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吉田博展

吉田博について

福岡県に生まれた吉田博(1876-1950)は、明治27(1894)年に上京、画塾・不同舎で洋画を学びました。明治32(1899)年には日本で描きためた水彩画を携えて渡米、自作を販売して渡欧資金を作るという快挙を成し遂げます。ロンドンやパリなどヨーロッパ各地をめぐり明治34(1901)年に帰国すると、太平洋画会や文部省美術展覧会を舞台に、風景画の第一人者として活躍しました。
大正後期からは、西洋画の写実的な描写と日本の伝統的な木版技法を統合すべく研究を重ね、生涯に約250種もの木版画を制作しました。自然へ分け入って体得した風景を表現するため、吉田博は平均して30回以上、時には100回近くも摺りを重ねました。精緻で清新な作品は世界中で愛され、かのダイアナ妃の執務室に飾られていたことでも知られています。
若い頃から世界を自らの肌で感じ、日本人ならではの絵画を考え続けた吉田博にとって、木版画は一つの到達点でした。浮世絵以来の伝統技法に近代的な美意識を盛り込んだ、多色摺木版の極致ともいえる名作の数々をお楽しみください。

東京の自宅アトリエにて 昭和24(1949)年