19世紀半ばに旧市街の城壁(市壁)の取り壊しが認められると、バルセロナはサルダーによる新しい都市計画のもと近代都市としての整備が進んでいきます。1888年には万国博覧会が開催され、「ラナシェンサ」と呼ばれるカタルーニャ語とその文化の復興運動も活発化しました。本章では国際都市へと発展するバルセロナの姿を書籍や絵画などでご紹介します。
アウゼビ・アルナウ《バルセロナ》 1897年 ブロンズ・サガン(ムンジュイック産) カタルーニャ美術館 ©Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona(2019)
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G. L. ルイス《1888年バルセロナ万博のポスター》 1888年 クロマトグラフ・リトグラフ/紙 カタルーニャ図書館
©Biblioteca de Catalunya. Barcelona |
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19世紀末から20世紀初頭のバルセロナには、ブルジョワたちの注文によりガウディらによって華やかで独創性溢れる建築が次々と作られました。一方、街には過酷な生活環境を強いられる労働者たちもおり、両階級間の溝は深まっていきます。ここでは、図面や建築装飾、家具、宝飾品などでブルジョワたちの煌びやかな生活の様子を紹介するだけでなく、時代の不穏な空気を捉えた絵画なども展示します。
ガスパー・オマー 《カザ・リェオー・ムレラのランプ》 1904年 鉄(叩き出し)・鍍金・ガラス カタルーニャ美術館 ©Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona(2019) |
リュイス・マスリエラ《バルセロナ上空の飛行機》 1905年頃 金・ダイヤモンド・エナメル(プリカジュール) 個人蔵 Photo: Foto Gasull
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アントニ・ガウディ(デザイン)カザス・イ・バルデス工房
《カザ・バッリョーの組椅子》 1904-06年頃 トネリコ材 カタルーニャ美術館(サグラダ・ファミリア建築委員会から寄託)
©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família |
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19世紀末、アール・ヌーヴォーなどの同時代の芸術運動や、中世の様式などから影響を受けた「ムダルニズマ」とよばれる芸術様式がバルセロナに登場しました。画家ラモン・カザスとサンティアゴ・ルシニョルは、この時代にパリとバルセロナを行き来し、最新の芸術様式や手法に触れる一方、故郷の芸術に新たな可能性を見出そうとしました。本章では、世紀末のカタルーニャ芸術の発展において重要な役割を果たした彼らの作品を中心にご紹介します。
サンティアゴ・ルシニョル《青い中庭》
1892年頃 油彩/カンヴァス ムンサラット美術館
©Museu de Montserrat |
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サンティアゴ・ルシニョル 《自転車乗りラモン・カザス》 1889年 油彩/カンヴァス サバデイ銀行 ©Banco Sabadell collection
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ラモン・カザス《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの室内》
1890-91年頃 油彩/カンヴァス カタルーニャ美術館(スペイン文化省から永久寄託) ©Museu Nacional d’Art de Catalunya, Barcelona(2019) |
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1897年6月、カザスとルシニョルらはカフェ兼レストラン「四匹の猫」をバルセロナに開きます。この店では影絵芝居やコンサートなどの様々な催しが行われ、独自の芸術雑誌も刊行されました。新しい芸術を模索する画家、音楽家、作家たちが足しげく通い、その一人であったピカソ初の個展が開催されたのは、この「四匹の猫」でした。ここでは店の様子を伺い知ることのできる貴重な資料や、そこに集った若きピカソをはじめとする先鋭的な芸術家たちの作品を展示します。
20世紀にカタルーニャの民族的アイデンティティを希求する動きの中で生まれた「ノウサンティズマ(1900年代主義)」は、古代ギリシャ・ローマなどの、地中海沿岸で育まれてきた美の様式への回帰を主な特徴としています。本章では、この運動の影響下に制作された絵画や彫刻、工芸作品を中心にご紹介します。
1910年代に入るとバルセロナにも前衛芸術が流入し、若き日のミロやダリはフォービスムやキュビスム、シュルレアリスムなどに影響を受けた作品を発表しました。建築でもモダニスム建築に影響を受けた新たなプランが提案されるなど、様々な領域で芸術の活性化が図られました。ここでは20世紀初頭から内戦勃発に至る時期のバルセロナの前衛芸術の諸動向を、国内外の優品でご紹介します。