• 2024年01月05日 手描きの線のもつ力

    『かぐや姫の物語』は、8年の歳月をかけ2013年に公開となった高畑勲監督の遺作です。この作品で高畑氏が目指したのは「スケッチのように描いた絵がそのまま動く」アニメーションでした。デジタル化が進み3DCG作品が注目を集める中、なぜ高畑氏の関心は真逆の方向へと向かっていったのでしょうか。

    これまで主流だったセルアニメーションは、キャラクターを描いた下絵を元にセル画(透明なシートに輪郭線を写し、裏から彩色する)が用意され、それを背景画の上に重ねて制作します。その過程で、下絵がどれほど素晴らしくてもトレースすることで線の勢いは失われ、色味も塗り絵のようにフラットな表現にならざるを得ません。
    このような表現上の制約と違和感を払拭すべく高畑氏が参考にしたものが、60代から研究を始めた平安時代の絵巻物でした。《鳥獣人物戯画》(高山寺蔵)などの自由闊達で生き生きと動きを感じさせる描線を目指した『かぐや姫の物語』は、それまでのセル画を乗り越える新しい表現として世界中のアニメーション関係者を驚かせました。また、絵はあえて小さいサイズで描きそれを拡大することで、線の質感やスピード感を画面に効果的に取り入れています。絵が動く原初的な感動と想像力を刺激する余白の美しさが見る者の心を動かします。

    『かぐや姫の物語』(2013年)  橋本晋治による原画
    ©2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK


    これはかぐや姫が疾走する場面の絵です。一枚の絵として見ると何が描かれているかわからないほど抽象的ですが、映像になると全身からかぐや姫の悲しみがひしひしと伝わるシーンになっています。「線で描かれた絵には、見る人の想像力を引き出す力がある」…生前、高畑氏は当館のご講演でそう語っていました。その言葉の意味を、皆さんもぜひ展覧会で味わってみてください。

    (m.y)


    「高畑勲展 ―日本のアニメーションに遺したもの」
    会期:2023年12月27日(水)〜2024年3月31日(日)

     

  • 2023年11月24日 NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」の来場者が1万人を達成

    11月24日に、NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」の来場者が1万人を達成しました。
    1万人目のお客様は、歴史ファンの親子。掛川市からお越しくださいました。

    お母さまは前期展示にも足を運んでくださったとのことで、後期展示の《太刀 無銘 光世 切付銘 妙純伝持ソハヤノツルキ ウツスナリ》を観るのが楽しみとお話しくださいました。
    息子さんはご自身の名前をモチーフにしたオリジナルの家紋を描いて見せてくれました。とっても素敵でしたよ♪


    お二人には、当館館長より記念品を贈呈しました。おめでとうございます!
    また美術館に遊びに来てくださいね。

     

    特別展「どうする家康」は、11月21日(火)から後期展示がスタートしました。
    12月13日(水)の閉幕まで毎日開館します。
    リピーター割引(有料チケットの半券提示で当日券から200円引き)もありますので、何度でも足をお運びください♪

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  • 2023年11月19日 徳川秀忠役・森崎ウィンさんが来場!‐ 後編 国宝《太刀 銘 真恒》

    静岡市美術館で開催中のNHK大河ドラマ特別展「どうする家康」。
    大河ドラマ「どうする家康」で家康の息子・徳川秀忠を演じる森崎ウィンさんに展覧会をご覧いただきました。
    ブログ後編では、秀忠が久能山東照宮に奉納した、国宝《太刀 銘 真恒》をご紹介します。
    <前編(徳川秀忠書状)はこちら>

     

    • 神となった家康に捧げた 国宝《太刀 銘 真恒》


    元和3年(1617)12月7日に行われた久能山東照社の正遷宮に際し、二代将軍・秀忠が奉納した古備前(こびぜん)真恒の太刀です。久能山東照宮には正遷宮や将軍の就任報告といった折々に歴代将軍から寄進され、刀剣が数多く伝来しますが、そのなかでも最も年代が遡る奉納品です。

    国宝《太刀 銘 真恒》 平安時代(12世紀) 久能山東照宮博物館 [通期展示]



    実物を目の前にして、太刀の大きさに驚かれていた森崎さん。
    通常の太刀の多くは70~80センチメートルほどの大きさですが、この太刀は約90センチメートルに迫る長寸で、身幅が広く豊かな反りがついた堂々とした姿は、平安期につくられた太刀のなかでは珍しいとされています。

    また、後世になると使い勝手が良いように寸法を切り詰めることもありますが、本作は全く手を加えられていません。しかるべきところにあった太刀を、秀忠が特別な品として奉納したと想像されます。制作された当初の姿のまま現在も鑑賞することができる数少ない例です。

     

    ガラス1枚を隔てていても、歴史の重みを感じたという森崎さんは、
    「その刀にまつわるストーリーを感じながら鑑賞できたことは、素敵な体験でした。
    また、あれだけ良い状態のままで残っているという、当時の職人たちの技術力の高さは、すごいものだなと思いました。」
    と話してくださいました。

     

    森崎さんのコメントは動画でご覧いただけます!


