2022年02月25日「平等院鳳凰堂と浄土院」 作品紹介②《伝帝釈天立像》
ふくよかな顔立ちにどっしりと重厚なプロポーションが印象的な古像。厚い唇に短い眉、吊り目がちの表情には、どこか少年のような瑞々しさも感じられます。
頭部から両肘を含む主要部をヒノキ檜の一木から彫り出し、干割れを防ぐために背面から刳り抜き内部を空洞にした古調な造像技法と、総体に彫りが浅く温和な作風から、鳳凰堂の諸仏よりも年代が遡る平安時代中期の制作と推測されています。
永承7年(1052)の創建以来、貴顕から庶民まで幅広い階層の信仰を集めてきた平等院。この像は、当初の両手先や持物が失われているため、元来の尊名や安置されていた場所などは詳らかではありません。浄土信仰と言えば阿弥陀仏を想起させますが、本像を祀る平等院塔頭の浄土院では、仏教の守護神である帝釈天像と伝承されてきました。この像が鳳凰堂を中心とする浄土信仰のみならず、人々の多様な祈りを受け止めてきたことを物語る証のひとつと言えるでしょう。
(t.t)
「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」
会期:2022年2月5日(土)ー3月27日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし3月21日(月・祝)は開館)、3月22日(火)
※会期中、一部展示替えがあります。前期2月27日(日)まで、後期3月1日(火)から