• 2014年07月12日 法隆寺展作品紹介④ 「聖徳太子の物語」

    聖徳太子は一度に大勢の言うことを理解できた、そんな話を聞いたことがあるでしょう。
    太子がこの世をさってから約100年後の『日本書紀』に、超人的な太子像が記されています。
    太子信仰の高まりとともに、平安前期に編まれた『聖徳太子伝暦』に基づき、太子に関するエピソードが散りばめられた数幅の掛軸からなる絵伝(伝記絵)が多数描かれ、絵解きされました。中には、太子が二十七歳の時、甲斐の国より献上された黒駒に乗って富士山に登るというものもあります。
    太子が建立した大阪・四天王寺の遠江法橋筆の絵伝は、ほぼ事績の年代順にエピソードが描かれ配置されています。なかでも物部合戦の場などは臨場感に富み、人物描写が活き活きとした優品です。
    太子の御廟前の叡福寺の絵伝は、エピソードがほぼ四季の順に描かれています。そして、緑青、群青、金泥が用いられた、色彩の美しい魅力的な作品です。
    ⑧重要文化財 聖徳太子絵伝 第三幅(四天王寺).jpg
    重要文化財 聖徳太子絵伝 第三幅 遠江法橋筆 大阪・四天王寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影 佐々木香輔)
    (e.y)
    会期:2014年6月14日(土)~7月27日(日)
    観覧料:一般1200(1000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料
  • 2014年07月05日 法隆寺展作品紹介③ 「孝行と仏教」

    ―16歳の太子
    聖徳太子の父君は、太子が15歳の時に即位し用明天皇となりました。
    しかしほどなく病に伏してしまいます。太子は帯もとかず、日夜、父の看病をし、香炉を捧げて祈りましたが、翌年、用明天皇はお亡くなりになりました。
    法隆寺は、この用明天皇の遺志を継ぎ、推古天皇と太子が建立したといいます。
    父・用明天皇の病気平癒を祈る16歳の太子の姿は、「孝養像」と呼ばれ、太子信仰の高まりとともに、孝行と仏教崇拝の象徴として造形化されました。
    “播磨の法隆寺””刀田の太子さん”と呼ばれる兵庫・鶴林寺には、香炉を持つ太子の左右に童子、剣と弓矢を持つ天部形を従えるという珍しい図像の孝養像があります。
    大らかで堂々としたこの作品の魅力は、太子や童子の大きな目、ふくよかな頬や唇の表現のゆったりした筆使いによるものでしょう。まさに中世の太子像の優品です。

    ⑥重要文化財 聖徳太子孝養像及び二王子・二天像(鶴林寺).jpg

    重要文化財 聖徳太子孝養像及び二王子・二天像 兵庫・鶴林寺蔵 画像提供:奈良国立博物(撮影 佐々木香輔)
    (e.y)
    会期:2014年6月14日(土)~7月27日(日)
    観覧料:一般1200(1000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料
  • 2014年07月04日 法隆寺展 来場1万人突破!

    本日、静岡市美術館「法隆寺展 聖徳太子と平和への祈り」の来場者が1万人を達成しました!

    1万人目のお客様は、掛川市からお越しのご夫婦。
    静岡市美術館には何度も足を運んでくださっているとの事!
    展覧会サブタイトルの”聖徳太子と平和への祈り”とは、どういうものなのか、
    これまで観てきたものとは違う発見があるのではないか…そんな事を考えながらご来館くださいました。
    法隆寺1万人①.JPG
    お二人には記念品を贈呈しました。おめでとうございます!
    「法隆寺展 聖徳太子と平和への祈り」の前期展示は7月13日(日)まで。
    一部作品を入れ替え、7月15日(火)から後期展示が始まります。
    ※出品リストは展覧会詳細ページからダウンロードください
    皆さまのご来場をお待ちしております!
    (c.o)
  • 2014年06月29日 山本二三展前売券 7月1日(火)より販売開始!