    このほか、家康が関ヶ原の戦いで着用し、大坂の陣にも携行したと伝わる吉祥の鎧《歯朶具足(伊予札黒糸威胴丸具足)》もご覧いただきました。



    森崎さん、ご来場ありがとうございました!

     

    大河ドラマも展覧会も、いよいよクライマックスへと向かいます。
    東京・三井記念美術館、愛知・岡崎市美術博物館を巡回した特別展は、静岡市美術館が最終会場です。
    家康の第二の故郷・静岡で、どうぞご覧ください。

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    ●NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」
    会期:2023年11月3日(金祝)~12月13日(水)
    休館日:11月20日(月)のみ

     

     

  • 2023年11月17日 徳川秀忠役・森崎ウィンさんが来場!- 前編《徳川秀忠書状》

    静岡市美術館で開催中のNHK大河ドラマ特別展「どうする家康」。
    開幕に先駆け、11月2日に開幕式を開催しました。会場には、大河ドラマ「どうする家康」で家康の息子・徳川秀忠を演じる森崎ウィンさんが駆けつけてくださいました。

    開幕式典ではスピーチも!


    展覧会では、秀忠が井伊直政・本多忠勝に宛てた書状や、神となった家康に捧げた太刀など、秀忠に関連した作品も展示しています。

    ブログでは、森崎さんに展覧会をご覧いただいた様子を、前編(徳川秀忠書状)・後編(太刀 銘 真恒)に分けてお届けします。

     

    • 関ケ原の合戦の8日前に書いた《徳川秀忠書状》


    慶長5年9月15日に起こった関ヶ原の合戦。この古文書は、徳川秀忠が関ヶ原の合戦が行われる8日前に、井伊直政、本多忠勝に宛てて出した書状です。

    書状を書いた9月7日、秀忠は美濃国を目指して中山道を西上し、途中、真田昌幸が籠もる信濃国上田城を攻略していました。書状の後半に、「真田表の仕置きを申し付け、近日上りますので、その節を期待します」と簡単に書き記しています。

    この時点の秀忠は、合戦に遅れるなど全く予想していませんでした。上田城攻めに力を注ぎ、まだ自らの状況を理解できていなかった段階での、秀忠の落ち着いた心境を知ることができます。

    この書状の3日後、家康から上洛要請の知らせが秀忠の元に届きます。ところが秀忠は真田氏攻めに時間を要し、結果として関ヶ原の合戦に遅れてしまいました。秀忠は父家康から大目玉をくらったといわれています。

    《徳川秀忠書状 井伊兵部少輔(直政)・本多中務少輔(忠勝)宛》 慶長5年(1600)9月7日 東京都江戸東京博物館[通期展示]


    書状は部下による代筆と思われますが、署名・花押は秀忠によるものと考えられます。
    秀忠の花押を興味深くご覧になっていた森崎さんは、
    「人って字を見たときに、その人柄が見えるといいますか…。
    秀忠を演じながらも、やっぱりどこかで遠い存在のように思っていたのですが、
    書状を見て、字を見たときに、やっと秀忠の近くに来られたんだなという気持ちがしました。」
    と話してくださいました。


    森崎さんのコメントは動画でご覧いただけます!

     

    ブログの<後編>では、秀忠が神となった家康に捧げた、国宝《太刀 銘 真恒》をご紹介します。
    お楽しみに!

