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初摺と後摺 摺りの違いを楽しむ 歌川広重「名所江戸百景 両国花火」

2019/07/12

真っ暗な夜空にあがる大きな花火。
川には舟がたくさん浮かんでおり、橋の上にも多くの見物客が描かれています。

 

右の初摺(しょずり)は、打ち上げ花火がパッと花開いた瞬間を捉えたもので、
周辺の風景も花火により明るく照らされています。
対して左の後摺(あとずり)は花火があがった後のキラキラとはかなく散っていく様子が表現されています。
周辺も夜空と境目がわからないほど暗く、寂寥感が漂う作品です。

 

同じ作品でも異なる摺りを比較し楽しめるのは版画ならでは。
どちらも広重最晩年の大作「名所江戸百景」を代表する夜景の傑作です。

 

歌川広重「名所江戸百景 両国花火」.jpg

歌川広重「名所江戸百景 両国花火」 安政5年(1858)8月、大判錦絵、アレン・メモリアル美術館蔵
右:初摺、左:後摺

 

 

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富士は日本一の山 葛飾北斎「富嶽三十六景 山下白雨」

2019/07/11

白雨(はくう)とは夕立のこと。
山下を暗くし、右下に稲妻を走らせることで、雨を描かずとも山麓に降る夕立を示しています。
対して富士の頂は青空の中に堂々とそびえています。
まさに「雷さまを下に聞く、富士は日本一の山」という唱歌のとおり、雨雲すら届かない富士の高さが表現されています。
「富嶽三十六景」シリーズの代表作のひとつです。

 

北斎がこの揃物を描いたのは70歳を過ぎた天保2-4年(1831-33)頃。
北斎は「森羅万象を描き尽くした」と言われるほど、
90歳で没するまで美人画、風景画、花鳥画など肉筆・版画を問わず旺盛な作画活動を続けました。

 

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葛飾北斎「富嶽三十六景 山下白雨」 天保2-4年(1831-33)頃、大判錦絵、アレン・メモリアル美術館蔵

 

 

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歌麿の大首絵-表情に迫る 喜多川歌麿「婦人相学十躰 面白キ相」

2019/07/10

鏡を手に身支度をする女性。
お歯黒を差していることから、新婚女性の初々しい化粧の様子を描いたものでしょうか。
ほつれた髪もそのままに口を突き出し、熱心にお歯黒を確認する微笑ましい姿が描かれています。
表情やしぐさにより、女性の心情までもが見事に表現されています。
歌麿は細部まで女性の魅力に迫った美人大首絵(おおくびえ/胸像)で人気を博しました。
一方、髪の毛の繊細な彫りや背景の雲母摺(きらずり)、着物の空摺(からずり/エンボス加工)など、
彫師・摺師の高い技術も見逃せません。
この作品は、まさに浮世絵の黄金期を迎えた寛政期(1789-1801)の、歌麿を代表する美人画のひとつです。

 

喜多川歌麿「婦人相学十躰 面白キ相」.jpg

喜多川歌麿「婦人相学十躰 面白キ相」 寛政4-5年(1792-1793)頃、大判錦絵、アレン・メモリアル美術館蔵

 

 

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錦絵の祖・春信の見立絵 鈴木春信「縁先美人(見立無間の鐘)]

2019/07/09

障子の影に映る賑やかな宴の様子とは対照的に、
思いつめたような表情で縁先に佇む白無垢姿の遊女が描かれています。
視線の先には手水鉢(ちょうずばち)と柄杓(ひしゃく)があります。
この作品は、撞けば現世で財宝を得るが、来世では無間地獄に陥るという「無間の鐘」の見立絵(みたてえ)です。
歌舞伎では人気の題材で、遊女となった梅ヶ枝が夫・梶原源太を助けようと、
手水鉢を鐘に見立てて柄杓で打つと、2階から小判が降るというのが代表的なストーリー。
山吹の花が小判を暗示しています。

 

この奇知に富んだ作品は、「錦絵」(にしきえ/多色摺木版画)の誕生に大きく寄与した鈴木春信が手掛けたもの。
春信は見立絵を得意としました。

 

鈴木春信「縁先美人(見立無間の鐘)」.jpg

鈴木春信「縁先美人(見立無間の鐘)」 明和4年(1767)頃、中判錦絵、 アレン・メモリアル美術館蔵

 

 

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コレクション第一号!? 石川豊信「提灯と傘を持つ佐野川市松」

2019/07/06

当時大人気だった歌舞伎役者・佐野川市松を描いた作品です。
雨夜の外出でしょうか、高下駄に道行(みちゆき/コート)を羽織り、手には提灯と傘を持っています。
帯の石畳模様は市松が愛用したことから「市松模様」とも呼ばれるようになりました。
退色が進んでいますが、筆で紅を中心に彩色した初期浮世絵(紅絵)で、
当時は一層鮮やかで優美な作品だったことでしょう。

 

この作品は、メアリー・エインズワースが明治39年(1906)の来日で初めて手に入れた浮世絵とされています。
それから約25年にわたり、貴重な初期の作品から幕末の広重まで1500点以上を収集しました。
コレクションの中には、世界で1点しか見つかっていない作品もあります。

 

石川豊信「提灯と傘を持つ佐野川市松」.jpg

石川豊信「提灯と傘を持つ佐野川市松」 延享・寛延期(1744-51)、柱絵判紅絵、アレン・メモリアル美術館蔵

 

 

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「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」来場1万人達成!