    7/1(火)より、「日本のアニメーション美術の創造者 山本二三展 ~天空の城ラピュタ、火垂るの墓、時をかける少女~」(会期:8/4~9/23)の前売券が発売されます。
    今日は、前売券を含めた展覧会のチケットのご紹介です。
    今回の展覧会では、券種によって絵柄がすべて替わります。
    山本二三さんは、名作アニメーションの背景画をいくつも手掛けています。このため、チケットでも、その幅広い画業をご紹介すべく、絵を替えて制作しました。
    それでは早速行きましょう。
    まずは「前売券/一般」です。
    nizo-maeuri-ippan-gaus.jpg
     
    これには「天空の城ラピュタ」の画像が使われています。
    前売券は、展覧会に関心の高いお客様がご購入されることを考え、人気の高い絵柄にしてみました。
    朽ちたラピュタ城と、その後ろに見える冴え冴えとした青空が印象的ですね。
    特に、大きくて輝きをもった雲は、ファンの間では「二三雲(にぞうぐも)」と呼ばれ、山本二三さんの画風を特徴づける表現のひとつとされています。
    続いて、「前売券/大高生・70歳以上」です。
    nizo-maeuri-70-gaus.jpg
     
    何のアニメの背景画か、お分かりになりますか?
    苔が生した岩や土手。そこに差す柔らかい木漏れ日と、黒く映る水面・・・。
    「もののけ姫」の「シシ神の森」の一場面です。「前売券/一般」のチケットとは雰囲気を変え、少し落ち着いた印象を受けますね。
    「もののけ姫」の背景画は、山本二三さんの迫真性の高い描写力を堪能できる、展覧会の目玉のひとつです。
    ここからは、当日券(8/4~9/23の展覧会会期中に販売するチケット)のご紹介です。
    「当日券/一般」はコチラです。
    nizo-toujitsu-ippan-gaus.jpg
    先ほどの「前売券/一般」のご紹介で、「二三雲」についてご紹介しましたが、「当日券/一般」は、それをじっくり味わうことの出来る絵柄です。
    展覧会を開催するのは8月、夏の盛りです。空には夏の入道雲が、もくもくと浮かんでいることでしょう。二三さんの描く雲と実際の雲、展覧会から帰るとき、空を見ながら比べてみるのも面白いかもしれません。
    続いて、「当日券/大高生・70歳以上」です。

    nizo-toujitsu-70-gaus.jpg

     
    「時をかける少女」の「洗い場」を使っています。
    夏の暑いグラウンド、その匂い、湿度、木陰の涼やかな空気。
    私はこの絵を見ると、夏の学校の思い出が、フラッシュバックのように脳裏によみがえってきます。
    山本二三さんの作品は、その迫真性から、描かれた場の音、匂い、空気感を、見る者に想起させる(あるいは個人の記憶と結びつけて思い出させる)力があると思います。
    「時をかける少女」の舞台は夏です。細密な描写、豊かな色彩による背景画は、我々が持つひと夏の記憶を呼び覚まし、個々人の思い出や経験とつながり、感情を動かします。細部にまで描きこまれた背景画は、アニメーション作品に強さを与え、物語に深みを持たせています。「時をかける少女」は、そうした背景画がアニメーションで担う役割を、雄弁に物語っていると言えるでしょう。
    アニメが好きで、どの作品も見た経験のある私にとっては、もし美術館職員でなければ、全部集めて並べて眺めたい・・・!と、言ってしまうような気がします笑。
    前売券販売は7/1(火)からです。
    チケットを見て、展覧会を楽しみにしていただければと思います。
    ◆前売券情報
    7月1日(火)から8月3 日(日)まで販売 
    静岡市美術館、チケットぴあ[Pコード766-162]、ローソンチケット[Lコード47559]、セブンチケット[セブンコード030-540]、谷島屋呉服町本店、谷島屋マークイズ静岡店、戸田書店静岡本店、戸田書店城北店、江崎書店パルシェ店、MARUZEN &ジュンク堂書店新静岡店
    ※各種プレイガイド、コンビニエンスストアでのチケットは、絵柄のない機械発券となりますのでご注意ください。
    (R.A)
  • 2014年06月29日 法隆寺展作品紹介② 「日本のお釈迦様 聖徳太子」

