ヨーロッパで磁器への憧れが大いに高まったのは、18世紀です。セーヴル磁器の活動は1740年にパリ東端のヴァンセンヌに生まれた軟質磁器工房がその始まりです。強大な権力を誇る国王ルイ15世の庇護を受けて、パリとヴェルサイユの間に位置するセーヴルへと移転した製作所は、王立の磁器製作所となり1769年には硬質磁器の開発に成功します。宮廷に愛された画家や彫刻家が招かれて知的で洗練された作品を生み出し、ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットに納めたほか、外交上の贈り物としても用いられ、ロシア皇帝エカテリーナ2世をはじめとした王侯貴族を魅了しました。
ポプリ壺「ポンパドゥール」1753年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF
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ジョウロ 1755年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF |
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マリー・アントワネット/王妃の胸像 1777年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Thierry Ollivier / distributed by AMF |
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「リボンのデジュネ」、別称「パーヴェル・ペトロヴィチのキャバレ」1772-1773年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Droits réservés / distributed by AMF
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皿(「ロシア皇帝エカテリーナ2世のカメオとイニシャルのセルヴィス」より)1778年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF |
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フランス革命の混乱を経てナポレオンが台頭すると、セーヴルは新古典主義の作品を製作します。
19世紀半ばからの万国博覧会の時代にはテーブル・ウェアという範疇にとどまらない作品へ展開しました。絵画的で、確かな写実性を備えた描写力からは時の流行のみならず、技術の高さがうかがえます。
壺「テリクレアン」1842年 Photo © Sèvres, Cité de la céramique, Dist. RMN-Grand Palais / Gérard Jonca / distributed by AMF
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「デザート皿《貝》(「自然の産物のセルヴィス」より)」1835年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF |
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「ペールの薄手のコーヒーセット《ノルマンディーの風景》」1855年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF |
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デザイナーとのコラボレーションがはじまり、アール・ヌーヴォー、アール・デコの時代は特に、磁器の透光性や軽量性を活かして、照明器具の製作にも取り組みました。また日本との交流では、20世紀初頭に外国人作家として初めて、沼田一雅(1873~1954)が型の製作に携わりました。沼田は東京美術学校教授、帝室技芸員をつとめ、東京美術学校名誉教授正木直彦の胸像などで著名な彫刻家です。
ダンサー No.13(テーブルセンターピース「スカーフダンス」より)1899-1900年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF
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象とねずみ 沼田一雅 1906年 Photo © RMN-Grand Palais (Sèvres, Cité de la céramique) / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF |
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伝統的なテーブル・ウェアの製作と併せて、現代作家とのコラボレーションも積極的に行われています。例えば抽象絵画のセルジュ・ポリアコフ、アレクサンダー・カルダー、ピエール・アレシンスキーなど、彫刻では、2000年にフランス共和国大統領の依頼で日本の大相撲の優勝賜杯の一つとして制作された「スーラージュの壺」を作ったピエール・スーラージュや、日本の造形作家・草間彌生の「ゴールデン・スピリット」があげられます。セーヴルの伝統と創造、今なお新しい理由はここにあるといえるでしょう。
《ゴールデン・スピリット》 草間彌生 2005年 Photo © Sèvres, Cité de la céramique, Dist. RMN-Grand Palais / Gérard Jonca / distributed by AMF |
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*作品は全てセーヴル陶磁都市所蔵