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    ●NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」
    会期:2023年11月3日(金祝)~12月13日(水)
    休館日:11月20日(月)のみ

     

     

  • 2023年11月10日 記念講演会「家康を育んだ駿府、駿府を発展させた家康」を開催しました

    11月3日に開幕したNHK大河ドラマ特別展「どうする家康」。11月5日には、大河ドラマの時代考証を務める小和田哲男氏を講師に迎え、「家康を育んだ駿府、駿府を発展させた家康」をテーマにご講義いただきました。

     

    竹千代と名乗った幼少期から駿府城で世を去るまでの生涯の中で、およそ1/3にあたる25年間を駿府の地で過ごした徳川家康。
    講演会では、家康と駿府の関わりや、大御所時代に当地を選び移住した理由などについて、展覧会の出品作品にも触れながらご紹介いただきました。また、近年の駿府城跡発掘調査の成果を交えながら、家康によって駿府発展の基礎が築かれたことをお話しいただきました。
    参加者の皆さんからは、「家康の街づくりに関する具体的なお話を伺うことができ、新たな学びの多い時間となった」といった声を頂きました。


    家康第二の故郷・静岡での開催となった本展覧会。
    今川義元から贈られた《紅糸威腹巻》や、現存唯一の「元信」花押の文書《松平元信判物 高隆寺宛》といった今川のもとで過ごした頃の品はもちろん、天正期の駿府築城に関する資料など、家康と駿府に関わる資料を展示しています。
    この機会にぜひご覧ください。


    NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」
    会期:2023年11月3日(金・祝)〜12月13日(水)
    休館日:11月20日(月)

     

  • 2023年10月11日 「ブルターニュの光と風」展来場1万人を達成!

    10月11日に、「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」の来場者が1万人を達成しました。
    1万人目は、静岡市内からお越しのご夫婦。

    もともと絵画鑑賞がお好きで、今日は久しぶりにお二人で展覧会へ足を運んでくださったとのこと。

    毎日大変なこともあるけれど、今回1万人目に選ばれてご褒美をもらった気持ち、とお話しいただきました。

    本展主催者、特別協賛社より記念品を贈呈しました。おめでとうございます!

     


    「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」は、10月22日(日)まで開催しています。
    フランス・カンペール美術館のコレクションを中心に、ブーダン、クールベ、モネ、ゴーギャン、ドニら45作家による約70点の絵画作品を通して、ブルターニュという場所の魅力をひも解きつつ、この地にゆかりのある画家たちと、彼らが編み出した多様な芸術表現をご紹介します。




    多くの画家たちを魅了したブルターニュの魅力を、この機会にぜひお楽しみください。

     

    (m.o)

     

     

  • 2023年09月16日 ブルターニュへのいざない

    フランス・ブルターニュ地方と聞いて、皆様はどのようなイメージをお持ちになるでしょうか。ガレットと呼ばれるクレープや、色とりどりの絵付けが施されたカンペール焼き陶器、味わい深いゲランドの塩を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。


    大西洋と英仏海峡の間につき出たブルターニュ半島には、岩肌が露出した大地やエメラルドグリーンの海、深遠な森といった手つかずの自然が残されています。もともと「ブルターニュ」とは、「ブルトン人の土地」を意味する「ブリタニア」から派生した地名で、5世紀から6世紀にかけてグレートブリテン島からケルト系民族のブルトン人がこの地に移り住んだことに由来します。そのためフランス国内にありながら、イギリスの4地域(スコットランド、ウェールズ、コーンウォール、マン島)やアイルランドとともに、ケルト文化圏に分類されます。これらの地域では、自然崇拝と霊魂不滅を重んじるドルイド教が信仰され、妖精や魔女が登場するケルト神話や民間伝承が数多く残されました。またブルターニュには、太陽信仰との関わりが指摘される、イギリスのストーンヘンジに似た先史時代の巨石遺跡が複数残されています。

    どこか神秘的な雰囲気を帯び、異国情緒が漂うブルターニュは、19世紀以降、パリの画家達を大いに魅了しました。国が主催する絵画展にはブルターニュに取材した絵画作品が並び、印象派のクロード・モネがこの地を旅し、さらにポール・ゴーギャンをリーダーとしてポン=タヴァン派と呼ばれる画派が結成されたのです。本展ではフランス・カンペール美術館の収蔵品を中心に据え、画家達の眼差しとともに、神秘と伝統の地ブルターニュの魅力をひもときます。

    (c.f)

     


    カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ
    会期:2023年9月5日(火)〜10月22日(日)

     

  • 2023年08月09日 「さくらももこ展」来場3万人を達成!