    小さな手を合わせてお祈りする聖徳太子の作品を紹介します。
    赤い袴を身に着け、上半身は裸ですが、その肩や二の腕などはふくふくとした幼児そのものの愛らしい姿をしています。
    きっと身近に小さなお子様がいる方はよくわかるのではないでしょうか?
    ですが、顔をよく見てみると姿に似合わぬ(?)きりりとした表情!凛とした立ち姿!!
    とても2歳児とは思えません。。。
    なぜこのような子どもの姿をした聖徳太子像が作られたのか。
    平安時代中期に作られた、太子のさまざまな奇跡を年代順に記した伝記『聖徳太子伝暦』によれば、聖徳太子はわずか2歳(満1歳)にして、釈迦がお亡くなりになった2月15日に東方を向いて「南無仏」と唱えたと言われています。
    まるで誕生後7歩あるき、「天上天下唯我独尊」と唱えたお釈迦様に似た逸話ですね。
    聖徳太子は日本に仏教を広めた「祖」として、お釈迦様の再来と信じられ尊敬され、信仰されたのです。
    鎌倉時代以降、このような「聖徳太子二歳像」いわゆる「南無仏太子像」が多く作られました。
    今回紹介した「聖徳太子二歳像」も、その一つ。
    調査によって像内に「徳治二年」(1307)と書かれた墨書が発見され、鎌倉時代の古いお像だと分かりました。
    ④聖徳太子二歳像(法隆寺).jpg
    聖徳太子立像(二歳像)奈良・法隆寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影 森村欣司)
    (s.o)
    会期:2014年6月14日(土)~7月27日(日)
    観覧料:一般1200(1000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料
  • 2014年06月21日 法隆寺展作品紹介① 「夢違観音のほほえみ」

    法隆寺といえば、修学旅行で、観光で、多くの人が一度は尋ねたことのある、奈良を代表するお寺ですね。
    法隆寺金堂には、有名な釈迦三尊像があります。中国・初唐の文化を反映したアルカイックスマイルのこのお像の迫力たるや、まさに圧倒されてしまいます。
    このお像を拝んだ後、大宝蔵院の観音菩薩立像(夢違観音)をみてみると、その優しく清々しい表情、しなやかな曲線美に、えもいわれぬ安らかな気分になったことを思い出す方も多いでしょう。
    この夢違観音は、東院夢殿の後方に建つ絵殿の本尊として伝来しました。
    夢違観音と呼ばれるのは、このお像を拝めば、悪い夢を良い夢に変えてくださる、という信仰からだといいます。
    因みに少なくとも江戸時代にはこのような信仰があったことが知られています。
    聖徳太子が活躍した一四〇〇年前、日本独自の明朗な白鳳文化が開花しました。
    その申し子というべき夢違観音の、少年のような表情や優しいほほえみをみるにつけ、人々がこのお像から感じる気持ちは、今も昔もかわらないのではないか、そんなことを思います。
    本展では関東白鳳仏の白眉、調布・深大寺の釈迦如来倚像、播磨の法隆寺・鶴林寺の観音菩薩立像(通称アイタタ観音)など、白鳳仏の名品が、360度、どの方向からも見られるまたとない機会です。
    ぜひおでかけください!
    ①国宝 観音菩薩立像(夢違観音)(法隆寺).jpg
    国宝 観音菩薩立像(夢違観音) 奈良・法隆寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影 佐々木香輔)
    ③重要文化財 釈迦如来倚像(深大寺).jpg
    重要文化財 釈迦如来倚像 東京・深大寺蔵 Image: TNM Image Archives
    ②重要文化財 観音菩薩立像(鶴林寺).jpg
    重要文化財 観音菩薩立像 兵庫・鶴林寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影 佐々木香輔)
    (e.y)
    会期:2014年6月14日(土)~7月27日(日)
    観覧料:一般1200(1000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料
  • 2014年06月14日 法隆寺展、開幕しました!

    本日、「法隆寺展-聖徳太子と平和への祈り-」が開幕いたしました。
    初日からたくさんのお客様で賑わっています。
    昨日は開幕に先立ち、開幕式・内覧会を開催。
    内覧会では、展示室の夢違観音さんの前で、法隆寺のみなさまによる法要を行いました。
    法要.JPG
    そして本日は、展覧会関連イベント 講演会①「和の精神と日本文化 -日本の宗教観と平和精神-」を開催しました。
     
