2021年10月03日グランマ・モーゼス展 作品紹介②《5月:せっけんを作り、羊を洗う》
1940年、80歳で開いたニューヨークの画廊での初個展をきっかけに、モーゼスは急速に注目を集め、画廊主オットー・カリアーの支援を受けて画家としての道を歩み出します。農村での暮らしの情景を豊かな色彩と素朴な筆致で描いた作品は、懐かしいアメリカの原風景として人々の心を捉えました。
澄み渡る空の下、画面右手で大鍋を火にかけ作業する女性がいます。春の仕事の定番、一年分のせっけん作りの真っ最中です。ためておいた古油と灰汁を煮詰めると茶色いゼリー状の軟せっけんになり、塩か松やにで固めた四角いせっけんも背後で天日干しされています。左手には水の中で羊を洗う男達。刈り取られた羊毛は、様々な衣類の素材になります。農村の生活は基本的にすべてが自給自足です。
モーゼスは初個展から数年の間で、本作のような雄大な自然の中に人々を点景として散りばめた俯瞰的な風景画のスタイルを確立します。独学ながら奥行きも巧みに表現された、調和のとれた画面構成を見せています。
(s.o)
「グランマ・モーゼス展 ―素敵な100年人生」
11月7日(日)まで好評開催中!
休館日:毎週月曜日