2019/07/05

本日7月5日(金)に、「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション―初期浮世絵から北斎・広重まで」の来場者が1万人を達成しました!

 

1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの岩本さんと藁科さんのお二人。
展覧会を振り返り、「歌川広重の東海道五拾三次のシリーズが印象に残った」とお話しいただきました。
お二人には、当館館長から記念品を贈呈しました。

 

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取材にも快く応えていただきました。
ご協力ありがとうございました!

 

藁科さんは、これまでも何度も当館に足を運んでいるとのこと。
次回展も楽しみ!とお話しいただきました。
またのご来場をお待ちしております。

 

 

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「オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵
  メアリー・エインズワース浮世絵コレクション―初期浮世絵から北斎・広重まで」

会期:2019年6月8日(土)~7月28日(日)
観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
*( )内は当日に限り20名以上の団体料金
*障害者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

 

 

 

メアリー・エインズワースが愛した浮世絵

2019/05/29

メアリー・エインズワース(1867-1950)はアメリカでも早くに浮世絵の収集を始めた目利きの女性コレクターの一人です。
1906(明治39年)年、39歳の時に日本を訪れ、浮世絵に魅了された彼女は、以後約25年かけて1500点もの浮世絵版画を収集しました。

 

そのコレクションの第一号は、初期浮世絵で、石川豊信の作品だといわれています。
まず初期浮世絵を好む外国人コレクターというのは珍しいのですが、そもそも古いゆえに現存数が少ない初期浮世絵を、約90点も収集し、中には世界で一番しかない作品もあります。

 

それだけでなく、浮世絵版画の歴史を網羅するかのように錦絵(多色摺木版)の誕生に大きく貢献した鈴木春信や、錦絵の黄金期に活躍した鳥居清長や喜多川歌麿といった美人画や東洲斎写楽の役者絵、幕末の風景版画の人気を支えた葛飾北斎や歌川広重といった六大浮世絵師の作品が揃います。

 

特に広重作品はコレクションの過半数を占め、出世作の「保永堂版東海道」や最晩年の大作「名所江戸百景」といった代表作に美しい摺りの作品が多く揃っています。
彼女が来日したころは広重が亡くなってから50年に満たず、まだ作品は収集しやすかったと思われます。
ですが、とりわけ広重の風景版画を収集したのは、明治期に日本が急速に西洋化する中で失われつつある江戸の面影を作品の中に見出したのかもしれません。

 

エインズワースの没後、この素晴らしいコレクションは遺言により母校であるオーバリン大学に寄贈されました。この展覧会は、メアリー・エインズワース浮世絵コレクションの全容を、選りすぐりの200点で紹介する初めての里帰り展です。
これまでアメリカにおいてさえ、ほとんど紹介されることのなかった貴重な機会ですのでぜひ皆さまお越しください。

 

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「オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵
  メアリー・エインズワース浮世絵コレクション―初期浮世絵から北斎・広重まで」

会期:2019年6月8日(土)~7月28日(日)
観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
*( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
*障害者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

 

★前売券:6月7日(金)まで販売
静岡市美術館(6月6日まで)、チケットぴあ[Pコード769-579]、ローソンチケット[Lコード45043]、セブンチケット[セブンコード072-698]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、高松店、流通通り店)、戸田書店静岡本店、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店、中日新聞販売店(一部店舗を除く)

 

 

 

 

Shizubi茶アメがリニューアル!

2019/04/19

このたび、静岡市美術館オリジナルグッズ「Shizubi茶アメ」がリニューアルしました!

 

 

☆2019年4月リニューアル☆

Shizubi茶アメ 12個入り 500円+税 

 

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創業より170年、駿河伝統の味・製法の飴を作りつづける馬場製菓と

静岡市美術館でつくったオリジナル茶アメです。

 

俵型のアメは原料に静岡産の緑茶が使用されていて、口に入れるとお茶の香りがひろがります。

 

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アメのリニューアルにあわせ、個包装のパッケージデザインも新しくなりました!