    講演会①.JPG
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    講師は、法隆寺管長の大野玄妙師。
    聖徳太子の説いた和の精神について、出品作品にも触れつつ、ご講義いただきました。
    法隆寺展は、国宝・夢違観音をはじめ、重要文化財20件を含む全69件の仏教美術の名品が勢ぞろい!
    出品作品の詳細等も、ブログで随時ご紹介していきますね。
    本展は、7月27日までの開催です。
    みなさまのご来館をお待ちしております。
    会期:2014年6月14日(土)~7月27日(日)
    観覧料:一般1200(1000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料
    (c.o)
  • 2014年06月01日 山本二三展関連ワークショップのお知らせ

    静岡市美術館では、8月4日(月)から

    「日本のアニメーション美術の創造者
    山本二三(にぞう)展
    ~天空の城ラピュタ、火垂るの墓、時をかける少女~」を開催します。

    山本二三(1953年-)さんはアニメーションの美術監督・背景画家として、
    「天空の城ラピュタ」(1986年)、「火垂るの墓」(1988年)、「もののけ姫」(1997年)、「時をかける少女」(2006年)など、
    日本を代表する数々の名作に携わり、今日まで作品を特徴づける背景画を描き続けています。

    本展では、未公開作品を含む、作者自らが選んだ手描きの背景画やイメージボード
    (準備段階に描かれるスケッチ)など、初期から最新作まで約200点を一堂に紹介します!

    その展覧会に先駆け、なんと山本二三さんご本人によるワークショップを開催します!

    —–

    静岡市美術館・静岡市清水文化会館 連携事業
    山本二三展連携事業
    「山本二三さんと雲をえがこう」

    山本二三さんの作品を特徴づける、輝きを持った積乱雲などの雲の表現。
    それは「誰にも真似はできない」と言われており、
    「二三雲」として知られています。

    本ワークショップでは、山本二三さんと一緒に雲を描きます!
    ご本人にレクチャーいただける、貴重な機会です。

    [日  時]2014年7月12日(土) 13:00~15:30 
    [講  師]山本二三氏(やまもとにぞう・アニメーション美術監督、背景画家)
    [会  場]静岡市清水文化会館マリナート 1階ギャラリー
    [対  象]小学3年生~6年生 20名(保護者見学可)

    詳細はこちらをご覧ください。

    皆さまのご応募、お待ちしております!

     
    (m.y)



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    時をかける少女《踏切》2006年 ⓒ時をかける少女制作委員会2006

  • 2014年05月31日 「かたち」と「ことば」でひもとく美の世界

    本展では、川端康成と東山魁夷それぞれの美術コレクションと、両家所蔵の東山魁夷作品など200点余りをご紹介しています。土偶や埴輪から、若き日の草間彌生の作品、そして東山魁夷のスケッチまで、大変に幅広い作品が一堂に会することが本展の特色の一つです。

    そしてもう一つの特色として、川端康成と東山魁夷の「ことば」を作品とともに紹介していることが挙げられます。

    各章のはじめには、それぞれの章を象徴する言葉を引用し、また、各作品の近くにも関連する文章を引用したパネルを展示してあります。


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    埴輪乙女頭部 - コピー.JPG

     ほのぼのとまどかに愛らしい。均整、優美の愛らしさでは、埴輪のなかでも出色である。
     この埴輪の首を見てゐて、私は日本の女の魂を呼吸する。日本の女の根源、本来を感じる。ありがたい。〔中略〕
     埴輪には円い顔が多いが、この首ほどやはらかく円い顔はめづらしいやうである。円さは横顔へもつづく。頭のうしろも円い。そして、首の細く長いのがいい。円の均整と調和のまはりに温かいひろがりがある。
     しかし、目は切り抜かれて、奥に深い暗(やみ)があるから、可愛さは甘さにとどまらない。角度と光線によつて、いろいろに見え、無限に語りかけてくる。
     ℓ字型の耳は右をさかさまにつけたやうな無造作もあるが、天工のおのづからなる名作であらう。
     とにかく、日本の女の魂の原初の姿である。知識も理屈もなく、私はただ見てゐる。
                                                      (川端康成『日本経済新聞』昭和45年5月7日)

     

    この文章は、川端が愛蔵の《埴輪 乙女頭部》について綴ったものです。目の前の埴輪の丸い形をじっくりと眺め味わい、細部の造りにも観察は及んでいます。上の引用では省略しましたが、埴輪の出土地や時代についての考察も述べられています。じっくりと眺め、十分に調べを行き届かせたうえで、「日本の女の魂を呼吸する」と鑑賞体験を詩的につづり、「知識も理屈もなく、私はただ見てゐる」と結ぶ。この文章を導きとして、川端の見つめた埴輪の美を、私たちも追体験することができます。