    昨日8月8日に、「さくらももこ展」の来場者が3万人を達成しました。
    3万人目のお客様は、浜松市からお越しの親子です。

    さくらももこ作品の中でも、『COJI-COJI』が好きと話してくれた小学5年生の娘さん。
    この日も新幹線の中で『COJI-COJI』を読みながら来てくれたそうです。

    さくらももこの作品のどこが好きですか?という記者からの質問に、
    「静岡のほのぼのとした感じが描かれているところや、おもしろいお話、時々じーんとするところも好き」
    と、しっかりと答えてくれました。

    お二人には、当館副館長より記念品として、さくらももこ展公式図録と美術館オリジナルグッズを贈呈しました。おめでとうございます!


    「さくらももこ展」は、いよいよ8月23日(水)まで!
    『ちびまる子ちゃん』『COJI-COJI』『もものかんづめ』の原稿、愛用品など約300点でさくらももこの全魅力に迫ります。ゆかりの地・静岡でぜひご覧ください。
    閉幕が近付くと混雑が予想されますので、お早めのご来場をおすすめします♪

     

  • 2023年07月05日 「さくらももこ展」来場1万人を達成!

    7月4日に、「さくらももこ展」の来場者が1万人を達成しました。
    1万人目のお客様は、佐賀県からお越しのご夫妻です。
    新婚旅行で静岡県内を巡っていたそうで、清水の三保の松原を訪れた際に、偶然「さくらももこ展」のポスター見かけ、当館に足を運んでくださいました。

     

    お二人には、当館館長より記念品としてさくらももこ展公式図録と美術館オリジナルグッズを贈呈しました。
    おめでとうございます!
    そして、この日はなんと旦那さんの誕生日ということで、「おめでとう」が重なりました!

     

    さくらももこの代表作『ちびまる子ちゃん』は、まんがやアニメで馴染みがあったというお二人。
    大人になって読むと懐かしい気持ちがするところが多くの人に受け入れられるのだと思う、と話してくれました。


    「さくらももこ展」は8月23日(水)まで開催します。
    まんが家、エッセイスト、作詞家、脚本家と多彩な活動を展開した、さくらももこ。
    代表作の数々を直筆原稿やカラー原画とともにこれまでにないボリュームで紹介します。
    ゆかりの地・静岡でぜひご覧ください。
    閉幕が近付くと混雑が予想されますので、お早めのご来場をおすすめします♪

     

  • 2023年06月28日 さくらももこ展 静岡展開催記念 スペシャルトークショーを開催しました!

    6月24日(土)にさくらももこ展の関連イベントとして、静岡展開催記念 スペシャルトークショーを開催しました!
    さくらももこ先生と同時期に「りぼん」で活躍し、交友のあったまんが家の水沢めぐみ先生と、元「りぼん」担当編集者の後藤さんをゲストに迎え、当時の思い出やさくらももこ先生の作品をお話しいただきました。

     

    まずは、展覧会「さくらももこ展」を観た感想からトークが始まりました。

    水沢先生「小さい絵が本当に可愛く、ももこらしい「青」も綺麗で、原画を見ると気づく事が沢山ありました。」

    後藤さん「人間さくらももこと、その才能が詰まった展覧会です。」

     

    また、トークイベントの前日に、さくら先生の出身地であり、『ちびまる子ちゃん』の舞台でもある清水のまちを歩いてくださったお二人。
    清水駅から商店街、『ちびまる子ちゃん』にも登場する白髭神社、母校の入江小学校付近、さくら先生が好きだった和菓子店などを巡ったとのこと。
    清水の皆さんの明るくてフランクな話し方が、さくら先生の空気感と似ていた、とお話しいただきました。

     

    イベントの最後には、「さくらももこ」の魅力をお伺いしました。

    水沢先生「ふざけているけど、まじめ。大人だけど、子ども。いろんな顔を持っているところが、様々な人を惹きつける理由だと思います。」

     

    静岡ならではの話題もあり、さくら作品を一層身近に感じることができたのではないでしょうか。
    今回、500人を超えるたくさんの方にご応募いただきました。
    応募者からの熱いメッセージからは、さくら作品が沢山の方に愛されていることが改めて感じられました。

     

    「さくらももこ展」は8月23日(水)まで開催します。
    代表作『ちびまる子ちゃん』『COJI-COJI』はもちろん、エッセイ『もものかんづめ』の原稿、愛用品など約300点でさくらももこの全仕事に迫ります。ゆかりの地・静岡でぜひご覧ください。
    閉幕が近付くと混雑が予想されますので、お早めのご来場をおすすめします♪

     

     


    「さくらももこ展」
    会 期:2023年6月17日(土)〜8月23日(水)
    時 間:10:00〜19:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)
    休館日:毎週月曜日(ただし7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館)、7月18日(火)