エッシャーは、1898年6月17日、オランダ・フリースラント州レーワルデンにジョージ・アーノルド・エッシャー(明治期、お雇い外国人として来日したこともある土木技術者)の5男として生まれます。その父のもと育ったエッシャーは、建築家をめざしハールレムの建築装飾美術大学へ入学。しかし、そこで教壇に立っていた版画家・サミュエル・イエッスルン・ド・メスキータに版画の才能を見出され、さまざまな版画技術を習得します。第1章では、エッシャーの原点として貴重な初期作品を、師・メスキータの作品とともに紹介します。
1922年、24歳の時にエッシャーは友人とイタリアへ旅行し、その魅力に取りつかれます。
以降毎年のようにイタリア各地を周遊、やがてローマに移住します。この時代のエッシャーは創作意欲にあふれ、イタリア周辺の風景や建造物を精力的にスケッチしてまわり、多くの風景版画を制作しました。エッシャー作品全体に見られる細かな描写、卓越した写実力は、この多産なイタリア時代に確立されます。そしてこの頃の体験は、空想と現実が織り交ざる「エッシャーワールド」の構成要素の一つとして、エッシャーに大きな影響を与えたのです。第2章では、エッシャーがイタリア時代に手がけた風景版画の数々を紹介し、エッシャーのだまし絵とはまた異なる、その不思議な魅力に迫ります。
M.C.エッシャー《トロペア(カラブリア)》1931年 リトグラフ
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M.C.エッシャー《やしの木》1933年 木口木版(2色刷) |
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1935年、エッシャーはファシズムの台頭によりやむなくイタリアを去りますが、そのことがエッシャー作品の大きな転機となりました。翌年、スペイン・アルハンブラ宮殿を再訪して以降、エッシャー作品の主題は風景版画から「平面の正則分割」や私たちがよく知る「だまし絵」などの心象風景へと変化していきます。第3章では、誰もがよく知るエッシャーの代表作の数々を資料とともに紹介します。エッシャーの作風の変遷を、その生涯とともに展観することで、今日世界中の人々を魅了し続ける、版画家・エッシャーの試行錯誤の軌跡をご覧いただきます。
M.C.エッシャー《昼と夜》1938年 板目木版(2色刷) |
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M.C.エッシャー《滝》1961年 リトグラフ
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M.C.エッシャー《上昇と下降》1960年 リトグラフ |
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M.C.エッシャー《写像球体を持つ手》1935年 リトグラフ
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M.C.エッシャー《ベルべデーレ》1958年 リトグラフ |
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