2022年03月01日「平等院鳳凰堂と浄土院」 作品紹介③《籬に梅図(養林庵書院襖絵)》
竹垣の背後から覗く幹がうねるように躍動して曲線を描き、長く伸ばした枝先に清楚な白い花を咲かせる梅の老木。幹の中腹には春の到来を待ちわびるかのように、番(つがい)の鳩が羽を休めています。
この襖絵は、一説に伏見城の遺構を移築したと伝わる浄土院養林庵書院(重文)二の間を飾る障壁画の一部です。全面に金箔を貼り込めた華やかな画面に展開された幾何学的な形態、そして大胆な構図。それは豪壮華麗な桃山文化の残照とも言うべき特徴であり、近世初頭の京で筆を揮った絵師・狩野山雪の影響が認められます。
室町時代以降、度重なる戦乱で荒廃した平等院を復興するべく、浄土宗など各宗が競って境内に塔頭を建立し、平安の美を守り伝えてきました。すなわちこの襖絵を飾る養林庵も、そうした背景から造営された塔頭の一棟だったのでしょう。平等院の知られざる歴史と美に気付かせてくれる、注目すべき一点です。
(t.t)
「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」
会期:2022年2月5日(土)ー3月27日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし3月21日(月・祝)は開館)、3月22日(火)
※会期中、一部展示替えがあります。前期2月27日(日)まで、後期3月1日(火)から