 

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一粒ずつ、美術館のロゴマークをモチーフにしたオリジナルパッケージに入っています。

美術館ロゴと「CHA-AME」の文字がならんだポップなデザイン♪

 

茶アメ4

 

茶アメ色の手提げ紙袋に12個入っています。

そのままでも、個包装でも静岡市美術館らしいデザインをお楽しみいただけます♪

 

 

当館はJR静岡駅から徒歩3分。ミュージアムショップはどなたでもご利用いただけます。

 

ご来館の記念に、静岡の旅のお土産に、リニューアルしたShizubi茶アメはいかがでしょうか♪

 

 

 

(m.o)

小倉遊亀《姉妹》について

2019/03/27

 

「小倉遊亀と院展の画家たち展」でポスターに使用している《姉妹》は、遊亀の知人の娘さんたちがモデルだといいます。姉妹の七夕の日の姿に着想を得て描かれました。

 

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小倉遊亀 《姉妹》 昭和45年(1970) 滋賀県立近代美術館 [後期展示]

 

姉に作ってもらったものでしょうか、色とりどりの折鶴を抱える妹は満足そうな微笑みを浮かべています。

一方、姉は背筋をピンとのばして虚空を見つめています。はさみと色紙(いろがみ)を手に持っているので、七夕飾りを作ろうと構想をめぐらしているのかもしれません。

 

姉の上半身はすこし妹のほうに寄っているようにも見えます。これは、姉妹の着ている洋服の裾が左右にせり出して描かれ、二人で一つの三角形を形作るよう配置されていることによります。

この構図の効果により、二人はそれぞれ自分だけの世界に浸っているようでいて、お互いの存在を意識しているかのような、温かい一体感が生まれています。

年齢による姿勢や体つきの違い、姉妹らしく眼の周りの骨格が似ているところなど細部まで鋭い観察が行き届いているのも、この絵を興味深いものとしています。

 

この作品について遊亀は、

「この無心な童女の姿が天の真実に直結する瞬間、私の心を捉えたものがある。〔中略〕何となく色と造形も、出来るだけ切りつめて見飽きないものにしたかった」(小倉遊亀『続画室の中から』)

と語っています。

 

背景は白と灰色のたった二色だけで調子が付けられています。あっさりとして見えますが、実は、プラチナ箔の上に絵具をかけては拭き取ることを何度も繰り返し、膨大な手間を掛けて作り出されたものです。

しかし、画面にはそんな苦労の影はみじんもありません。

親しみやすくほほえましい姉妹像は、画家が捉えた「天の真実」のゆえでしょうか、観る者の心さえも調和で満たしてくれるのです。

 

 

(k.y)

 

*《姉妹》は後期(5月1日~5月26日)展示です。

 

 

 「小倉遊亀と院展の画家たち展 滋賀県立近代美術館所蔵作品による」
会期:2019年4月6日(土)~5月26日(日)

※会期中展示替えがあります 前期:4月29日まで、後期:5月1日から

観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料

*( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金

*障害者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

*リピーター割引:2回目以降、美術館窓口での本展半券提示で当日券200円引き

 

★前売券:4月5日(金)まで販売

静岡市美術館、チケットぴあ[Pコード:769-465]、ローソンチケット[Lコード:43995]、セブンチケット[セブンコード:071-339]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、高松店、流通通り店)、戸田書店静岡本店、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店

 

新鮮で奔放な80年代

2019/03/01

「毎日絵を描いている人が結果的に"絵描き"なんだと思う」(杉山知子)
美術手帖の「特集 美術の超少女たち」(1986年8月号)には、奔放なイメージや色彩とともに、描くこと、作ることに対する率直なコメントが溢れている。同号には、本展出品の杉山知子(1958-)や吉澤美香(1959-)、松井智惠(1960-)をはじめ、当時活躍が目立ち始めた若手女性作家39人がまとめて紹介されている。みな、20代の若さである。

 

 「作品を作るきっかけになるものは、ごく日常的、かつ私的な事柄で、人生や社会について語るといった大袈裟なものではけっしてないのです。(略)私にとって作品をつくるということは、「生活する」ということと、常に同次元にあります。」(杉山知子「"私の本当"という切実さ」美術手帖1984年7月号、p45)

 

少々ナイーブに過ぎるとも思える率直さは、若さであり、消費文化が花開こうとする時代の空気でもあるだろう。作家が等身大の日常をテーマとすることに、今では違和感はないだろう。絵が壁や床、天井にのび半ば立体化し、段ボールや布や糸、陶などおよそあらゆるものを素材にインスタレーションされることも。しかし80年代初めには、それは新鮮なことだった。70年代、絵画は平面、彫刻は立体と呼ばれ、容易に描けない、作れない時代だったのである。

 

 「起点としての80年代」は、そんな80年代の日本の美術を大竹伸朗、中原浩大、日比野克彦、舟越桂、森村泰昌、宮島達男、横尾忠則ら、今や(当時から)日本を代表する作家19人の作品で紹介する。この時代、作品が一気に多様化、大型化し(今回の輸送は10tトラック3台以上!)、これだけの作品を一度に見る機会はこれまでになかった。金沢21世紀美術館、高松市美術館との共同企画で、金沢を皮切りにスタートしたが、実際に展示された作品を見ても古びた感じは全くない。

この機会に、今につながる迫力ある、新鮮な作品の数々を是非、体験して欲しい。

 

(a.ik)

 

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「起点としての80年代」
会期:2019年2019年1月5日(土)~3月24日(日)
【出品作家】
  石原友明、今村源、大竹伸朗、岡﨑乾二郎、川俣正、杉山知子、諏訪直樹、辰野登恵子、戸谷成雄、中原浩大、中村一美、日比野克彦、藤本由紀夫、舟越桂、松井智惠、宮島達男、森村泰昌、横尾忠則、吉澤美香