    そして、東山魁夷の言葉もまた、彼の作品を理解するための素晴らしい解説になっています。
    一例として、本展のポスターにも使用している代表作《北山初雪》についての言葉をご紹介します。

     

    01_東山魁夷 《北山初雪》.JPG

     

    十二月に入って間もない明るい朝だった。高尾の谷あいには、まだおそい紅葉がわずかに残っていた。栂尾(とがのお)を過ぎると、北の杉山が、うっすらと雪に蔽われているのを見て驚いた。陽の当たる山の斜面は、梢に丸く残された葉の繁みが、粉を振りかけたように白くなって重なり並び、その間を真直ぐな幹の列が、明暗の縞模様を描いてリズミカルに連なっていた。片側の蔭になった暗い谷は、伐採された斜面だけが白くなって、立ち並ぶ杉の繁みを錆群青の深い色に沈め、その上に置く雪を青みのあるグレーに見せていた。
                                                  (東山魁夷「冬の北山杉」『京洛四季』所収 昭和44年)

     

    《北山初雪》は、ノーベル文学賞受賞祝いとして東山が川端に贈った作品です。京都の四季を描いた連作の一枚で、川端の小説『古都』にも登場する北山の杉が描かれています。杉山に雪が降った一瞬の美を東山が捉えたことは、絵そのものが雄弁に語ってくれますが、彼の文章もまた絵とよく呼応しています。合わせて鑑賞することで味わいが増すのではないでしょうか。

    本展では、気になる作品に出会ったら、関連する言葉もぜひ読んでみてください。
                                                             (k.y.)

  • 2014年04月18日 4月19日(土)スタート! しずびオリジナル!ブックカバープレゼント企画

    展覧会「巨匠の眼 川端康成と東山魁夷」、無事に開幕しました。

     

    展示室内には、川端康成が収集した美術作品はもちろん、
    文学ファンにはたまらない(!?)コーナーもあります!

     

    川端の書斎の再現、

     
    書斎.jpg

     

    (実際に使用していた文房具、座布団についた墨も見える…!)

     

     

     

    川端文学を彩る美しい装幀本やその原画、

     


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    川端康成著、芹沢銈介装幀 『雪国』 創元社1937(昭和9)年
    (代表作『雪国』は静岡市出身の染色家、芹沢銈介による装幀。画像左は箱、右は表紙。)

     

     

     

    谷崎潤一郎、太宰治、坂口安吾、三島由紀夫らが川端にあてた書簡など・・・。
     

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    川端康成宛て太宰治書簡(部分) 1936(昭和11)年 公益財団法人川端記念会蔵
    (芥川賞を自らに与えてほしいと懇願した手紙。全長5メートルほど…長~い!)

     

     

     

    本展は、本当に見どころがたくさんあります。
    ぜひ、文学好きの方にも楽しんでいただきたい!

     

    そこで!

    「しずびオリジナル!ブックカバープレゼント企画」を実施します!

     

    川端康成、東山魁夷の著書を受付にてご提示いただいた方、先着100名様に
    静岡市美術館オリジナルのブックカバーとシールをプレゼントします。
    (「巨匠の眼 川端康成と東山魁夷」展をご覧の方に限ります。)

     

    ※ブックカバーは、文庫・新書サイズです。お手持ちの本にあわせてお使いください。
    ※ブックカバーは、金・銀の2種です。どちらか一枚をお選びください。
    ※数に限りがございます。なくなり次第、配布を終了します。

     

    ★bookcover2.jpg

    しずびシールもついてきます!好きなところに貼って、あなただけのブックカバーに!

     

    ご自宅に眠っている本や、購入したばかりの本など、川端・東山の著書であればOKです。
    この機会に、ぜひ静岡市美術館へお出かけください。

     

     

     

    展覧会「巨匠の眼 川端康成と東山魁夷」
    会期:2014年4月12日(土)~6月1日(日)
    観覧料:一般1100(900)円、大高生・70歳以上700(500)円、中学生以下無料
    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金
    *障害者手帳等をお持ちの方及び必要な介助者は無料

     

    (c.o)