペアチケットも!