• 2020年03月21日 「不思議の国のアリス展」作品紹介② ジョン・テニエル『鏡の国のアリス』挿絵のための下絵《握手してつかわそうではないか!》

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    ジョン・テニエル『鏡の国のアリス』挿絵のための下絵《握手してつかわそうではないか!》
    1870-1871年 鉛筆/紙 ローゼンバック博物館・図書館
    John Tenniel, “You may shake hands!”. The Rosenbach, Philadelphia


    「絶対、まちがいないわ!まるで顔中に『ハンプティ・ダンプティ』って名前が書いてあるくらい、確かだわ!」

    ―ルイス・キャロルが著した『鏡の国のアリス』で、彼の存在に気付いた主人公アリスは思わず心の中でこう叫びました。

    これは鏡の国に迷い込んだアリスが逃げる卵を追いかけていくと、その卵は高い塀の上で正体を現し、劇的な出会いを果たしたシーンです。

    初版本の挿絵下絵として描かれたこの作品は、そんな印象深い場面を可視化するとともに、好奇心旺盛なアリスと居丈高なハンプティという全く異なるキャラクターの両者の間に漂う一種の緊張感をも巧みに描き出しています。

    画面に残る幾重もの描線からは、作者ジョン・テニエルの推考の跡が垣間見られます。

    当時、風刺漫画家として英国で高い人気を誇ったテニエルは、著者キャロルの依頼を受けて『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の挿絵に取り組みました。

    二人は互いに意見を交わしながら物語の世界観を構築していったのですが、テニエルの挿絵なくしてアリスの物語は名作たりえなかったと言えるでしょう。

    (t.t)

  • 2020年03月20日 「不思議の国のアリス展」作品紹介① ルイス・キャロル/画:ジョン・テニエル《切手ケース》

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    ルイス・キャロル/画:ジョン・テニエル《切手ケース》 1890年 ローゼンバック博物館・図書館
    Lewis Carroll, The Wonderland postage stamp case. The Rosenbach, Philadelphia

     

    子守をするかのような仕草で子ブタを抱きかかえる一人の少女―その名はアリス。

    彼女こそが、ルイス・キャロルの名作『不思議の国のアリス』の主人公です。

    物語は白ウサギの後を追って巣穴に落ちたアリスが、地下の国で様々な人や動物たちと出会い、奇想天外な冒険を繰り広げていくのですが、ジョン・テニエルによって描かれた挿絵は、キャロルが紡いだファンタスティックな世界観を見事に表現しています。

    この作品はキャロル自身のプロデュースで商品化された切手ケースに描かれたもので、アリスが公爵夫人の家で預かった赤ん坊を戸外に連れ出すと、子ブタに変わって森の中へ逃げて行くという物語のワンシーンを初刊本の挿絵から選んでいます。

    アリスの小さくきっと結んだ口元や、正面を真っ直ぐに見つめる大きな瞳は、今もなお観る者を虜にしてしまいます。

    それは彼女の表情があどけなく愛らしいだけでなく、予期せぬ困難に遭遇しても決して挫けることのない芯の強さを秘めているからでしょう。

    (t.t)

  • 2020年02月20日 「不思議の国のアリス展」来場1万人を達成!

    本日2月20日(木)に、「不思議の国のアリス展」の来場者が1万人を達成しました!

    1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの青木さんと、鈴木さん。

    昔からアリスが大好きというお二人。

    青木さんは本展の鑑賞は2回目とのことで、今日はご友人の鈴木さんと一緒に

    「リアル脱出ゲーム」も楽しみたいとお話しいただきました。

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    お二人には、当館副館長と静岡新聞社・静岡放送 地域ビジネス推進局 専任局長 原尚弘様から、アリス展の図録と記念品を贈呈しました。

    またのご来館をお待ちしています!

    「不思議の国のアリス展」は、3月29日(日)までの開催です。

    謎解き体験型ゲーム・イベント「リアル脱出ゲーム」や、

    東大発の知識集団「QuizKnock」とコラボした音声ガイドなど、お楽しみ企画も盛りだくさん!

    会期後半は混雑が予想されますので、お早目のご来館がおすすめです♪

    (m.o)

    「不思議の国のアリス展」
    会期:2020年2月1日(土)~3月29日(日)
    観覧料:一般1,300(1,100)円、大高生・70歳以上900(700)円、中学生以下無料
    *( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

  • 2019年12月26日 「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」 来場1万人を達成!

    本日12月26日(木)に、「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」の来場者が1万人を達成しました!

    1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの西川さんと、ご親戚の石田さん。
    美術鑑賞がお好きな西川さんは、静岡県内の様々な美術館を巡り、
    静岡市美術館にも何度も足を運んでくださっているとのことでした。

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    お二人には、当館館長からバルセロナ展の図録と記念品を贈呈しました。

    またのご来館をお待ちしています!

    「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」は、年明け1月19日(日)までの開催です。
    静岡市美術館は、年内は12月29日(日)まで、年始は1月2日(木)から開館します!
    開館時間は通常通り10:00~19:00(展示室最終入場は閉館30分前まで)です。
    お正月休みに、ぜひご来館ください♪

    (c.o)

    「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」
    会期:2019年11月15日(金)~2020年1月19日(日)
    観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

    and more

  • 2019年10月24日 奇蹟の芸術都市バルセロナ

    バルセロナ、と聞いてみなさんどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
    サグラダ・ファミリアやグエル公園などのガウディの建築群、サッカーの強豪FCバルセロナ、
    フレディ・マーキュリーのテーマソング「バルセロナ」も有名となった1992年のオリンピック・・・
    (ちなみに本展のテレビCMでもこの「バルセロナ」が使われています!)
    美術ファンには、ピカソ美術館、ミロ美術館などを挙げる方もいらっしゃるでしょう。

     

    こうした今私たちが思い浮かべるバルセロナの街のイメージの多くは、
    実は19世紀末~20世紀初頭に集中して生み出されたものです。
    18世紀後半以降、新大陸との交易や産業革命によって地方都市のひとつであったバルセロナは急速に発展、
    19世紀後半にはグリッド状の区画を基盤とした新しい都市計画により、近代都市としての整備が進んでいきます。
    ガウディの手がけたカサ・ミラやカサ・バッリョーといった邸宅が生まれたのはこの時代でした。

     

    さらにその後、アール・ヌーヴォーやアーツ・アンド・クラフツ運動といった他国の芸術運動や様式が流入し、
    バルセロナ固有の文化と混ざり合い「ムダルニズマ」という独自の芸術様式が生まれます。

     

    より前衛的な芸術を模索する者たちは街中のカフェやレストランで芸術談義を繰り広げ、
    そうした芸術家のたまり場の一つであった「四匹の猫」という店では飲食の提供だけでなく、
    コンサートや朗読会などのほか、人形劇や同時代のパリで人気を集めていた影絵芝居といったイベントが開催されました。
    この店に足しげく通っていたのがパブロ・ピカソで、彼はここで初めての個展を開催、画家としての第一歩を歩み始めています。

     

    20世紀に入ると、キュビスムやシュルレアリスムに影響を受けたミロやダリといった若い画家たちがバルセロナで活動を始めます。

     

    バルセロナで育まれた芸術の歴史を駆け足でご紹介しましたが、本展ではおなじみの巨匠たちの若き日の作品や、
    家具や宝飾品など日本初公開となる作品が多数出品されます。
    是非ご覧ください。

     

     

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    (k.o)

     

    「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」
    会期:2019年11月15日(金)~2020年1月19日(日)
    観覧料:一般1,200(1,000)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料
    *( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

     

    ★前売券:11月14日(木)まで販売
    静岡市美術館、ローソンチケット[Lコード:40302]、セブンチケット[セブンコード:077-621]、チケットぴあ[Pコード:769-855] 、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、高松店、流通通り店)、戸田書店静岡本店、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店

     

    *お得な一般前売ペア割チケット 2枚1組 1,800円
    取扱場所:静岡市美術館、ローソンチケット[Lコード:40301]、セブンチケット[セブンコード:077-618] 、チケットぴあ[Pコード:769-854]
    ※当日ペア割チケットの販売はございません。

  • 2019年10月11日 静岡市美術館 来館者総数300万人達成!

    2010年に開館した静岡市美術館の来館者数が、昨日10月10日に300万人を達成しました!

    300万人目のお客様は、静岡市内からお越しの西家さん、笛田さんのお二人。
    お友達からの紹介で「印象派への旅 海運王の夢 バレルコレクション」展を知ったそうで、
    門外不出のバレル・コレクションが初めて日本で展示される事を聞いて、
    滅多にない機会だからとご来館くださいました。

    お二人には、静岡市美術館のオリジナルグッズなどの記念品を贈呈しました。

    おめでとうございます!

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    来年には開館10周年を迎える静岡市美術館。
    これからも、誰もが気軽に立ち寄れる”ちょっと面白い、街の中の広場”としての美術館を目指し、様々な展覧会や交流事業を開催していきます。
    皆様のご来館をお待ちしています。

    (c.o)

  • 2019年10月10日 英国王室より、アン王女ご夫妻がご来館!

    10月9日(水)、静岡市美術館にアン王女ご夫妻が来館され、開催中の「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」をご鑑賞されました。

    アン王女は、スコットランドラグビー協会の総裁を務めており、エコパスタジアムでのラグビーワールドカップ、スコットランド対ロシアを観戦するため来静、観戦前に当館にお立ち寄りいただきました。

    「印象派への旅」展では、スコットランドのグラスゴーで船舶の売買で大成功し「海運王」と称されたウィリアム・バレルが築いたコレクションを中心に紹介しています。

    バレル・コレクションすべてが日本初公開となる本展では、「グラスゴー・ボーイズ」や「スコティッシュ・カラリスト」といったスコットランドの画家など絵画作品も展示しています。

    アン王女は、展示作品を1点1点熱心に、特に馬の絵や海景画の作品をじっくりとご覧になっていました。

    当館にとっても、素晴らしい時間となりました。ありがとうございました!

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    アン王女とサー・ティモシー・ローレンス氏

    (c.o)

  • 2019年09月05日 「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」来場1万人達成!

    本日9月5日(木)に、「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」の来場者が1万人を達成しました!

     

    1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの深澤さんご夫妻。
    前回の浮世絵展では母と娘で、今回はご夫婦で来館されたとのこと。
    お二人には、当館館長から記念品を贈呈しました。

     

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    展覧会をご覧になり、「油絵の作品のみと思っていたが、水彩画も印象的だった」とお話しいただきました。
    取材にも快く応じていただき、ありがとうございました。
    またのご来館をお待ちしています!

     

    (c.o)

     

    「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」

    会期:2019年8月7日(水)~10月20日(日)

    観覧料:一般1,300(900)円、大高生・70歳以上900(700)円、中学生以下無料

    *( )内は当日に限り20名以上の団体料金

    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

  • 2019年08月01日 海運王のコレクション、すべてが日本初公開!

    英国、スコットランド最大の都市グラスゴーにあるバレル・コレクションは、船舶の売買で大成功し「海運王」と称されたウィリアム・バレル(1861-1958)が築いたコレクションからなる美術館です。

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    現在のバレル・コレクション © CSG CIC Glasgow Museums Collection

    バレル・コレクションは時代や地域、ジャンルが多岐にわたるのが特徴ですが、本展ではそのなかから19世紀のフランス絵画、オランダのハーグ派、「グラスゴー・ボーイズ」や「スコティッシュ・カラリスト」といったスコットランドの画家など絵画作品をご紹介します。

    室内の風景や街中の人々の姿、海を描いた作品など、落ち着いた雰囲気の作品を眺めていると、バレルが好んだ作風というのが見えてきます。もし自分だったらどの作品を家に飾ろうか、そんな視点で作品を眺めてみるのも良いかもしれません。

    バレル・コレクションのなかでも特に大事にされてきた印象派の画家ドガの《リハーサル》は必見です。

    練習に励むダンサーたちを覗き見るようなひっそりとした空気が流れていますが、その構図は大胆です。

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    エドガー・ドガ《リハーサル》 1874 年頃 油彩・カンヴァス バレル・コレクション

    ©CSG CIC Glasgow Museums Collection

    また本展では、ファン・ゴッホが描いた画商アレクサンダー・リードの肖像が、同じくグラスゴーにあるケルヴィングローヴ美術博物館より出品されます。

    バレルはこのリードの他、何人かの画商から作品を購入することで、フランスやオランダの文化に触れていました。

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    フィンセント・ファン・ゴッホ《アレクサンダー・リードの肖像》 1887年 油彩・板

    ケルヴィングローヴ美術博物館 ©CSG CIC Glasgow Museums Collection

    バレルがグラスゴー市へ作品を寄贈する際、「大気汚染の影響が少ない郊外に作品を展示すること」「国外に持ち出さないこと」が条件だったため、この世界屈指のコレクションは永らく現地でしか見ることができませんでした。

    その門外不出のコレクションが、同館の改装に伴い海を渡って初来日を果たします。

    スコットランド議会の承認を経て海外への貸出が可能となったのですが、当初バレルが提示した条件は、海で荷物を運ぶことの恐ろしさを熟知していた海運王ならではのリスク回避と言えるでしょう(バレル卿、今回は空路で大事に輸送されるので、ご安心ください!)。

    (a.i)

    「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」

    会期:2019年8月7日(水)~10月20日(日)

    観覧料:一般1,300(900)円、大高生・70歳以上900(700)円、中学生以下無料

    *( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金

    *障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

     

    ★前売券:8月6日(火)まで販売

     

    静岡市美術館、チケットぴあ[Pコード:769-762]、ローソンチケット[Lコード:41811]、セブンチケット[セブンコード:076-081]、谷島屋(パルシェ店、マークイズ静岡店、高松店、流通通り店)、戸田書店静岡本店、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店

  • 2019年07月12日 初摺と後摺 摺りの違いを楽しむ 歌川広重「名所江戸百景 両国花火」

    真っ暗な夜空にあがる大きな花火。
    川には舟がたくさん浮かんでおり、橋の上にも多くの見物客が描かれています。

    右の初摺(しょずり)は、打ち上げ花火がパッと花開いた瞬間を捉えたもので、
    周辺の風景も花火により明るく照らされています。
    対して左の後摺(あとずり)は花火があがった後のキラキラとはかなく散っていく様子が表現されています。
    周辺も夜空と境目がわからないほど暗く、寂寥感が漂う作品です。

    同じ作品でも異なる摺りを比較し楽しめるのは版画ならでは。
    どちらも広重最晩年の大作「名所江戸百景」を代表する夜景の傑作です。

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    歌川広重「名所江戸百景 両国花火」 安政5年(1858)8月、大判錦絵、アレン・メモリアル美術館蔵
    右:初摺、左:後摺

    (s.o)