過去の展覧会

英国王室が愛した花々

展覧会のみどころ


Ⅰ. 心華やぐ!ボタニカルアートの世界

科学的視点で描かれたボタニカルアート(植物画)は、写真誕生以前、貴重な記録であり研究資料のひとつでしたが、植物学の歴史を培うなかで次第に芸術性を見出されるようになりました。本展ではイングランドの国花であるバラをはじめ、チューリップ、ボタン、ランなど多数の植物が登場します。観察に基づいた精緻な描写と美しさが融合するボタニカルアートの世界を存分にお楽しみください。

英国のシンボル—バラ
トマス・ハーヴェイ夫人《ローザ・ケンティフォリア(キャベツローズ)とローザ・ガリカ(フレンチローズ)の栽培品種(バラ科)》1800年 水彩、紙 キュー王立植物園
©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
《モスローズ(バラ科)》1788年 銅版画、手彩色、紙 個人蔵
Photo Brain Trust Inc.
シデナム・ティースト・エドワーズ《チョウマメ(マメ科)》1813年 黒鉛、水彩、紙 キュー王立植物園
©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
フレデリック・ポリドール・ノッダー《フランスギク(キク科)》部分 1794年 銅版画、紙 個人蔵
Photo Brain Trust Inc.

Ⅱ. 歴史に名を残す植物画家を紹介

分類学の父リンネと親交のあったゲオルク・エーレット(1708-1770)やキューガーデン最初の専属画家フランツ・バウアー(1758-1840)の貴重な水彩原画を紹介。さらに『フローラの神殿』『カーティス・ボタニカル・マガジン』といった出版物など、ボタニカルアートの歴史を語る上で欠かせない作品を紹介しながら、啓蒙思想を背景とした英国における自然科学の発展やキューガーデンの歴史を紐解きます。

分類学の父リンネと親交
植物画の様式を築いたエーレット
ゲオルク・ディオニシウス・エーレット《チューリップ属の栽培品種「Bisard Adelaar」(ユリ科)》1740年 水彩、紙 キュー王立植物園
©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
キューガーデン最初の専属画家バウアー

フランツ・アンドレアス・バウアー《ゴクラクチョウカ (ストレリチア・レギネ) (ゴクラクチョウカ科)》1818年 石版画、手彩色、紙 キュー王立植物園
©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
『フローラの神殿』(1799-1807)

ロバート・ソーントン(1768?-1837)編集による、分類学の父リンネの学説を明示するような贅を尽くした植物図譜。植物の背景に風景が描かれた特徴的な図版は、植物画を専門とする画家ではなく、当時の流行画家たちによって描かれました。

ラムゼイ・リチャード・ライナグル《スワンプリリー(ユリ科)》1799年 銅版画、紙 ロバート・ジョン・ソーントン編『フローラの神殿』より
Photo Michael Whiteway
『カーティス・ボタニカル・マガジン』

『カーティス・ボタニカル・マガジン』(1787年創刊) は、現在もキューガーデンが刊行を続ける学術誌です。植物図版の制作は、英国最良の植物画家たちが手がけました。

 原画と手彩色銅版画を同時に展示
【原画】シデナム・ティースト・エドワーズ《ボタンの栽培品種(ボタン科)》1809年頃 黒鉛、水彩、紙 キュー王立植物園
©The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
【手彩色銅版画】シデナム・ティースト・エドワーズ《ボタンの栽培品種(ボタン科)》1809年 銅版画、手彩色、紙 個人蔵
Photo Brain Trust Inc.

Ⅲ. シャーロット王妃が愛したウェッジウッド

キューガーデンの拡張に寄与した国王ジョージ3世の妃シャーロットが愛したウェッジウッドのクイーンズウェアのほか、ダービー、ウースター、など王室ゆかりの陶磁器も展示。さらに当時の建築・工芸のデザインの主流であるジョージアン様式の部屋を部分的に再現し、ボタニカルアートを愛した人びとの暮らしぶりも紹介します。

ウェッジウッド《カメオ・ブローチ「シャーロット王妃」》20世紀 ジャスパーウェア(炻器) 個人蔵
Photo Michael Whiteway
シャーロット王妃のお気に入りウェッジウッド
ウェッジウッド《ポートランドの壺》19世紀(1790年頃完成) ジャスパーウェア(炻器) 個人蔵
Photo Michael Whiteway

ウェッジウッド《蓋付き深皿(クイーンズウェア)》1765-1770年 クリームウェア(陶器)、エナメル彩 個人蔵
Photo Michael Whiteway
ダービー磁器
ダービー《ボタニカル・サービス》1795年頃 磁器 個人蔵
Photo Brain Trust Inc.
ジョージアン様式の部屋を部分再現
《ジョージアン様式の椅子》1775年頃 木 個人蔵
Photo Michael Whiteway

Ⅳ. 世界中でボタニカルブーム到来!

ガーデニングファンだけでなく、近年植物は、ファッション、インテリア、フード、美容など、若い世代のライフスタイルにも浸透しつつあります。本展では様々な関連イベントを通して、植物と人間との関係にも目を向けます。館内には、造花によるフラワーウォールのフォトスポットも登場。静岡駅構内の生花店や、近隣レストランとの連動サービスも予定しています。日々の生活に目を向け、彩りを与える展覧会となるでしょう。



キュー王立植物園 Royal Botanic Gardens, Kew

キューガーデンの愛称で親しまれている同園は、ロンドンの南西部テムズ河畔にあり、132ヘクタールにおよぶ庭園を擁する世界を代表する植物園です。園内には3万種以上の植物および約14,000本の樹木が植えられています。1759年にジョージ3世の母親であるオーガスタ皇太子妃によって設立された同園は、その面積を拡張すると共に世界各地から様々な植物を収集してきました。ジョージ3世とその妃シャーロットが愛したキュー・パレスや世界最大の規模を誇る温室テンペレート・ハウスなど、特徴的な建物も見どころのひとつです。
現在のキュー王立植物園は世界的な観光地である一方、植物と菌類における科学の分野で世界をリードしている研究機関でもあります。2003年には、その植物コレクションの多様さが評価されたのみならず、庭園技術の歴史と発展における多大な貢献が認められ、ユネスコ世界遺産の指定を受けました。

ヨハン・ゾファニー《シャーロット王妃の肖像》1772年 メゾチント 個人蔵
Photo Brain Trust Inc.