2022年01月08日平等院鳳凰堂と浄土への憧憬

徳川家康が戦場の旗印に用いたことで知られる「厭離(え(お)んり)穢(え)土(ど) 欣(ごん)求(ぐ)浄(じょう)土(ど)」。これは元来、「穢れた現世を厭い離れ、極楽浄土に往生することを心から願う」という浄土信仰を象徴的に表した言葉です。平安時代中期に比叡山の僧・源信が著書『往生要集』で説いたこの思想は、疫病の流行や相次ぐ自然災害等に不安と恐怖を抱いた当時の人々に受容されました。そして祈りを捧げるすべての人を遍く救済し、浄土に導くと信じられた阿弥陀如来は多くの信仰を集め、極楽往生を願う貴族たちによって各地に阿弥陀堂が建立されたのです。

折しも釈迦の入滅後2000年を迎え、正しい仏法が衰滅する末法の世が始まると考えられた永承7年(1052)、平等院は時の関白・藤原頼通によって創建されました。翌年に完成した阿弥陀堂こそ、鳳凰が翼を大きく広げた姿を想起させる優美な造形からその名で呼び親しまれている鳳凰堂です。

国宝 平等院鳳凰堂正面全景 ©平等院


堂内は本尊の阿弥陀如来坐像を取り囲むように、楽器を奏でたり舞踊する52軀の可憐な菩薩たちが頭上の小壁に並び、『観無量寿経』に基づく来迎図が周囲の壁や扉に描かれています。また現在は大部分が剥落により失われていますが、かつては須弥壇や天蓋には精緻な螺鈿や金具の装飾が施され、天井から柱に至るまで極彩色で華麗に荘厳されていたことも近年の科学調査によって明らかになりつつあります。その幻想的な情景はまさに平安貴族が思い描いた極楽浄土そのものであり、王朝の洗練された美意識を今に伝える貴重な遺構として日本文化史上極めて重要な存在に他なりません。

本展では静岡県初公開の国宝《雲中供養菩薩像》を筆頭に、鳳凰堂ゆかりの作品を中心に展観します。この機会に是非会場でご覧ください。

 

(t.t)

 

「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」
会期:2022年2月5日(土)ー3月27日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし3月21日(月・祝)は開館)、3月22日(火)
観覧料:一般1,400(1,200)円、大高生・70歳以上1,000(800)円、中学生以下無料
    *リピーター割引:2回目以降、美術館窓口にて本展の有料観覧券半券提示で当日券200円引き
    *(  )内は前売および当日に限り20名以上の団体料金
    *障がい者手帳等をご持参の方および介助者原則1名は無料
前売券:2月4日(金)まで次の箇所にて販売中(当日券より200円引)
静岡市美術館、ローソンチケット[Lコード:43871]、セブンチケット[セブンコード:092-046]、チケットぴあ[Pコード:685-855]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、流通通り店)、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店、大丸松坂屋静岡店友の会