2015年02月11日2月22日までの展示作品から
木版画や日本画は光に弱い材質でできているため、長期間展示することができません。
そのため、このたびの清親展でも何回か展示替えを行います。
前期[3月1日(日)まで]と後期[3月3日(火)から]の入れ替えで最も多くの作品が入れ替わりますが、一足早く、2月22日(日)までの2週間で展示が終了する作品も21点ほどあります。
木版画では、清親の最も早い時期の作品の一つ《東京五大橋之一 両国真景》や、月明かりと水面の反映が印象的な《今戸橋茶亭の月夜》など19点が22日までの展示となっています。
《東京五大橋之一 両国真景》 明治9(1876)年 山口県立萩美術館・浦上記念館
《今戸橋茶亭の月夜》 明治10(1935)年頃 山口県立萩美術館・浦上記念館
《橋場の夕暮れ》は空の色が違う摺りのものがいくつか知られていますが、空が青くて雲がほんのり赤みを帯びる神奈川県立歴史博物館所蔵のものは22日までの展示です。空が灰色で雲が一面ピンク色に染まる個人蔵(練馬区立美術館寄託)のものは、こちらの作品と入れ替わりで、2月24日から3月8日まで展示します。
《橋場の夕暮れ》明治13(1880)年
(左)神奈川県立歴史博物館 (右)個人蔵(練馬区立美術館寄託)
また肉筆画では、《四季幽霊図》(福岡市博物館)と《初午詣》(個人蔵)の2作品が22日で展示終了となります。《四季幽霊図》は四幅対の力作です。幽霊と言えば夏のものと決まっていそうなものですが、清親は趣向を凝らして四季折々の幽霊図を考え出しました。恐ろしいというよりは、哀愁漂う幽霊たちです。ぜひ会場に会いに来てください。
《初午詣》 明治41(1908)年 個人蔵
一方の《初午詣》も興味深い作品です。というのも、印章から、清親の還暦記念千画会で描かれたものと分かるからです。還暦記念千画会というのは、清親の還暦を祝う会であるにもかかわらず、祝われる当人の清親が1日で千枚の絵を描かされるという催しだったそうです。清親の五女・哥津の回想によると、会場に着いた清親は十干十二支の順に合わせて1点20秒足らずで次々と筆を振るい、夕方までには予定の1000枚を描き上げ、さらには超過の分まで描き続けて夜にはご機嫌で帰ったとか(小林哥津『清親考』素面の会、1975年)。
60歳のことを還暦というのは、十干と十二支を組み合わせてできる「甲子」「乙丑」「丙寅」のような干支(えと)が60種類すべて経過して、初めの甲子に戻ることからそう呼ばれます。還暦の画会で十干十二支の画題とは洒落た趣向ですね。
この《初午詣》には「甲午寓意」と記述があります。「甲午」は31番目の干支ですから、描き始めてから31枚目か、あるいはさらに60種類を一周したのちの91枚目か、はたまた151枚目か…。何しろ1日で1000枚ですから、甲午(きのえうま)の画題だけでも16枚は描いたはずです。還暦を迎えた清親の元気さが伝わってくる作品です。
開幕から2週間で展示替えとなる作品の一部をご紹介しました。どうぞお見逃しなきよう。
(y.k.)
没後100年 小林清親展 文明開化の光と影をみつめて
3月22日(日)まで 10:00~19:00 月曜休館
展覧会情報はこちら https://shizubi.jp/exhibition/future_150207.php
作品リストはこちら(展示期間も入っています) https://shizubi.jp/img/exhibition/kiyochika_list.pdf