過去の展覧会
空間全体を作品化する「インスタレーション」や「メディア・アート」をはじめ、社会や地域との関係性を重視する表現、“美術”という制度を相対化する視点、日常に根差した感性など、今日のアートシーンでは当たり前となっている表現は、すでに80年代に試みられていました。コンセプチュアルでストイックな表現の70年代と、サブカルチャーに影響を受けた90年代の狭間に位置し、戦後の日本美術のなかで見過ごされてきた80年代の表現を検証します。
海外でも高い評価を得ている19人の作家たちを紹介。当時20代~40代だった彼らの作品は、サイズも大きく、ダイナミックでエネルギーに満ち溢れていたものも多数ありました。1980年代、戦後日本の経済はバブル景気によって絶頂期を迎えます。電電公社がNTTに、国鉄がJRへと変わり、コンビニエンスストアが全国に普及、家庭用パソコンが発売されたのもこの時代でした。また、東京ディズニーランドの開園、アイドル新時代、「オタク」という言葉も広がり、様々なカルチャーが活気を帯びていました。今日につながるいくつもの重要な社会動向が生まれた時代状況と照らし合わせてみると、80年代に登場した美術の豊かさが改めて見えてくることでしょう。
近年、80年代の見直しが様々な分野で行われています。現代アートの世界でも、80年代に焦点をあてた展覧会や、当時から活躍する作家の回顧展が盛んに開催されています。本展は、「ニューペインティング」「関西ニューウェーブ」「超少女」といった、80年代当時に使われていたタームで括るのではなく、「メディウムを巡って」「日常とひそやかさ」「関係性」「記憶・アーカイヴ・物語」といった今日的な4つの視点から80年代の美術をみつめます。これまでの評価に縛られることなく、新鮮な気持ちで作品に接する機会を提供します。
同時期、静岡県立美術館では「1968年 激動の時代の芸術」(2/10-3/24)が開催されます。20世紀の歴史の転換点とされ、現代美術にとっても重要な年でもある1968年を、写真、デザイン、建築、演劇、音楽、マンガにまで視野を広げて検証する展覧会です。横尾忠則は、「起点としての80年代」では画家として、「1968年」ではグラフィックデザイナーとしての姿に焦点が当てられています。両展を見れば1968年から80年代までの現代美術の流れがわかる、またとない機会です。
シンポジウム、トークイベント、公開制作など、多彩なイベントを豪華ゲストを招いて実施します。様々な角度から80年代という時代を読み解きます。 ※詳細はこちら(「これからのイベント」ページ)をご覧ください。
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